《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第62話
「ぐっ!?」
レイナルドと代わったケイだが、思った以上の落石の威力による衝撃に思わず聲をらした。
上空から重力によって加速してきた落石は、生半可な魔力障壁では防ぎきれないだろう。
しかも、いくつも落ちてくるのだから気が抜けない。
「父さん! あれは……」
「なっ!?」
レイナルドが上空を指さしてケイにぶ。
その指さす方向を見て、ケイも慌てたような聲をらす。
「「でかっ!!」」
ケイたち親子は、思わず聲を出してしまう。
それもそのはず、F〇のメテオでも放ったのかと言いたくなるほど巨大な巖石が、高熱を纏い、赤々としたをしてこちらに向かって落下してきたからだ。
「クッ!?」
あんなの防ぐとなると、今の障壁では持ちこたえることなんてできない。
噴火がまだ治まらない狀況で、できれば魔力を消費したくない。
【しゅじん! まかせる!】
「キュウ!?」
レイナルドは魔力を消費しており、しばらく休まないと魔力が枯渇してしまう可能がある。
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魔力を使い切ってしまうと、気を失ってかなりの時間目を覚まさなくなってしまう。
貴重な役割を擔うレイナルドに抜けられたら、ケイだけでは抑えられずに、窟のみんなにも被害が及ぶ可能がある。
こうなったら、花に助力を頼むしかないかとケイが悩んでいると、キュウの念話が屆いてきた。
【あれ! こわす!】
魔力障壁を張っているケイの頭の上に乗り、キュウは魔力を開いた口の先に集める。
キュウにはケイが魔法を教えたので、々な屬の魔法が使える。
しかし、今は屬を気にする必要はない。
【ハー!!】
全魔力を使用した魔力弾を、キュウは巨大な巖石目掛けて発した。
“ボガンッ!!”
「おぉ!」
キュウの魔力弾によって巨大な巖石が弾け飛んだ。
それによってバラバラに砕けた巨大巖石は、散らばるようにケイたちの周辺に落下したのだった。
【ごめん! しゅじん! これでぜんぶ……】
巨大巖石を破壊するためにほとんどの力を使い切ったのか、キュウはヨロヨロとしながらケイのポケットの中にって行った。
ギリギリ気を失わない程度の魔力しか殘っていなかったらしく、手短に念話でしゃべると、ポケットでかなくなった。
もしもの時のために、しでも魔力を回復しようとしばらく休むことにしたのかもしれない。
「助かったぞキュウ! これで落石の防に集中できる」
大人しくなったポケットのキュウに一言告げ、ケイは安心して魔力障壁に専念できるようになった。
「……でも、こんなのいつまでも防げるか……」
ケイが作った壁のこちら側の噴火は、まだまだ威力が治まらない。
さっき程の巖石がまた飛んで來るとは考えにくいが、低い可能としてはある。
それでなくても、落下によって威力の増した巖石が降り注いできているこの狀況を、いつまで続けないか分からない。
終わりが見えないことを続けるのは、やってる神にかなりの負擔がかかる。
レイナルドが言うように、我慢もいつまで持つことか。
「ヤバい! 父さん! 溶巖が迫って來てる!」
「くそっ! マジかよ……」
折角巨大巖石の落下の窮地を、キュウによって逃れたというのにもかかわらず、今度は溶巖が迫って來ていた。
見張り用の壁が、ある程度溶巖の流れを防いでくれているようだが、それもいつまで持つか分からない。
一難去ってまた一難が迫り來る中、ケイはどうするか考え始めた。
「「「……!!」」」
「んっ!?」
ケイが苦の策として花を呼ぼうかと考え出した時、窟の側にいた大人のケセランパサランたちが走り出した。
「マル! ドン! ガン! どこ行くんだ!? ここから離れるな!!」
キュウと違い、マルたちはまだ念話ができないので、ケイには彼らが何をするのか判斷できない。
いくらケセランパサランの中でも特殊なほど強くなったといっても、この狀況で障壁から出て行くのは危険すぎる。
そう思って、ケイはマルたちを止めたのだが、チラッとケイに目を向けた後、マルたちは魔力障壁から抜け出して行ってしまった。
「おいっ!!」
【マルたち! かべ! つくるって……】
マルたちがケイの忠告を聞かずに走り出して行ってしまったのを、レイナルドも止めようとしたのだが間に合わず、マルたちはどんどん西へ走っていった。
行ってしまったマルたちの考えを、キュウがポケットから顔を覗かして念話を送ってきた。
一気に魔力を使った反からか、疲労しているため念話に力がこもっていない。
「壁?」
【あかいドロドロとめるって……】
キュウが言うには、どうやらマルたちは、溶巖の流れがこちらに來ないように壁を造りに向かったらしい。
「確かに止めないとすぐにこっちに來てしまうだろうが、危険すぎる!」
山から一番と言って良いほど離れているここでも落石が酷いのに、そんな中壁を造りに行くなんて無茶が過ぎる。
「マル! ドン! ガン! 戻れ! 俺はそんな指示してないぞ!!」
キュウの言葉を聞いて、ケイは障壁を張りながら大聲でマルたちの名を呼ぶが、もうそれが屆かないほど離れて行ってしまっていた。
「くっ!? どうして……?」
【マルたち、うれしい】
いつも素直にケイの言うことを聞くマルたちが、完全に無視するように言ってしまったことに、ケイは訳が分からなかった。
すると、マルたちの考えを、念話ができるキュウが代わりに説明してきた。
「うれしい……?」
【キュウたち、ケセランパサラン、弱い。でも、しゅじん、みんなをつよくしてくれた】
【いつもおいしいたべものたべさせてくれた】
【だから、やくにたって、おんかえしたい! それがいま!】
「……………………」
キュウの話を黙って聞いていたケイは、嬉しい気持ちと悲しい気持ちが混ざったような複雑な表でうつむいてしまった。
「何言ってんだよ! マルもガンもドンも家族だろ? 恩返しなんていいから死んだら駄目だ」
キュウたちがそんな風に思っているとは、ケイはこれまで思ってもいなかった。
たった一人で無人島生活をケイが過ごせたのは、キュウがいたからだ。
寂しくても、キュウのために頑張らなくてはと頑張れた。
マルたちが増え、花が流れ著いて子供もでき、獣人たちや魔人のシリアコも増えた。
みんながいるから、ケイは頑張れるのだ。
この島で一緒に過ごす家族なのだから。
それはマルたちケセランパサランも同じ。
従魔ではあるけれど、一緒に暮らす家族なのだ。
それでも、マルたちを連れ戻しに行けない狀況に、ケイはを噛んで耐えるしかできなかった。
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