《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第63話
“ズズズ……”
「壁が……」
巨大な巖石は落ちてこないが、小さくても強力な威力をした巖石が、火山の東側の広範囲に落下してくる。
ケイたちがいる窟付近にも次々と落ちてくる。
その落石から窟に避難しているみんなを守るため、ケイは懸命に魔力障壁を張って守り続けている。
そんな中、ケセランパサランという魔で、ケイの従魔のマル、ガン、ドンの3匹が、巖石が降り注ぐ中をケイの指示を聞かずに障壁から出て行ってしまった。
同じくケイの従魔のキュウが念話で言うには、こちらへ向かって來る溶巖流を止めに、この危険な中を3匹で向かったとのことだった。
障壁から出て行って數分が経つと、マルたちが向かった方角から大きな音が響いてきた。
そちらに目を向けると、大きな半円型の壁が沸き上がって來た。
反応を見る限り、どうやら誰かが土魔法を発したようだ。
「……マルたちがやったのか?」
「……とりあえずこれで防壁だけに専念できる」
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折角作った西の畑も、溶巖に飲み込まれてしまっているだろう。
西側の島とこちらの東側の島には渓谷があるが、たいして幅は広くない。
溶巖流の勢いからすると、時間稼ぎにもならないはずだ。
それが、突如出現した半円型の壁によって溶巖流が二手に分かれ、そのまま南北に向かい、海へと流れ落ちていくようになった。
レイナルドが言うように、方角的にマルたちがやったに違いない。
これなら溶巖の接近に悩む必要がなくなった。
あとはこのまま噴火が沈靜化するまで障壁を張り続けるだけだ。
「……マルたちはなんで帰って來ないんだろ?」
溶巖流の流れを変えた壁ができてから數分が経った。
距離的には數キロなので、壁を作ったであろうマルたちがもう戻ってきてもいい時間だ。
そのことに気付いたレイナルドは、不思議に思いケイに尋ねた。
「……もしかして?」
キュウと同様に、マルたちも魔法特化だが戦闘力は上がっている。
雨のように降り注ぐ巖石をくぐり抜けて壁を作り、ここに戻ってくることはできるはずだ。
それが戻ってこないということは、何かしらのアクシデントがあったのかもしれない。
レイナルドに問いかけられたケイは、嫌な予が沸き上がって來た。
「…………レイ! 花を呼んで來てくれ」
「母さんを?」
ケイの妻である花は、普通の人族であるため、ケイたちほどの魔力は扱えない。
噴火當初はケイとレイナルド、そしてキュウたち従魔で抑えきれると思っていたため、他のみんな同様に窟に避難してもらった。
それなのに、その花を呼び寄せる意味が分からず、レイナルドは反的にケイに理由を求めた。
「しの間だけ障壁役を代わってもらう」
「父さん、もしかして……」
その一言でレイナルドは理由を理解した。
レイナルドから障壁の役を代わって、たいした時間は経っていない。
ケイの魔力量からしたら、まだまだ障壁を代わる時間ではない。
今ケイがこの役を変わってもらうとすれば、考えられるのは一つだけだ。
「マルたちを迎えに行く」
そのためには、障壁を張る代わりの人間がしい。
レイナルドとキュウは、まだ魔力の回復ができていない。
そうなると、次に魔力があるのはケイのもう一人の息子であるカルロスになるのだが、結婚間近の今、危険な目に遭わせるのは、ケイにはどうしてもできない。
だが、そんなことを言っている場合ではないし、マルたちにもしものことが起きているのなら、助けに行きたい。
悩んでケイが出した答えは、妻の花だった。
普通の人族と言っても、刀を使った戦闘技はこの島でピカイチ。
魔力量もエルフのケイに比べるのがおかしいのであって、十分多い部類にる。
それでも今回障壁の役から外したのは、ケイが花が大切な人だからだ。
そんな花を出してでも、ケイはマルたちを迎えに行きたい。
「でも……」
「分かってる。普通なら戻ってきてもいい時間だ。なのに帰って來ないんだから……」
これだけ時間が経っても戻ってこないのだから、最悪な狀況は予想できる。
マルたちのことは、レイナルドも子供の頃から一緒に育ってきたので家族だと思っているが、今更迎えに行ったところで無駄な可能が高い。
レイナルドはケイを止めようとするが、ケイはそれでも行くことを告げた。
「…………分かった。母さんを呼んで來る」
「いいわよ! ……というか、こんな狀況ならもっと早く呼びなさいよ!」
ケイの意思が固いことを悟ったレイナルドは、窟に避難している母を呼びに行こうとした。
だが、レイナルドが窟の方へ振り向くと、そこにはもう花が立っていた。
しかも、話を聞いていたらしく、説明する必要なく答えを返してきた。
「花!?」「か、母さん!?」
ケイとレイナルドは切羽詰まっていたのか、2人とも花の存在に気が付かず驚きの聲を出した。
「ほら! マルちゃんたちに何かあったんでしょ? 早くいってきなさい!」
「わ、分かった! すぐに行って來る」
を叩かれたケイは、障壁を花に任せ、言われた通りにマルたちが向かった方角へ走り出した。
こういった時でも肝っ玉が據わっているのは、やっぱり男よりもなのだと思い知ったケイだった。
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