《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第65話

夕方に花から障壁を張る役を代わり、夜の間もケイは障壁を張り続けた。

「……弱まったか?」

翌朝になり、噴煙は上がっているが、噴火の勢いは弱まってきているように見える。

噴火口が二つになったからか、一気に噴出したことによってマグマの勢いもなくなりつつある。

危険な落石はなくなり、障壁を張らなくても良さそうだ。

しかし、火山灰は降ってきているので、薄い障壁を張るだけにしている。

「とりあえず危機はしたかな?」

この狀況が続くようなら、壊れた家の修理に向かっても良さそうだ。

とは言っても、獣人のみんなは魔力がないため、長時間の外出は火山灰を吸い込んでしまう危険がある。

なので、まだ外出の許可は出せない。

「俺は出てもいいかな?」

「う~ん…………いっか」

獣人のみんなには申し訳ないが、もうし噴火が靜まるまではこのままで過ごしてもらうしかない。

しかし、ケイの息子のカルロスの魔力は結構な量ある。

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今の噴火狀況なら、障壁を張ってもらう役を任せても大丈夫だろう。

まだ完全に治まった訳ではないため躊躇われるが、畑や家は壊滅狀態。

しでも早くそれらを回復させたい思いもあるので、ケイは渋々カルロスに許可を出した。

「レイ! カルロスとキュウと一緒にみんなの家の修復を開始してくれ」

「分かった!」

しっかりと睡眠と休養を得たことで、レイナルドとキュウは魔力が回復した。

それにカルロスが加われば、余程のことがない限り問題が起こることはないだろう。

「俺と花はし休ませてもらう」

「任せたわよ」

障壁を張り続けなくてはいけなかったケイと、もしもの時のために一緒に起きていた花は、レイナルドにあとを任せ、仮眠をとることにした。

「……綺麗になってるな」

ケイが仮眠をしてから外に戻ると、寢る前には窟周りにいくつも落ちていた大きめの噴石が、綺麗になくなっていた。

「カルロスが張り切っちゃって……」

レイナルドが言うには、噴石を片付けるためにカルロスが魔力を使って北の海に捨ててきたとのことだった。

弱いながらも余震が続き、噴煙も治まっていないのだから、あまり無茶をするなとレイナルドも注意をしたのだが、

「俺がもっと魔力があれば、マルたちは死ななかったかもしれないから……」

こう言われては、レイナルドもなかなか止めづらく、もしもの時にはキュウもいるので、そのまま好きにさせることにした。

年齢差はそれ程ないレイナルドとカルロスだが、どちらかというと母の花に似たカルロスは、レイナルドほど魔力が多くない。

とは言っても、人族に比べればかけ離れた魔力量をしてはいる。

それが、カルロスにはちょっとコンプレックスだったのだが、今回のことで更に刺さったのかもしれない。

母に似たせいだとは思いたくはない。

しかし、魔力量がないのはやはりそのせいだからだと、カルロスはどうしても考えてしまう。

今回被害に遭ったマルたちは、子供の頃から一緒に過ごしてきた思い出がある。

ケイと同様に、カルロスも家族のように思ってきた。

それなのに、みんなの役に立てず、マルたちが死んでしまうことになったのは、自分のせいだと思ってしまっているようだ。

「カルロス!」

「ん?」

窟周辺の清掃が一段落著いたことで休んでいたカルロスに、ケイは近付いていった。

「お前の魔力量がないのは俺とレイナルドのせいだ。だから気にするな!」

「……え?」

自分のコンプレックスの原因は母のせいだと、認めたくはないが思っている部分がカルロスにはあった。

だが、父であるケイに言われた一言の意味が分からず、カルロスはキョトンとした。

「お前、ダンジョンに行く回數他の人よりないとかじたことなかったか?」

「…………いや、別に……」

そんなこと思ったことなかった。

別にダンジョンに行くことは他の大人たち同様、止められたことはなかったように思える。

「俺やレイが、お前が怪我して帰ってくるのが心配で、いろんな仕事をさせてダンジョンに行く機會を削っていたんだ」

「「すまん!」」

「……え?」

父と兄、2人そろっての謝罪と突然の告白に、カルロスはキョトンとしたままだ。

たしかに、カルロスがダンジョンに行くと怪我をすることが多かった。

しかし、だからと言って、2人がそんなことしているとは思ってもいなかった。

「……じゃあ、俺の魔力量が兄ちゃんよりないのは?」

「…………単純に経験不足だな」

レイナルドは、格的にケイ同様の銃を使った戦闘スタイルが合っているらしく、し離れて戦うので怪我がないのでケイも安心して放っておける。

結婚して子供もできたことだし、ますます安全に戦うようになったとケイは思っている。

カルロスが母に似たせいと言うのも、実は関係があるのだが、刀を使った剣が好きなカルロスは、敵との距離が近いために怪我をしやすい。

それが心配の種だった。

甘くなるのも花に似ているせいで、ケイとレイナルドはカルロスにはあまり魔と戦わせたくないと思うようになってしまった。

そのせいで、強い魔を倒す経験が減った分、魔力量もびていないと、ケイとレイナルドは説明した。

「お前が見てない所で、花にはよく怒られていた」

「母さんは甘やかしたくないようだったから……」

2人と違い、母の花はカルロスを強くしたかった。

しかしながら、2人が連攜を取って上手く甘やかすものだから、カルロスがび悩むようになった。

最近では、甘やかしたのがバレたらマジで怒りだし、刀を目の前に突き付けられたこともあった。

「……んだよ! 2人のせいだったのかよ!?」

「「すまん……」」

こんな時になって、まさかコンプレックスの原因を知ることになるとは思わなかった。

母のせいだと思っていた自分が、とんでもなく馬鹿に思えてきた。

それどころか、母の方が自分のために々してくれていたことを知り、けなくも思えてきた。

2人がしてきたことに気付かなかった自分も悪い。

何だか2人を怒るに怒れず、もやもやしたじになってしまった。

「…………もういいよ。もうすぐ結婚するんだし、俺のことは甘やかさないでくれ」

「「……分かった」」

何だかちょっと間があった気がするが、これでこれから先は2人も自分のことを甘やかさないだろう。

自分にとって最大のコンプレックスが消えたせいか、思い悩んでいた表から、妙にすっきりした表に変わったカルロスだった。

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