《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第66話

「みんな出てもいいぞ!」

噴火から5日も経つと、噴煙はかなり小さくなった。

余震もなくなったことで、數日前には大人たちの外での活を許可した。

さらに治まったことで、今日からは子供たちの外出も許可することにした。

「マスクをちゃんとするんだぞ!」

「はい……」

この島には獣人が多い。

ケイの孫たちも獣人のハーフだ。

嗅覚が高いので、外の空気が悪くてきつい。

なので、みんなにはマスクを著用させることにした。

もしも病気が蔓延した時を考えて、錬金でマスクを大量に作っていたのは正解だったようだ。

久々の外で子供たちは嬉しいのだろうが、マルたちが亡くなったことがあるので、いまいち元気がない。

レイナルドの次男で、いつもニコニコ元気なラウルも大人しくなっている。

「……まずはみんなでマルたちを弔ってやろうか?」

「……うん」

ケイの言葉に花は頷く。

壊れた家の修理などに當たっていたが、大人たちもみんなどことなく暗い。

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誰もが、キュウたちケセランパサランがいることに、なからず心を癒されていたからかもしれない。

ケイ自も吹っ切れないでいるのは確か。

なので、みんなが先を見據えて進んでいくためにも、ケイはまず、マルたちの弔いを行うことを提案した。

ケイたちが住む住居からし離れた北側には墓地がある。

そこには、ルイスたちと流れていた時に亡くなった、エンツリオ村の獣人たちが眠っている。

ここにも噴火により巖石が落ちてきたらしく、墓標などが壊れていたりした。

そのため、ケイたちは転がっている巖石や、積もっていた火山灰を魔法で海に落とし、綺麗に元と同じように作り直した。

そして、みんなが見守る中、ケセランパサランでもゾンビ化するのか分からないが、小さな棺にったマルたちを火葬してあげる。

「……!?」

ケイの右肩にはキュウが乗っている。

キュウにとってみれば、マルとドンは子供で、ガンは孫に當たる。

肩に違和を覚えてキュウを見てみると、燃え上がる子や孫の姿に、ポロポロと涙を流していた。

「……やっぱりキュウも悲しいのか?」

【……かなしい! でも、マルたち、ながいきできた! しゅじんとみんなのおかげ!】

マルたちが溶巖流を止めにいった時、危険なのにもかかわらず、キュウは全く止めなかった。

子や孫に対してあまりがないのかとも思っていたのだが、今の様子を見る限りそうでもないらしい。

キュウが言うように、ケセランパサランのマルたちは長生きした方だろう。

別名を魔の餌と呼ばれる彼らが、何年も生きて子供を産むほどまで長した。

それだけでも、キュウたちからしたら嬉しいことなのかもしれない。

【おせわになったみんなのやくにたった! マルたちえらい! だからかなしくない!】

「…………」

そう言いながらもキュウの涙は止まらない。

人間でも魔でも、やっぱり悲しいことには変わりないようだ。

泣き続けるキュウを、ケイはただ黙ってでてあげることしかできなかった。

まだ小さいケセランパサランのアルとカルは花の両肩に、サルとタルはレイナルドの両肩に乗って、キュウと同じく涙を流している。

島のみんなもその様子を見て、涙を流したり、うつ向いたりして落ち込んでいるように見える。

「やっぱり、俺はキュウたちにも死んでほしくないよ。従魔だからって……」

が小さいためマルたちの火葬はすぐに終わった。

燃えた後には、小さな骨數本と小さい魔石が転がっているだけだった。

それをそれぞれ骨壺にれて、土の中に埋めてあげて墓標を作ってあげた。

その墓標を目の前にしても、ケイは完全に気持ちを切り替えることができなかった。

「……でも、これから俺にはこんなことが続くんだろうな……」

エルフのケイは壽命が長い。

レイナルドたちもきっと長生きするのだろうが、ハーフと単純に考えるとケイより短いかもしれない。

今この島にいる人間が壽命や病気で亡くなっていくのを、きっとケイは見送らなければならないはずだ。

「壽命のことを考えたら、明らかに私が先に死ぬけどいいの?」

これはケイが花にプロポーズした時に言われた言葉だ。

その時はいっぱいいっぱいだったので、頭では分かっていても深く考えないで返事をしてしまった気がする。

それが今になって思い知ることになった。

みんなが段々いなくなっていくのを、自分だけは見送らなければならない。

想像しただけで気分が暗くなる。

「長生きするのも良いことだけじゃないってことか……」

エルフに転生した時は、長生きできて好き勝手に生きられると思っていたが、それはそれで考えものだ。

まさか、こんな思いを重ねなければならないなんて、思ってもいなかった。

「悩み過ぎても仕方がない。その時はその時で乗り越えていくしかない!」

マルたちの死は悲しい。

しかし、キュウが言うように、マルたちはみんなを救ったのだ。

救われた側は謝しつつ、彼らのためにもいっぱい生きていくしかない。

そんな風に結論をだしたケイは、傍から見れば分かりやすいカラ元気を出し、壊れたみんなの住宅を再建しに向かった。

「さすがだな……」

「えぇ……」

やっぱり魔法の存在はありがたい。

壊れた家屋や、火山灰が積もって使いにならなくなった畑も、ケイを含めた魔力の多い者たちの土魔法によってどんどん修復されていく。

その様子を見ていた魔法を使えないルイスとイバンは、心したように言葉を呟く。

獣人の彼らが自分より大きな噴石を運ぶのもすごいのだが、ケイたちの魔法は、同等の大きさの噴石をいくつも同時に移させている。

それを見ていると、魔法のありがたみをじざるを得ない。

「フゥ~……」

畑の様子を見て、ケイは魔法の行使によって掻いた汗を拭って一息吐く。

周囲を見渡すと、レイナルドたちが土魔法で家を建て直している。

他の住居は以前の姿に戻っている。

危険な天災に遭ったが、東の島の被害は數日中に元に戻すことができ、また村には平和な日常が戻ってきた。

子供たちも笑顔を取り戻しつつある。

余震の頻度も減って來ており、このまま火山は鎮靜化していくのだろう。

結局、突如起こった今回の噴火は、島の住人に悲しみと島の拡大をもたらしただけだった。

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