《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第69話
「初めまして、この島の代表をしておりますケイ・アンヘルです」
ケイたちの島に來た船はかなり大きく、そのまま接近しては座礁してしまうので、離れた場所に停泊した。
そこから小舟を出して、數人がこちらに向かってきた。
巨大な帆船にはまだ多くの人間が乗っているが、こちらに人數を合わせてくれたのか、見る限り5人くらいだ。
その5人が浜に著くと、ケイたちはとりあえず普通に挨拶した。
「どうも、我々はカンタルボス國のものです」
ケイの挨拶に、先頭に立っている代表らしき獣人も軽く頭を下げてきた。
5人とも鎧を纏っているので兵隊のようにも見えるが、會話はできそうだ。
彼らもこちらの様子を窺っていたのか、ケイの挨拶をけて話ができると安心したらしく、纏っている空気が僅かに緩んだ。
「カンタルボス國?」
「私たちが住んでいた國の人たちです」
國の名前を言われても獣人の國のことはよく分からないので、ケイは知ってそうなルイスに小聲で問いかけた。
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すると、ルイスも小聲ですぐに答えを返してきた。
「私は國王の命により新規発見されたこの島の調査にきた者たちで、私が隊長のファウストと申します。まさか、住人がいるとは思いませんでした」
詳しく聞いてみると、彼らカンタルボスの國は3年前の噴火によってこの島のことを知ったとのことだ。
そこから海流を調べたり、船を造ったりとしているうちに時間がかかり今になったとのことだ。
彼らの國からしたら人族に先を越されないように急いだのだが、人が住んでいるとは思っていなかったようだ。
「ところで、そちらの彼らは狼人族の者と思われるが?」
「あぁ、彼らは……」
「我々はエンツリオ村の元住人です」
代表のファウストは、ルイスとイバンの顔を見て問いかけてきた。
獣人とケイのような人族が、何故一緒に過ごしているのか疑問に思っているのかもしれない。
ケイは、自分で答えるよりも直接説明してもらった方が良いと思い、軽く手で合図してルイスに説明してもらうことにした。
「おぉ!? 生き殘りがいたのか!」
ルイスの答えを聞いた彼らは、驚きと共にし明るい表に変化した。
だいぶ前のことだというのに、スタンピードによってルイスたちの村が滅ぼされたことを知っているようだ。
「17名ほどで海へ逃れ、この島に流れ著きました。ただ、殘念ながら5名しか生き殘りませんでした」
昔のこととはいえ、同胞や親を亡くしたあの時の悲しみは今でも忘れてはいない。
そのため、ルイスは若干表を曇らせる。
「辛うじて生き殘った我々を救って下さったのがケイ殿です」
「……そうか。同胞を救っていただきありがとうございます」
ルイスの説明をけたファウストと部下らしき者たちは、そろってケイに頭を下げて謝を示してきた。
「いや、當然のことをしただけなので……」
ルイスたちの回復に助力したのはたしかだが、もうだいぶ前のことなので、謝されると気恥しい。
照れ隠しに頬を掻きながら、ケイは何でもないように告げた。
「このことを他の者たちに伝えたら喜ぶことだろう」
「っ!? 生き殘りが他にもいたのですか?」
これまでは一歩引いていたイバンだったが、ファウストの言葉に思わず反応した。
魔の大群が迫る中で、他の村人のことを考えている余裕はなかった。
この島に流れ著き、し心に余裕ができた頃、ようやく気にすることができるようになった。
中には、同じ村でも住んでる場所が離れていて、安否が気になる友人も何人かいた。
生存者がいると聞いて、期待をしてしまうのは當然かもしれない。
「あぁ、30人くらいだが、助かった者たちはいた」
「そうですか!」
ルイスも同じような気持ちなのか、イバンと同じく表が明るくなった。
村に住んでいた人間は、約4000人くらい。
その中で生き殘ったのが、ルイスたちを含めても35人とは、國としても相當な打撃をけたのだろう。
ケイとしては、魔の存在の恐ろしさを改めてじる話だ。
「ただ……」
「……どうしました?」
ファウストは、表を明るくするルイスとイバンに、どこか言いにくそうな顔をした。
それに気付いたケイは、理由を彼に問いかけた。
「……手足を失ったりと怪我をした者が多く、家族を目の前で殺されたことで神的にもかなり弱っている者がほとんどです」
國も魔のスタンピードの話を聞いて鋭部隊を送ったのだが、その時にはもう村は壊滅していたらしく、息のある者や逃げ切った者の保護をすることしかできなかった。
何もできなかった思いもあってか、生き殘った者たちを王都で手厚く援助したのだが、心やに傷を負った彼らは人の多い王都には馴染めず、かといって元の村に近い町に送っても昔を思い出し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発癥したりして、鬱になったり、眠れなくなったりする人が多いらしい。
「……そうですか」
またも話が暗くなってしまった。
こんなことなら聞かなければよかったとケイは思った。
「話は変わり、お聞きしたい事があるのですが……」
「何でしょう?」
ルイスとイバンには悪いが、今は彼らのことをどうにかしなければならない。
そう思い、ケイはファウストに向かって話しかけた。
「調査にきたと仰いましたが、本當にそれだけですか?」
「…………………」
ケイのその言葉に、ファウストは真顔になり無言になった。
その顔で何かあるとじたケイは、服で隠してある腰の銃に手を近付けた。
それを見て、今はこの島の住民であるルイスとイバンも表を険しくしたのだった。
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