《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第72話
「私の主観では、虎人族は攻守、それにパワーとスピードのバランスが良いタイプです」
「へ~」
試合の開始前、ルイスにファウストのことで何か知らないかと尋ねたら、々と教えてくれた。
この島で10年以上過ごしているため、ルイスも彼のことはよく分からないそうだ。
しかし、彼の父である王のレジェスのことは、し知っているとのことだった。
遠くから兵相手の訓練をしているのを見ただけらしいが、しでも報はあった方が良い。
親子で同じだとは思えないが、役には立つだろう。
「特に彼は王族なので英才教育をけているはずです。何の武で戦って來るかわからないですが、どんな武でも一流だと思っていた方が良いですね」
「分かった」
王家の人間は上に立つ者の義務としての頃から戦いの教育をけているらしい。
特に獣人は強いことが重要なので、々な武を訓練しているそうだ。
「……で? どうすればいい?」
聞いたじだけだと、まだファウストの戦い方は分からない。
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だが、相手もケイの戦闘スタイルは分からないはずなのだから、始まって見定めるしかない。
答えを期待したわけではないが、ルイスが大丈夫だというから何か考えがあるのかと思い、ケイは尋ねた。
「いつも通り魔力でねじ伏せれば大丈夫です!」
「そ、そうか……」
ルイスは頭を使うタイプだと思っていたのだが、帰って來たのは脳筋な答えだった。
そんなことで大丈夫なのかと言いたくなるのを抑え、ケイは頷くしかなかった。
「おわっ!?」
そして始まったファウストとの戦いだったが、開始早々ケイは慌てた。
同じ獣人のルイスのイメージが強かったからか、出足が遅れた。
相手に自分のスタイルを摑まれる前に、攻撃を加えようとお互い思っていたようだ。
だが、ファウストのきがケイの予想を上回った。
その速度に僅かに遅れたせいで、ケイは意識を攻撃から回避に変えた。
ファウストの手には片刃の剣、峰の部分でケイの部分を薙いできた。
それをケイは、ギリギリの所でバックステップして躱す。
先程までケイがいた場所を、ファウストの剣が風切り音と共に通り抜けた。
「っ!?」
攻撃を躱されたファウストの方は、驚いたような表をした。
その一撃で終わらせるつもりだったのか、し大振りだったため、ファウストも下がって距離を取る。
「……躱されるとは思いませんでした」
「こっちも驚きましたよ。想像より速くて……」
ファウストはし嬉しそうに話しかけてきた。
ケイもちょっと焦ったのを見られ、若干照れながら話しかけた。
「久しぶりに楽しめそうで嬉しいですよ」
「そうです……か?」
話している最中だったが、ケイはいつの間にかファウストの武が変わっていたことに気付いた。
さっきは剣だったはずなのに、それがなくなって弓になっていた。
しかも、ケイの話が終わる前には矢をつがえて引ききっていた。
「……っと!?」
放たれた矢は、ケイの足目掛けて飛んで來る。
それをケイは左に飛んで躱す。
「っ!? っと!? っと!?」
最初の矢を躱したところへ、ファウストは次の矢を放ってくる。
それが繰り返され、ケイは右へ左へとかされる。
「わっ!?」
ケイの意識を下に移させるのが狙いだったらしく、次にファウストは弓から槍に武を変えてケイの右腕に突きを放ってきた。
それをケイはを捻って躱し、ファウストの左へ回る。
ファウストの槍は、鉛筆のような刺突がメインの攻撃的形態。
回れば刺されることはない。
「スゴイ! これにも反応しますか……」
完全に自分の土俵に持って行ったように思えたのだが、ケイに大怪我を負わせないようにしているとは言っても、避けられるような攻撃をしているつもりはない。
初見の相手は、自分の攻撃のバリエーションに面食らっているうちに勝負に負けるのが常なのだが、ケイにはまだ余裕がじられる。
弓から槍に変わったのを見て躱し、この槍の形狀から橫へ橫へと回られれば、致命傷を與えられる刺突ではなく打撃として使うしかなくなる。
打撃なら、數発食らったくらいでは致命傷にならないと、ちゃんと分かっているきだ。
そのことに、ファウストは驚きながらも楽しくなってくる。
父や兄以外で、ここまでの対応をすんなりこなすケイの実力に、自分以上の強者が持つ様な匂いをじ取ったからだ。
獣人とは、強者に挑むことが楽しい人種なのかもしれない。
『サ〇ヤ人か!?』
“ヒュン!!”
「っ!?」
攻撃を躱されながらも笑みを浮かべるファウストに、ケイは心ツッコミをれていた。
そして、そろそろ攻撃を開始しようと思ったのだが、またもファウストの武が変わっており中止する。
今度はまた剣に変わっており、袈裟斬りを放ってきた。
だが、ケイは慌てることなく躱し、距離を取る。
「面白い戦い方ですね」
「……そうですか?」
距離を取ったケイが明るく言う。
武をコロコロ変える戦闘スタイル。
それがファウストの戦い方。
そして、それをどうやっているかも分かった。
逆にファウストは、この短期間ではまだ自分の戦闘スタイルの全貌を摑まれていないと思っており、ケイの笑みの意味を理解していなかった。
「そろそろ終わらせますね?」
「……できるならどうぞ!」
そういうと、ケイは戦闘開始時から使っている魔闘の魔力量を上げた。
ここまでが全力でなかったというのは自分も同じだが、ケイの周囲の空気が重くなったようにじたファウストは、知らぬ間に流れてきた汗を背中に掻きながら返答する。
「では……」
一言呟くと、ケイは姿を消した。
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