《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第88話

「ハッ!!」

離れた距離を保つように、きながらから銃と魔法で攻撃をするケイ。

2丁拳銃で戦い出してから、リカルドの接近をことごとく防ぐ。

リカルドの方もこの數では近付けないと判斷したのか、段々と追いかけるのをやめ、闘技場の中央で足を止めて防に集中するようになった。

「……くっ!? ……ぐっ!? ……がっ!?」

足を止めたのならばと、ケイはさらに魔法の手數を増やして攻撃を繰り出す。

に専念したからなのか、リカルドの才能によるものなのか、四方から飛んで來る魔法と銃撃を防いだり、躱したりして直撃を回避する。

しかし、數が數だけに、全てを完全に躱せるわけではなく、時折攻撃が掠っている。

そして、リカルドにし隙ができると、接近されケイの蹴りがっている。

「父上が……負ける?」

父がジワジワと追い込まれている狀況に、長男で王太子のエリアスは信じられない表で戦況を見つめていた。

エリアスの戦闘スタイルも、父であるリカルドと同様の戦闘スタイルである。

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まだ父ほどの実力に達していないと自覚しているため、ケイと戦っていたら自分も同じ狀況に追い込まれていただろう。

父だからなんとか大ダメージを負っていないが、自分だったらあの數の攻撃でボコボコになっていたと思うと寒気がしてきた。

無敵に思えた父でさえ、ジワジワと怪我を負っている。

反撃の機會も見つけられず、このままでは父が負けてしまうのではないかと、言い知れない不安が込み上がって來ていた。

「……………………」

実は攻撃しているケイの方は、実の所この狀況を楽観視していない。

有利なのは確かだが、無言のリカルドの目はそこまで慌てているように見えないからだ。

早いうちに無駄に接近するのを諦めたのは、力消費を控えるためと、ケイの魔力が盡きるのを待っているのかもしれない。

ケイからすれば、まだまだ魔力は十分あるので心配がないが、リカルドほどの男がこのまま黙ってやられているようにはどうしても思えないでいた。

「がっ!?」

またも銃弾を躱し勢が崩れたリカルドに、ローキックでダメージを與える。

軽いとは言っても、塵も積もれば山となる。

何度も蹴られてリカルドの太は、赤く腫れてきていた。

「くっ!?」

その足のせいか、勢が崩れることが多くなってきた。

それに合わせて接近すると、ケイはいやらしく痛み出してきたであろう太に蹴りをれる。

案の定、蹴られたリカルドは嫌そうに顔を歪ませる。

「ぐあっ!?」

足が言うことを聞かなくなってきたのか、リカルドはとうとう魔力球が顔面に直撃した。

かなりの衝撃に、さすがのリカルドも一歩後退る。

こうなってしまえばもう、今までのように攻撃を防ぐことが出來なくなり、何発かに1発はケイの攻撃がるようになってきた。

「「「「「………………」」」」」

戦いを見つめる観客たちも、自國の王がやられていく姿を歯を食いしばりながら見つめている。

王が勝つと思っていたからか、このような狀況に悔しさが込み上げ、薄っすら涙を浮かべる者までいる。

「がっ!?」

幾つもの箇所からを流し、太で赤から紫に変化してきている。

このままなら勝てるだろうが、観客のことも考えるとこれ以上長く痛めつけるのはかわいそうだ。

「これで終………」

「ニッ!!」

最後に一撃、多めに魔力を纏った蹴りでこの試合を終わらせようと、ケイはリカルドの顔面に上段蹴りを放った。

しかし、追い詰められた虎は、まさに虎視眈々とこの時を待っていた。

弱り切り、勢が崩れた自分にケイが大振りで仕留めにかかってくるのを……。

「ガルァァーー!!」

「なっ!?」

足を痛めつけられたが、まだ踏ん張るだけなら我慢できる。

その代わり、腕は大したダメージを負っていない。

獣人の魔力はないが、別に無いというわけではない。

ケイのように全魔力を纏って戦うようなことはできないかもしれないが、一部分を一瞬ならできる可能がある。

それを、リカルドは練習無しのぶっつけ本番で放った。

蹴られると分かっていれば我慢はできる。

頭部にケイの蹴りが迫る中、腕と剣に魔力を纏わせ、思いっきり剣を橫薙ぎに振り抜いた。

「「うがっ!?」」

お互いの攻撃は相手に當たった。

ただでさえ重が軽いケイが、片足立ちという不安定な狀態で攻撃をけたため、そのまま吹き飛ばされ、ピンボールのように地面を數度弾んで、仰向けの狀態で止まった。

「ケイ!!」

あまりの一撃に、闘技場の場口の所で見ていた花が慌てて聲をかけた。

普通の攻撃でも直撃すれば大怪我を負うようなリカルドの攻撃なのに、それがまさかの魔力強化による攻撃。

それを食らってしまっては、ケイでも無事では済まないはずだ。

運が悪ければ死んでしまうかもしれない。

そう思うと、侵を防ぐように立ちはだかる目の前の金網を、破壊してしまおうかと腰の刀に手を添えた。

「くっ!?」

分かっていても、仕留めにきたケイの蹴りをまともに食らい、リカルドは深いダメージに膝をついた。

「ぐぅ……」

吹き飛んだケイはというと、左手を使って懸命に上半を起こす。

剣を食らった右手はブラついていることから、折れているのだろう。

握力をなくし、地面に銃を落としている。

「ハハッ、魔力がないだけで、使えない訳ではない……か?」

「ハハッ、賭けに勝ったな」

先程のまさかの攻撃に、ケイは見事過ぎて笑うしかなかった。

リカルドの方もしてやったりと、笑みを浮かべた。

「フラフラですよ?」

「お互い様ですよ」

2人はほぼ同時に立ち上がる。

しかし、ケイはダメージで足がグラつく。

そこをリカルドがツッコミをれるが、リカルドの方も頭部を蹴られてふらつき、ケイもツッコミ返す。

「「フッ!!」」

お互いボロボロになった自分の姿を見て笑い……

「「參った」」

お互い合わせたかのように降參の聲をあげた。

「フフッ……」「ハハッ……」

2人も、まさか相手が降參すると思っていなかったのか、力が抜けたように笑い始めた。

「あっ? …………駄目だ」

力が抜けて張が解けたからか、ケイの視界が一気に歪み、ゆっくりと崩れるように倒れていった。

ただの手合わせのはずが、予想以上に激しくなってしまった。

取りあえず、試合結果は引き分けに終わった。

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