「それではカンタルボスへ戻りましょうか？」

カンタルボス王國の王と王妃が急にいなくなっては、國がどうなっているのかケイの方が心配で仕方がない。

王のリカルドと王妃のアデリナが、この島で栽培した茶葉による紅茶や緑茶でのんびりとしているのはありがたいが、日も沈みだした頃だし、時差も何時間かあるだろう。

そのため、そろそろ戻った方が良い。

このままだと泊まっていきそうな雰囲気なので、ケイは２人へ帰國を促した。

「う～む、もうこんな時間か……」

「エリアスとファウストも困っているでしょうから、帰りましょうか？」

ケイの言葉を聞いて、リカルドとアデリナは沈む夕日を眺めて呟く。

たしかにそろそろ帰った方が良い時間だろう。

王太子のエリアスと次男のファウストには行き先を書置きしてきてはいるが、両親が急にいなくなった代わりに仕事をこなさなくてはならなくなり、てんやわんやの狀態になっているはず。

２人が慌てふためいている姿が想像でき、ケイはかわいそうに思えてきた。

「では行きましょうか？」

「頼みます」「お願いします」

國に帰ることにした２人を連れて、ケイと花は今朝來た時と同じように、家からし行った広場へと向かった。

別にケイの家の中から魔法を使って戻ることはできるが、この島に駐留している兵たちがお見送りをしたいと言っていたので、彼らのためにも広場から戻ることになった。

「「「「「リカルド王！　アデリナ王妃！　またのお越しをお待ちしております！」」」」」

２人を連れたケイと花が広場に著いた時、駐留兵たちは列を作って待っていた。

そして、ケイが転移魔法を準備する前に、綺麗な敬禮と共にリカルドたちへと挨拶をしていた。

見送りに來たのは駐留兵たちだけでなく、島の住人はみんなお土産を持って見送りに來ていた。

々な野菜やを渡され、リカルドは謝の言葉をかけていた。

「花殿もお元気で……」

「花様。またお茶會しましょうね？」

「はい、リカルド様、アデリナ様。またお二人と會える日を楽しみにしています」

ケイが転移魔法の扉が開くと、２人は最後に花へと挨拶をした。

だいぶ仲良くなったのか、アデリナはちょっと寂しそうだ。

それに対して花が２人に別れの挨拶を返すと、２人は手を振りながらケイと共にその場から去っていった。

２人からの了承があったので、ケイはそのまま王城の玉座の間に転移をした。

なお、ケイが使えるようになった転移魔法は、瞬間移とかそういうではない。

そういったも試してみたのだが、何も起きずにただの時間の無駄に終わった。

なので、違う方法を考えていきついたのは、ドラ〇もんどこでも〇アだ。

強くイメージした所と距離をめることを意識し、魔力で作ったドアを開けるとそこへと通じることができるようになった。

し試してみたら、距離や人數などによって消耗する魔力が変わってくるようだ。

魔力の消費量を考えると、ケイならカンタルボスまでの距離を行って帰ってくるくらいは大丈夫そうだ。

「何をしているのですか！！　父上！！」

「全くです！！　何もなかったから良かったものの……」

書置きの時間通りに帰って來たリカルドとアデリナを見て安心したのもつかの間、息子のエリアスとファウストは相を変えて文句を言い始めた。

それも仕方がないので、ケイは黙ってり行きを見守ることにした。

「俺がいなくなったときの訓練だとでも思っておけよ。１日くらいお前らでなんとかなっただろ？」

「それは……」

「……そうですが」

たしかに、いつかはリカルドからエリアスへ代替わりすることになるだろう。

しかし、エリアルは２０代とまだ若いからか、そういったことになるという考えが今までなかった。

今日１日ファウストの手を借りて、父の代役のようなことをやったが、書類仕事が多く、父の苦労を垣間見た気がする。

これを毎日ほとんど休みなくやっていることを考えると、父の偉大さもじ、言い返しにくい。

だが、書置き１枚で突然いなくなった父に言われると、何だか腹が立つ。

「お母様ひどいですわ！！」

息子２人が父に文句を言っていると、娘のルシアの方は母のアデリナに怒っていた。

「私も行きたかったです！」

「「おいっ！」」

ただ、兄たちのように迷をけたからというより、単純に自分も付いて行きたかったからだ。

娘に弱い両親なら、もう勝手にいなくなることはなくなるだろう。

妹に期待していた兄２人は、止めるというより連れて行くことを進言する妹に、思わずツッコミをれた。

「お二人には申し訳ないことをしました。ご容赦ください」

「いや……」「ケイ殿が悪いわけでは……」

きっとリカルドが言い出したことだというのは２人は分かっている。

平気な顔している両親とは違い、素直に謝って來たケイに文句を言うのは違うと思った２人の王子は何も言えなくなった。

「こちらはリカルド殿が釣った魚になります。夕食時にでもどうぞ。あと、こちらはアデリナ様が気にっておられたケーキのレシピです。お詫びと言ってはなんですが、料理人の方にお渡しください」

「ありがとうございます。釣りですか……」

「……ケイ殿にもご迷をかけたようで申し訳ないです。わざわざご配慮いただきありがとうございます」

エリアスは、謝の言葉の後ケイに渡されたバケツにった魚を見て驚いているようだ。

父親が釣りをしている所を、今まで見たことがなかったからかもしれない。

ファウストは島に來た時に島の料理を堪能したことがある。

なので、わざわざレシピを教えてもらえるとは思っていなかったのか、さっきの怒りは飛んで行ったようだ。

「それでは、私はこれで失禮します」

「おぉ、もう帰ってしまわれるか？」

上手いこと息子２人の怒りが収まり、いつもの態度に戻ったことで、ケイは島に戻ることにした。

リカルドが若干名殘惜しそうな表だが、あとは自分たちでなんとかしてもらおう。

言葉が続かないように、ケイは転移魔法を発した。

「來月また報告に參ります」

「ではまた來月」

転移魔法の去り際、ケイがまた來るという意味でいうと、リカルドも答えを返してきた。

普通に聞き流したが、また・・というのが、まさか來月も島に來るということなのではないかと、ケイは帰ってから悩むことになったのだった。