《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第96話
急にきた賓客に慌てたが、すぐにみんないつもの生活に戻っていった。
しかし、數ヵ月後にそれも変わることになった。
「ケイ殿!!」
「おぉ、ミロ。どうした?」
イバンの手伝いで畑仕事をしていたケイは、現れた兵士に手を上げた。
カンタルボスから來て駐留している兵の一人、馬の獣人のミロが慌てたような表をしている。
何か起きたのかと思い、ケイは急いで東の方へミロの後を付いて行った。
「モイセス!」
「ケイ殿……人族です!」
東の海が眺める岬へ向かうと、駐留兵の隊長であるモイセスが、ケイの息子のレイナルドとカルロスと一緒にいた。
ケイがそのモイセスへ呼びかけると、自分を呼んだ理由を端的に告げてきた。
「またか……」
春になったからだろうか、先月初めて人族の船が近くに來るようになった。
どうして今更來るようになったのか、理由は分からないが、前回は単純にここを乗っ取りに來た。
「數が増えたな……」
「懲りないな……」
ケイが呟いた通り、前回は1隻だった船が3隻に増えていた。
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船の帆に描かれているマークは前回と同じなので、同じ國から派遣された者たちなのだろう。
前回きた者たちは、遠鏡の魔道でケイの姿を見て大はしゃぎしていた。
恐らく、絶滅したと言われているエルフが、存在していたのを発見したからだろう。
こちらが拡聲のように魔法で聲を大きくして話しかけたが、會話にならなかった。
まるで世紀末のヒャッハーな人たちのような返ししか來ないので、汚は消毒しておいた。
魔法で波をぶつけ、船を転覆させただけだ。
そして、上手く島にたどり著かれても困るので、海岸に破片すら打ち上がらないように、徹底的に海面破をしてやったのだった。
こんなこと海上でやられては、なすすべなく海の魔の餌へと変わるしかなく、敵は全滅した。
それを近くで見ていた獣人の駐留兵たちは、味方でありながらケイの恐ろしさを改めて思い知った出來事だった。
「とりあえず、何しに來たのか聞いてみるか?」
「お願いします」
魔法が得意じゃない獣人たちではできないので、當然拡聲の魔法はケイがおこなった。
[そこの人族の帆船! 何をしにこの島へと來た?]
両手を筒にするようにして聲を大きくすると、まだ距離のある船へと話しかける。
拡聲は魔道としてもあったはずなので、答えが返ってくるのを待った。
[我々はリシケサ王國の者だ! その島は我々がもらいける! 怪我を負いたくなければ素直にけ渡したまえ!]
前回よりかは冷靜な返しだが、言っていることは変わりない。
遠の魔法で見てみると、先程聲を発していた男はにやけた表をしている。
明らかにケイを見ての反応だろう。
エルフは攻撃をして來ないという自信があるのかもしれない。
モイセスたち獣人の方は警戒しているかもしれないが、魔法がない獣人にはもっと近づかないと攻撃される心配はない。
そこからくる余裕なのだろう。
「レイ! カルロス! 1人1隻だ」
「分かった」「了解!」
生憎、生き殘ったエルフはまともなエルフじゃない。
自衛のためなら平気で反撃を行なう者だ。
一回のやり取りで話す価値がないとあっさり判斷したケイは、こめかみに青筋を立てて息子たちと共に船を沈めることにした。
息子2人も同じことを思ったのか、ケイと同じ表で魔力を高め始めた。
「俺は火で……」「じゃあ、俺は水で……」「俺は……風で行くか」
レイナルドとカルロスも、ケイの指導をけたからか、全屬の魔法を使いこなせる。
ただ、格なのか、本人の好みなのだろうか、特に得意な魔法が存在する。
レイナルドは火と風、カルロスは水と土だ。
その2つからレイナルドは火、カルロスは水を選び、殘ったケイは風で沈めることにした
ケイも含めて3人とも、最近は思いっきり魔法を使うことなんて出來なくなってきている。
なので、まるでその鬱憤うっぷんを晴らすかのように3人とも船へ向けて思いっきり魔法を放った。
「「「ハーッ!!」」」
「なっ!? しょ、障壁……」
同時に3つの屬の超強力な魔法が、3隻の船へとそれぞれ襲い掛かった。
魔法攻撃、しかも超強力な魔法が飛んで來るとは思ってもいなかった人族の兵たちは、驚き、慌てふためいた。
先程拡聲で聲を出していた隊長らしき男は、慌てて魔法兵に障壁を張らせようとしたのだろうが、その命令を指示する時間もなく、ケイの作り出したサイクロンによって、船ごと上空へと巻き上げられた。
「「「ふ、船がだらけに……」」」
カルロスは海水を使用し、螺旋狀に回転させ、ドリルのような槍を幾つも船へと突き刺した。
が開くとその槍はただの海水に戻り、開いたにはドンドン海水がり込んで、海へ引きずり込むように船を沈めていった。
「「「ギャー!!」」」
一番可哀想だったのは、レイナルドの火魔法をけた船に乗った者たちだろうか。
船上が火に包まれ、魔法で消火しようにも火力が強くてなかなか消えない。
消火作業をしている側からまた燃やされ、とうとう自分たちに引火して、悶え苦しむように焼かれていった。
阿鼻喚と言った狀態が繰り広げられている。
モイセスたち獣人の駐留兵たちは、ケイたちを敵に回したお前たちが悪いんだと、どこか同するような目で3隻の船の行方を眺めていた。
“ズドンッ!!”
最後に、レイナルドとカルロスが攻撃した両方の船の上にケイが上空へ飛ばした船が落ちてきた。
サイクロンによって切り刻まれた船の瓦礫が、そのまま雨のように落下し、生き殘っていた者たちへの攻撃へと変わる。
巨大な船が上空から落ちた衝撃で、3隻ともそのまま海の底へと沈んで行った。
「モイセス! 2、3日島周りの警戒を厳重にしてくれ」
「……分かりました!」
ここまでして、もしも生き殘っている者がいたとしたら、余程の強運の持ち主と言えなくはないだろうが、ケイは最後のみすら與えるつもりはない。
辛うじて生きて海岸にたどり著いても、モイセスたちに仕留めてもらうつもりだ。
「すごいな……」
戦いになった時のための駐留兵だが、これなら別に自分たちはいらないのではないかと思ってしまう。
生き殘りの警戒程度で良いのであれば、簡単な仕事だ。
かなり強大な魔法を放っても、何ともないように去っていった3人に、モイセスはかに嘆の言葉を呟いたのだった。
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