《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第314話

「フゥ~……」

ギジェルモの魔力が消え去ったのを確認し、ケイはようやく長い息を吐いて警戒を解く。

そして、まずの回復を計ろうと、魔法の指から回復薬のビンを一本取り出して飲み干した。

それによって、骨折以外の箇所の怪我は回復していった。

「手こずったが、倒せたから良しとするか……」

魔力量から考えて、もうし楽に倒せると考えていたのだが、まさか回復力を利用した無茶苦茶な戦い方をしてくるとは思っていなかった。

最後の方は他人頼みの戦いになってしまい、見積もりが甘かったと反省するしかない。

ただ、結局は勝てたのだから、そこまで悲観的な思いはしていない。

「君!!」

「んっ?」

骨折した腕をひとまず固定して、ラウルに回復魔法をかけてもらおうと思って立ち去ろうかと思っていたケイに、冒険者のシーロとエミリアノが話しかけてきた。

最後の人族たちによる攻撃を準備していたのは、彼らの指示による所が影響していた。

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ケイがの魔法を多用しているのを見て、通用するのは魔法だと判斷し、魔導士たちと共にみんなの魔力をかき集めたのだ。

「助かった。君のおであのギジェルモとか言う吸鬼を倒せた」

「いや、仕留めたのはあんたたちだ。だから禮はいらない」

シーノの謝の言葉に、ケイは當たり障りないじで拒否するような言葉を返す。

それに、最終的に倒したのは人族たちの合魔法のおだ。

あれがなかったら、ケイも結構ヤバいところだった。

「それを言うなら、君が弱らせたことが最後の攻撃を意味あるものにしたんだ」

やんわりと否定したケイに対し、エミリアノが更に謝するように話してくる。

もしも最後の攻撃を撃つまでにギジェルモを弱らせることをしていなければ、攻撃が當たることはなかったのはギジェルモのきを見ていて分かる。

とてもまともに戦える人間なんているとは思えない。

もしも戦えるとしても、この國には存在していなかっただろう。

やはり、ケイによるギジェルモの弱化が勝利の要因だ。

「君はこの國の英雄だ。避難していた市民のみんなにも紹介させてくれ!」

魔族は放置しておくべき存在ではない。

なので、倒すことにしたに過ぎないのだが、英雄扱いされるのは鳥が立つ。

そもそも問題解決もしたことだし、さっさと帰りたいところだ。

「誰のおと言うよりもみんなによる勝利だ。だから気にしないでくれ」

「あっ!」「おいっ!」

人族に褒め稱えられるなんて、冗談に聞こえる。

そのため、ケイは2人をその場に置いて離れる。

折角の英雄をこのまま帰してはいけないとケイを呼び止めるが、建や瓦礫を足場にあっという間に離れて行ってしまった。

「クッ! 行ってしまった……」

「結局何者だったんだ彼は……」

自分たちも魔力を消費してしまっているため、シーノとエミリアノが追いかけようにも足が付いてこない。

結局ケイの姿は見えなくなってしまい、2人は英雄の名前すら聞けずじまいになってしまった。

「よう!」

「おかえり!」

シーノたちを振り切り、ケイは孫のラウルのいる所へと戻ってきた。

離れた場所から戦いを眺めていたラウルは、戻ってきたケイに返事をする。

「危ないところだったね?」

「全くだ。お前に援護をされないと倒せなかったからな」

お互い座り込んで骨折している箇所を回復しながら、ラウルはギジェルモの強さがかなりのものだったと改めて思い返していた。

ラウルと人族たちの協力がなければ危ないところだったため、ケイも安心したように呟く。

片腕での戦いとなり、もしかしたら死んでいたかもしれない。

そう考えると、本當に助かって良かった。

「これでとりあえず一件落著だね?」

「…………」

「じいちゃん?」

元兇となるアンデッドを作していた魔族を倒せたので、これで魔人領へ逃れてくる人族は居なくなるだろう。

それがケイたちが人族大陸に來た理由のため、これでドワーフ王國から最新魔道を手にれられることになった。

何をもらうかウキウキと考えているラウルに対し、ケイは別のことを考え込むように黙っていた。

反応がないため、ラウルは不思議そうに首を傾げた。

「あのギジェルモとか言う奴が口走ったことなんだが……」

「何か言ってたの? 口は無理だよ?」

ここからケイが戦っていた場所までは結構な距離がある。

當然ここまで聲が屆くわけもないので、ギジェルモが何をいったかなんて分かるはずがない。

遠の魔法でこの距離でもケイが戦っていた鵜方はしっかりと見えていたのだが、きだけでないを言っているかなんて分かるはずがない。

ケイならともかく、口の能力のないラウルは、すぐさまケイに容を問いかけたのだった。

「どうやら、今回の魔族たちは何者かによって送り込まれて來た者のようだ」

「えっ!? あんなのをっているのがいるって言いたいの?」

続いてケイの口から出た言葉に、ラウルは驚いたように目を見開く。

離れた所で見ていただけだが、祖父であるケイが苦戦するような相手だった。

そう考えると、そもそも化けのケイをかなりの所まで追い込めていたギジェルモの実力は相當なものだ。

それなのに、ギジェルモが従わなければならないような強者が、この世界のどこかに隠れているということになる。

そう考えると、完全に一件落著と言うには首を傾げるしかない。

「たしか四大魔王の1人であるアマドルとか言うのが背後にいるそうだ」

「四大魔王? あの吸鬼以上の生が4も殘っているって事かい?」

「あぁ……」

完全に理を失っているよな狀態での発言だったため、信憑が疑わしいところだが、むしろケイはそんな時出た言葉だからこそ信用できる報なのではないかと考えている。

ギジェルモ以上が最低でも4存在していることを考えると、かなりの不安が押し寄せてくる。

そのため、ケイとラウルはなんとなく震いをしてしまった。

「その4がどこにいるかってことは聞かなかったの?」

「あぁ……、聞きだしている暇なんてなかったからな……」

ラウルの言うように、居場所が分かればある程度は対応しやすい。

ケイも本當はその四大魔王の居場所が知っておきたかった。

しかし、それを聞き出している時間があれば良かったのだが、生憎ケイも厳しい狀態だったため、結局は居場所なんて聞くことができなかった。

聞いていればこちらから攻めることも出來たため、あまり良い言い方ではないがまたどこかに魔族が出現するのを待つしかない狀況だ。

「はい。終わったよ」

「あぁ、ありがとう」

骨折が治し終わりを告げ、2人は立ち上がる。

遠の魔法で遠くの方を眺めると、人族たちが地獄のような魔の侵攻を阻止できたことを喜びあっている。

過去の記憶から人族のことは好ましくは思わないが、子供が喜んでいる姿はどこも関係なく嬉しくじる。

「とりあえず、魔人國や獣人國、それとドワーフ王國にはこの報を教えた方が良いだろうな」

「うん」

何が目的かは分からないが、魔王エドムンドの狙いはひとまず阻止できた。

もしかしたら今度は他の種族に狙いを付けてくることも考えられる。

そのため、ケイとラウルは魔人大陸に戻り、問題解決を告げると共に魔王の存在を教えることにした。

「じゃあ転移魔法を発するね」

「あぁ、頼む」

魔力をかなり消費しているケイに代わり、援護しかしていないラウルが転移の扉を出現させた。

ギジェルモ以上の相手となると、苦戦することは必至だ。

島に戻って々な面でレベルアップを図る必要があるだろう。

とりあえず、帰って息子たちにも話さないといけないと思いつつ、ケイは転移門をくぐったのだった。

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