《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第315話
「オシアス!」
「あっ! おかえりなさいケイ様! ラウル様!」
転移魔法で魔人大陸に戻ってきたケイとラウル。
流れ著いた人族を保護していた村の近くに戻ると、村の門の近くにオシアスが立っているのが確認できた。
どうやら數人の兵と主に周囲の魔を狩ってきた帰りらしい。
戻ってきたケイたちを確認すると、目を輝かせて近寄ってきた。
「……隨分お疲れのようですね?」
「思ったより面倒な相手だったんでな」
自作の回復薬やラウルの回復魔法で怪我は治療済みなのだが、服は著替えるのを忘れていた。
ボロボロの服裝を見たオシアスは、苦労したのだろうとじ取った。
その視線で自分のなりに気が付いたケイは、新しい服を魔法の指から取り出して著替えることにした。
「ケイ様たちほどの実力者でも苦戦するとはよほどの相手だったのですね?」
「まあな、魔族が2人もいた」
「っ!!」
指導をけていたし、この村まで來る間の魔との戦闘姿を見ていたから、ケイがとんでもない実力者だということは分かったいた。
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しかし、やっぱりスタンピードを止めるのは苦労したのだろうと思っていたが、どうやら違ったようだ。
まさかの魔族という言葉を聞いて、オシアスは目を見開いた。
「魔族が、しかも2……?」
「あぁ、その1はかなり強くてな……」
魔族の恐ろしさは魔族の間でも恐れられている。
かなり昔に1人の魔族が出現し、倒すのに相當苦労したという話が広がっていた。
それに、數年前にドワーフの國にも出現したという話も聞いている。
その時は、ケイとリカルドの協力もあって抑えられたと伝わっているが、最初のは魔人たちは誰も信じていなかった。
獣人の王であるリカルドはともかく、エルフがそんなに強いということは知られていなかったからだ。
魔族1人でもかなりの脅威だというのが伝えられているというのに、それが2人となると相當大変だったのだろうと、オシアスは今更ながらに無茶な頼みをしたものだと思った。
それと同時に、ケイの実力は多なりとも知っているつもりではいたが、毎回魔族を倒してしまうまでの実力だとは思わず、まだまだ実力の一端だけしか知らなかったのだということに改めて思い知った。
「まぁ、何とか倒せたから、あの人族たちは大陸に戻していいぞ」
「畏まりました。この度はありがとうございました」
元々、人族を元の大陸に戻すために問題解決をしたのだ。
その問題は取り除けたので、もう返してしまって良いだろう。
人族たちにも魔族の討伐を伝えたら、元の地へ帰れると喜んでいた。
魔人大陸の魔の強さをでじ、とてもではないが暮らせないと思い知ったようだ。
後はオシアスたちが、人族たちの乗って來た船を修理するなり、新しい船を提供するなりして送り返せば済む話だ。
エナグア魔人王國の國王に問題解決の報告をして、ケイたちはドワーフ王國へ向かうことにした。
「あっ! ケイ様!」
「何だ? 手短に頼む!」
エナグアに戻ると聞いて、オシアスは転移しようとするケイたちを止めてきた。
他の人間に見られないように早々に退散したいところだが、オシアスもそれを分かっているだろう。
そのため、何かあるにしても端的に求めた。
「一目でもラファエルに會っていって頂けますか?」
「あぁ! そうだな。どんな長をしているか確認していくよ」
昔別れる時、また來るといって數年経ってしまっている。
もしかしたらラファエルが自分のことなんて忘れている可能も考えられる。
しかし、魔人大陸に次來るのもいつになるか分からないため、ケイは約束を守るためラファエルに會っておこうと考えた。
かなり魔力作の才があったように記憶しているが、どこまで強くなっているか確認してみたい。
「じゃあ、またな!」
「はい! またお會いしましょう!」
また何かあれば魔人大陸にまた來ることもあるだろう。
そのため、ケイはオシアスに再會を約束するような挨拶をわして転移の扉をくぐろうとした。
その言葉の意味をちゃんと理解したオシアスは、嬉しそうにケイの背中へ挨拶を返したのだった。
「ラファエルってじいちゃんが言ってた天才君だろ?」
「あぁ」
以前エナグアの問題を解決した時に一緒に過ごしていた時、オシアスと共に魔力の作を教えてあげたラファエル。
魔人族では天才と言って良いだろう。
ラウルの問いに対し、ケイは頷きを返す。
「俺より強いの?」
「う~ん。流石にそこまでは行かないかもしれないな」
3、4歳にしてはかなり魔力を摑むが早かったが、やはりエルフのを引くラウルの方が上かもしれない。
しかも、ラウルは獣人のが濃いため、素の狀態の能力だけでも魔人族以上の力を有している。
そのため、ラファエルは恐らくラウルには屆かないだろう。
「俺は結構疲れているし、お前が相手してくれ」
「えっ? 俺も転移で結構魔力使ってんだけど?」
「ハンデとしてはそれで丁度良いくらいじゃないか?」
祖父であるケイに天才と言われるほどの人間だ。
孫のとしては、そのラファエルと言うのがどれほどの強さか気になる。
しかし、自分が相手をするとは思わず、ラウルはまさかのケイの言葉に驚いた。
たしかに魔族と戦って數時間程度しか経っていないので、ケイの魔力はたいして回復していないだろう。
しかし、自分もケイの骨折を治したり、かなりの距離を転移してきたため魔力を結構消費している。
そんな狀態で天才とか言っている人間と戦わせようなんて、相変わらず厳しい祖父に迷する。
それが分かっているのか、ケイはラウルの困り顔が楽しそうだ。
「それで負けたら恥ずいだろ。明日にしてくれよ」
「それはそれで面白いからダメだ」
「面白いのはじいちゃんだけだろ!」
一応男子たるもの、負けるのは嫌だ。
しかも、もしも負けて魔力を使ったからなどと、みっともない言い訳をしたくない。
せめて明日にしてほしいところだ。
しかし、ケイはその提案をけれず、このまま直行する気満々だ。
孫が負けて何が楽しいというのだろうか。
自分の祖父ながら、ドSな扱いにラウルはイラッと來た。
「まぁ、だいぶ経っているから、忘れられているかもしれないけどな……」
「門前払いになったら面白いな」
「……やっぱりのつながった孫だな」
ラファエルと別れて數年経つ。
もしかしたら、會いに行っても兄のオシアスのように自分のことを覚えているとは限らない。
そうなったら、ケイとしてはちょっとショックかもしれない。
ラウルとしては、ショックをける祖父の顔が見てみたいという思いから、忘れられていればいいと腹黒い笑みを浮かべた。
さっきの報復とばかりのラウルの笑みに、ケイは同じようなことで面白がるところが自分とそっくりだとじ、のつながりを確認したような思いだった。
「魔人大陸のことは魔人に任せるのが一番いい。それを確認するためにも真面目に相手してやってくれよ」
「あぁ、分かったよ」
今回はともかく、前回のように自分たちの大陸のことはなるべく自分たちで解決してもらいたい。
そうすれば、他の種族(主に人族)の侵攻には対応できるようになるはずだ。
昔のままちゃんと訓練していれば、その先頭に立てるだけの才能はラファエルにはあるように思える。
それを確認するための訓練をラウルにはしてもらいたい。
魔力の消費のことは気になるが、ケイは自分の方が天才君より上だと思ってくれていると、ラウルは若干嬉しく思っている。
その期待に応えるためにも、ラウルはちゃんと相手することを誓ったのだった。
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