《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第317話

「すごい! 全く當たんない!」

「何で當たんないことが嬉しそうなんだ?」

ラウルにして攻撃を続けるラファエル。

しかし、ギリギリの所でその攻撃は當たらない。

攻撃が當たらないでいるのに、ラファエルは何故か嬉しそうだ。

攻撃を躱している側のラウルは、その笑顔の意味が分からないため首を傾げるしかなかった。

「どうしてだ?」

現役を引退して稽古を付けている立場ならその理由が分かると思い、ケイはバレリオに尋ねることにした。

問いかけられたバレリオは、し言いにくそうにはない始めた。

「魔闘を使った狀態だと、同年代の人間は全く相手にならなくなってしまいましてな……」

「……そりゃそうだろうな」

元々、ケイに指導をけるまで魔人たちはたいした魔力作ができないでいた。

それを必死になって覚えたのがバレリオとエべラルドで、辛うじて魔闘が使えると言って良いのがこの2人だった。

それと同時期に、ケイは小さかったラファエルにも魔力の作の指導をしていた。

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最初は遊びのつもりだったが、教えたことはすぐにマスターしてしまうラファエルに、ケイは驚かされたものだった。

あの當時から天才だったラファエルなら、この年齢で魔闘を使えたとしても不思議ではない。

そうなると、バレリオの言うように同年代の者たちと戦うのは、かなり差があり過ぎて稽古にならないことだろう。

「戦闘部隊の者たちでも、上位の者でないと稽古にならない狀況ですね」

同年代では相手にならないのなら、大人たちに相手になってもらえばいいということになり、バレリオはが戦闘部隊の訓練にラファエルも紛れ込ませた。

それによって相手になれる人間ができたのもいいが、ラファエルはドンドン強くなっていっている。

戦闘部隊の者たちの中でも、しずつ打ち負かされるようになってきていて、バレリオの後を継いだエべラルドも相手にしなければならない狀況になっているのだそうだ。

「ライバルがいないってのも問題だな……」

このままでは外に出られる年齢になる頃には、エナグア王國に相手になる人間はいなくなってしまうかもしれない。

攻めて一緒に切磋琢磨できる人間がいればいいのだが、それもラファエルには難しそうだ。

ラウルに攻撃を躱されて喜んでいるのは、どうやらすぐには追いつけない人間を見つけたことによるものなのかもしれない。

もしも人前に稽古相手になれる人伝がいなくなったとしたら、折角の才能の長が中途半端なままで止まってしまうかもしれない。

ケイは、それがなんとなくもったいない気がしていた。

「この道場に通ってくれていますが、俺が教えてやれるのはもう魔闘を使わない狀態での剣の訓練だけです」

「才能があるのも考えものなのかもしれないな……」

ケイも若い時はライバルと呼べるような人間はいなかった。

しかし、エルフの人生の中では短い期間だとは言っても、リカルドという友がいた。

リカルドは今でも強いが、年齢的にを維持することに注視している狀況といった方が良いかもしれない。

その點、ケイは20代のまま変わることがない。

を倒しての長は鈍くなったが、単純にレベルがアップすればアップする程経験値が必要になるのは當然のことだ。

そういった意味での鈍化と言って良いだろう。

つまりは、まだまだ長できるということになる。

「流石ケイ様のお孫さんだ!」

「……楽しんでいる所悪いが、そろそろこっちも攻撃を開始するぞ!」

「はい!」

ずっと攻撃を躱しているだけで、押されているように見えていたかもしれないが、それはラウルがラファエルの攻撃の癖がないかを観察するための行でしかなかった。

それもある程度分かってきたため、ラウルは反撃に出ることをラファエルに忠告した。

その余裕ともとれる発言に、ますますラファエルは嬉しそうに返事をする。

それだけ差があるというのが、ラファエル自分かっているのだろう。

「…………」「…………」

ラウルがどのように攻撃して來るのかを、今度は自分が見抜こうとラファエルはし距離を取って木剣を構える。

お互いただじっと睨み合うだけだが、いつどう攻めて來るのか分からないラファエルの方が、ラウルの放つプレッシャーにジワジワと圧されているようにもじる。

「シッ!!」

「っ!!」

ゆらりとき、強く短い息を吐くと同時に、ラウルが姿を消した。

実際には姿を消したのではない。

とんでもない速度で視界から消えるように移したのだ。

「ハッ!!」

「ぐっ!!」

死角へ死角へとくラウル。

そして、姿を確認できていないラファエル目掛けて距離を詰める。

死角からの攻撃に、ラファエルが反応できずラウルが処理を得るために木剣を首へと振る。

當然寸止めするつもりだったが、微かにラファエルの視界にラウルの姿がり込んだのか、攻撃をギリギリの所で攻撃が防がれることになった。

「良い反応だ。視界だけでなく魔力探知も咄嗟に広げたみたいだな……」

「えぇ、ギリギリ間に合いました」

勝利と思った攻撃が止められたのだが、ラウルはそれ程驚いていなかった。

というのも、ラファエルがどうやって自分の攻撃に反応したのかが分かっていたからだ。

目で追いきれないと判斷したラファエルが、魔力探知で來る方向だけをじ取ったのだ。

「っと!!」「くっ!!」

攻撃と防によって鍔迫り合いの狀態になり、しの間押し合いをしてからお互い後方へ飛んで距離を取った。

魔闘によって強化された狀態のラウルの方がパワーの面では上のようで、鍔迫り合いも苦しむような聲をらしたおはラファエルの方だった。

「フゥ~……、これは勝ち目はないな……」

「降參するか?」

「いえ! 當たって砕けます!!」

距離を取ったラファエルは、額に汗を掻きつつ弱気な言葉を呟く。

それに対し、痛い目に遭う前に降參を宣言するかを尋ねる。

負けるにしても、當然このまま負けを認めるという訳にはいかない。

最後に自分の持てる力を全て注いで、せめて一矢報いてやろうとラファエルは考えた。

「面白いな! 何をするのか見せてもらおう!」

笑みを浮かべてそう言うと、ラウルは木剣を構えてラファエルが何をしてくるのかを期待しながら待つことにした。

本當なら、何かをされる前に敵を仕留めろようにケイは言っている。

ラウルのそれは、その指導を無視するような行だ。

しかし、ケイはラウルに文句は言わないでおく。

ケイも、ラファエルがどんな攻撃をしてくるのかが気になったからだ。

「ハァ~……!!」

距離を取った場所で、ラファエルは低くくように聲をらす。

どうやら集中して中から魔力をかき集めているようだ。

「ハァッ!!」

「っ!!」

ラファエルは溜めた魔力で地を蹴り、一気にラウルへと接近した。

「おぉ! あれは……」

その魔力の使い方は、ケイも使える技だ。

魔力を足に集中し、その発力によって接近速度を無理やり上げたのだろう。

昔リカルドと戦った時にケイがおこなったのと同じ技を、あの時のケイと同じようにラウルが自分で生み出し実行したということになる。

やはり素晴らしいセンスだと褒めたいところだ。

だが、

「それを考え付いたのは素晴らしが、魔力を溜めるまでの時間が問題だな」

「なっ!?」

これまでにない程の速度で急接近したというのに、ラウルは全く焦る様子がない。

ラファエルはそんなことお構いなく攻撃をしようと、振りかぶった木剣で思いっきりブッ叩いてやろうとした。

だが、木剣が屆くと思た時にはラウルはいつの間にかラファエルの背後へと回っていた。

驚いて固まっている彼を無視し、ラウルの剣が首に添えられていた。

これによって、ラウルの勝利、ラファエルの敗北が決定したのだった。

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