《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第323話
「結局人(15歳)まで預かる形になっちまったな……」
「お世話になりました!」
兄のオシアスに元気でいることを知らせるために年に數回は帰っていたが、ケイの指導をけに來ていたラファエルが、とうとうエナグア王國に帰ることになった。
人年齢になるまで何年も預かっていたため、完全にアンヘル島の住人として馴染んでいた。
そのため、魔人大陸に帰るということになり、住人たちはみんな寂しい思いをしていた。
しかし、今生の別れでもないため、みんな笑顔で分かれることになった。
最後にケイが慨深そうに呟くと、ラファエルは深く頭を下げた。
「エナグアに戻っても訓練をかかすなよ!」
「はいっ!」
ケイによる何年もの修行で、恐らくラファエルは魔人族の中で最強と言ってもいい程の実力をつけたと思う。
他の大陸よりも危険な魔が出現する魔人大陸なら、魔退治をして1人でも強くなることができるかもしれないが、町から出てこの島にきているのは特例だ。
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戻ったらまた20歳にならないと出ることはできないだろう。
しかし、1人だけで出來る訓練はある。
ここを離れてもラファエルなら何とかなるはずだ。
ケイが訓練を継続するように言うと、ラファエルはいつものように元気に返事をした。
「…………」
「オスカルも最後に何か言え!」
ラファエルが魔人大陸に帰るとなり、一番へそを曲げていたのはオスカルだった。
2人とも才能があったため、同年代にライバルと呼べる人間がいなかった。
そのせいでび悩んでいたが、お互いを引き合わせた所それが上手くいった。
ほぼ互角の実力を持ち、ケイの指導をライバルとして切磋琢磨してきた。
今もお互い実力的には伯仲していて、オスカルとしてはこのままこの島で訓練を続けたいというのが本音なのだろう。
別れの挨拶をしたくないのか、ずっと黙って不機嫌そうにしていた。
そんなオスカルを仕方がない奴だと思ったケイは、無理やり挨拶をするように促した。
「ここにいればずっと鍛えられるって言うのに……」
ケイやレイナルドたちによって、アンヘル島のダンジョンはずっと長を続けてきた。
とんでもない化けの巣窟となっているダンジョンは、2人にとっても訓練場としては最適なのだ。
それなのに帰ってしまうなんて、自分との勝負を放棄したようにじてしまう。
どうせ戻っても町の外に出してもらえないというのなら、20歳になるまでここにいれば良いと思えてしまうのだ。
「フンッ! 俺は魔人大陸でもお前よりも強くなってやるよ!」
いつものように憎まれ口を言って來ると思っていったのに、オスカルが本気で殘念そうな表をしたため、ラファエルはし面食らう。
何だかっぽくなりそうだったため、ラファエルの方から憎まれ口をたたくことにした。
「無理だね! 20歳まで町から出れないうえに、魔人大陸の魔なんて今の俺やお前にしたらたいしたことないじゃないか!」
「それでも負けない!」
島のダンジョンで出る魔は強力になり、そこで訓練してきた2人は今では魔人大陸の魔なんて脅威にじなくなっている。
しかも、魔人族には20歳以上にならないと町の外に出られないというルールがある。
これまでの留學という特例がなくなり、ラファエルもまた外に出られなくなるということだ。
とてもこれまでの長を維持できるのか疑問に思える。
そんなオスカルの言葉に対し、ラファエルは自信ありげに言い返してきた。
「頑固者!!」
「そっちこそ!!」
拠のない発言に、オスカルは意地になっているのだと思った。
そうなると、いつものように売り言葉に買い言葉と言った狀況になる。
せっかくの別れがめちゃくちゃになりそうになった。
「また魔人大陸に異変が起きている。俺は故郷を守るために帰るんだ!」
最近魔人大陸の魔に変化が起きている。
魔人大陸は元々魔素の濃度が濃いため強力な魔が多く存在していたのだが、最近その數が増え始めていると話題になっている。
それに対応するように、エナグア王國の戦闘部隊が討伐に出て、何とか數を減らすように頑張っている。
しかし、その討伐している數よりも増加する速度の方が速くなっていて、このままでは対処できなくなるかもしれないという話だ。
それをケイから聞いたラファエルは、もしもの時のために國に戻ることを決意したのだ。
「……フンッ! さっさと帰っちまえ!」
エナグア王國にラファエル以上の実力を持つ人間は存在しない。
もしも今日ろくな魔のスタンピードが起きたとしたら、エナグア王國は崩壊してしまうかもしれない。
そうなったら、ラファエルの兄のオシアスも命を落とすことになる。
そうならないよう、もしもの時は自分も戦うために帰るのだ。
ラファエルのその気持ちも分からなくない。
オスカルだって、この島の住人に危険が迫ると知っていれば、同じような選択を取ることだろう。
それが分かっていても、ライバルがいなくなってしまう殘念な思いも捨てられない。
2つのがじり合っているのだ。
結局、自分ので止めて置けることはできないと、オスカルは折れることにした。
「まぁ、転移魔法もあるし、従魔の速鳥を使えば手紙のやり取りができる。困ったらいつでもここに助けを求めればいい」
「はい! その時はよろしくお願いします!」
島の代表として、最後にレイナルドが話しかける。
ラファエルのことを認めているが、転移魔法はエルフ族にとって重要な魔法である。
ケイが作り出した魔法で、匿すべき魔法だ。
でないと、また人族にこの島を狙われる可能があるからだ。
そんな理由もあってレイナルドやカルロスは教えることを渋っていたが、ラファエルはいつの間にか使えるようになっていた。
どうやら獨學で練習していたようだ。
転移魔法を見せられた時は、やはり天才だとケイを心させることになった。
速鳥というのは、ラファエルの従魔だ。
とんでもない速度で飛ぶ鳥で、長距離を移できるスタミナも持っている。
人族の冒険者ギルドでは、報を通信し合うために保有している重要な鳥だ。
それを何故ラファエルが従魔にしているのかというと、昔ラファエルが卵から孵した雛が速鳥の雛だったのだ。
転移魔法を覚えた今ならラファエルが単獨移する方が速いかもしれないが、ただでさえ人に見られると面倒な上に、かなりの魔力量を消費するためおいそれと使用できない。
それに引きかえ、速鳥なら毎日毎日飛ばすようなことをしなければ問題なくやり取りができる。
エナグアからだと速鳥の行きで1日から1日半といったところ。
そのタイムラグがあるが、もしもの時はケイならすぐに駆け著けることができる。
もしもの時は助けを求めるよう促した。
「ではそろそろ行くとしよう」
「はいっ! 皆さんお世話になりました! またお會いする日を楽しみにしております!」
最後にケイの島のみんなに頭を下げ、ケイの転移の魔法によりラファエルは去っていった。
「チェッ! 本當に行っちった……」
「まぁ、そのまた會えるさ」
強がりを言っていたが、本當にラファエルがいなくなってしまったことで、オスカルは段々と表が暗くなっていった。
そんな息子に、カルロスは肩に手を置いてめるような言葉をかけた。
「あいつより強くなって、後悔させてやる!」
「そうだな。まぁ、その前に今日の仕事をちゃんとやれよ!」
家族のためには戻らなくてはならない。
その選択をしたラファエルに次に會った時のことを考えて、オスカルはいつものようにダンジョンに向かおうおうとした。
しかし、それを止めるように、カルロスは肩に置いた手に力をこめる。
「ぐぅ……」
朝の畑仕事をサボったことがバレて、オスカルは顔を青くした。
ラファエルが去って寂しい思いをしつつも、島はいつもの日々に戻っていったのだった。
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