《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第326話

「いたぞ! 奴だ!」

先に魔王と名乗る者と戦っていた仲間を助けるため、ドワーフ兵の援軍たちが集まってきた。

魔道の武や防を裝備し、初っ端から全力で戦う気満々だ。

「先発隊が倒れているぞ!」

「まずは彼らの生死の確認。それと安全地帯への避難を優先させろ!」

「「「「「了解!」」」」」

援軍の者たちが著くと、標的らしき者の周辺には先発隊の仲間が倒れているのが確認できる。

それを見て援軍に來た者たちは、まず仲間の安否確認と避難を優先させた。

警戒しつつ倒れている者たちを運び始めるが、敵は特に邪魔をする素振りもなく、ただ腕を組んで仁王立ちしていた。

「貴様が魔王とかいう奴か?」

「あぁ、魔王のアマドルという。魔王様もしくはアマドル様と呼べば良い」

「貴様などに様など著けるか!」

援軍の兵の1人が問いかけると、魔王を名乗る者は不遜な態度で名乗ってきた。

名をアマドルというらしい。

アマドルが腕を組みつつ偉そうに言って來るが、當然ドワーフたちは様付けを斷り、武を向けたのだった。

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「おぉ、それがドワーフのおもちゃか?」

「おもちゃだと……」

ドワーフ兵たちが手に持ちにつけている武と防は、王のセベリノが開発に攜わって作り上げたものだ。

ケイから魔王のことを聞いて、兵の戦闘力を強化するために開発してきたのだ。

この素晴らしい魔導兵を見ておもちゃ呼ばわりされるのは、ドワーフとしては許しがたい発言だ。

その言葉を聞いたドワーフ兵たちは、一気に怒りが込み上げて來ていた。

「その言葉後悔させてやる!!」

「それは楽しみだ」

おもちゃ呼ばわりに腹を立てつつも、ドワーフ兵たちは冷靜にアマドルの周囲を囲む。

それを見ても、アマドルは腕を組んだままかないでいた。

言葉通り、ドワーフ兵たちの持つ武や防能を見てみたいという、好奇心のこもった目を向けている。

「行くぞ!」

「「「「「おうっ!!」」」」」

ドワーフ兵たちが警戒しつつアマドルを見ていると、その言葉通り何をするのかを楽しみにするように立ち盡くしている。

襲い掛かってくる気配がないことをじ取ったドワーフ兵たちは、取り出したある武を肩に擔いだ。

「放て!!」

「「「「「ハッ!!」」」」」

取り出した武は、バズーカ砲。

部に込められた魔力を利用し、高速の弾頭が発される。

しかも、アマドルがかないでいることを利用して、ギリギリまで近付いての発をおこなう。

「っ!!」

前方の様々な方向から飛んで來る弾頭を防ぐ事など不可能だろう。

ドワーフ兵たちが思った通り、全弾がアマドルへと直撃して大発を起こした。

「やったか!?」

全弾直撃により勝利を確信したからか、ドワーフ兵の一人が言ってはいけないことを言う。

「フフフ……」

「なっ!?」

フラグの通り、攻撃をけてもアマドルは生きていたらしく、笑い聲が聞こえてきた。

魔力を使って弾丸を発させるという、ケイの銃からヒントを得たバズーカ砲。

まともに食らったら、魔人族大陸の強力な魔でも一撃で倒せるほどの威力を有している。

それを何発も食らって、生きているなんてことが信じられず、ドワーフ兵たちは唖然としたように発によって巻き起こった土煙が治まるのを待った。

「これがドワーフ自慢の武か……」

「無傷……だと?」

土煙が治まって姿を現したアマドルを見て、ドワーフたちはまたも唖然とすることになる。

バズーカによる攻撃で死なないどころか、アマドルは攻撃をけていないかのように傷を負っていなかった。

これだけの威力の攻撃をけて、無傷でいられる生がいるなんて考えたこともなかった。

そのせいか、ドワーフ兵たちは追撃をするのが遅れた。

「お返しだ!」

「まずっ……!!」

バズーカの攻撃をけたアマドルは、組んでいた手をほどき、ドワーフ兵たちに向けた。

驚きから解放された時には遅く、気付いた時にはアマドルの放った竜巻が、ドワーフ兵たちを飲み込んで行った。

「ぐわっ!」「うっ!」「くあっ!」

アマドルの竜巻により、多くのドワーフ兵が上空へと巻き上げられる。

回転に巻き込まれている間に細かく切り傷を負わされた兵たちが、上空から落ちてくる。

多くの細かい怪我を負ってはいるが、みんな何とか著地をする事に功した。

誰も死ななかったのは、ドワーフ兵たちが著ている魔法攻撃へ対抗するために作られた防のおだろう。

「このっ!!」

「おっと!」

仲間が攻撃をけたことで焦った若いドワーフ兵は、バズーカの砲口を向けて発する。

アマドルは迫り來るその砲弾を、今度は魔力の障壁を出現させて防いだ。

その障壁により砲弾は防がれ、またも攻撃は無傷に終わった。

「くそっ!! やっぱり奴には効かないのか……」

これでドワーフの自慢の兵が通用していないことが確実になったため、みんな悔しい気持ちで表を歪めた。

「いや、そうとも限らないですよ……」

「「「「「っ!?」」」」」

これからどう戦うか悩んでいたドワーフ兵たちへ、急に背後から聲がかけられた。

ドワーフ兵たちは何者かと、そちらに目を向ける。

「ラファエル殿!?」

「どうも!」

そこにいたのは、魔人大陸にあるエナグア王國の戦闘部隊の隊長になったラファエルだった。

20歳になったと同時に戦闘部隊の隊長になるなんて、エナグア王國史上初の出來事といわれている。

ドワーフ王國國王のセベリノから援軍の要請をけて、一番速くに到著したのだ。

自分のことに気付いたドワーフ兵たちに、ラファエルは軽く頭を下げた。

「先程のそうとも限らないとは?」

「あぁ……」

現狀が現狀のため、挨拶もそこそこにし、ドワーフ兵の一人はすぐに戦闘のことに話を変える。

ラファエルが言ったことが気になったのもあるだろう。

「ここに來る途中で戦闘を探知していましたが、最初の攻撃をけても平気だったのが、2度目は魔法障壁を張って守っていました」

ドワーフ王國からエナグア王國までの距離は近い。

速鳥による救援の要請も、一番早く到著した。

ケイから聞かされていた魔王の出現と聞いて、ことがことなのでラファエルは魔人兵たちより先に行を開始した。

ケイに匿として教わっていた転移魔法を使い、あっという間にドワーフ王國へと到著したのだ。

「えぇ、それが……?」

たしかにアマドルは、さっきの若いドワーフ兵の攻撃を防いだ。

それがどうしたということだろう。

「もしかしたら、最初の攻撃は無傷だったのではなく、怪我をけてもすぐに治ったという可能があります」

「なっ!! 本當ですか!?」

「あくまで可能です!」

たしかに攻撃をけても無傷だったのなら、別に守る必要などないように思える。

ラファエルの言うように、もしかしたら最初のバズーカ攻撃は効いていたのかもしれない。

「自分が隙を作ります。皆さんはその隙を狙ってください」

「わ、分かりました!」

普通にドワーフ兵たちが攻撃しても、魔力障壁で防がれてしまうかもしれない。

そのため、ラファエルは自分がアマドルと戦ってみることにした。

軽い準備運をしたラファエルは、武の刀を手にアマドルへと近付いて行ったのだった。

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