《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第336話
「んっ? 作戦の話し合いは済んだか? ようやく鈍っていたきが元に戻りつつあるんだ。もっと楽しませてくれよ」
ケイとカルロスが話し合うなか、サンティアゴは黙ってり行きを見守っていた。
そして、ケイたちが何かを決意したような目を見て、何かしてくることを確認した。
何を話していたかは分からないが、楽しそうな笑みを浮かべている。
眠りから覚めて初の戦闘でが思うようにいていなかったが、ケイたちのような強者が相手になってくれたことで段々と元に戻りつつある。
久々の覚に楽しくなってきたサンティアゴは、挑発するように2人へ手招きした。
「余裕ぶりやがって……」
「落ち著け。俺は行くから任せたぞ?」
「了解!」
サンティアゴの舐めた態度に、カルロスは腹を立てる。
しかし、ケイはそんな事で腹を立てることもなく、冷靜にカルロスのことを諫める。
父に諭され、カルロスもすぐに冷靜さを取り戻した。
「「ゴー!!」」
「んっ!?」
Advertisement
ケイとカルロスは、アイコンタクトによって息を合わせる。
そして、カルロスはサンティアゴへと向かっていき、ケイは島の森の中へと走り始めた。
純エルフの方が自分に背を向けて走り出したことを不思議に思いながら、サンティアゴは向かってきたハーフエルフの剣撃を土魔法で作り出した剣でけ止める。
「オイオイ、まさかあいつ逃げたのか? それともお前ひとりで俺に勝てると思っているのか?」
鍔迫り合いのような狀態になったカルロスとサンティアゴ。
その狀態のまま、サンティアゴは目の前のカルロスへと問いかける。
「フンッ!」
「っと! 答える気なしか?」
サンティアゴの質問に対し、カルロスは無視するように押す力を強める。
押される力に逆らうことなく、サンティアゴは後方へと跳び退いた。
そして、無視されたことを殘念そうに息を吐いた。
「セイッ!」
「おわっ!?」
跳び退いたサンティアゴを、カルロスは追いかけて刀による連撃を繰り出す。
相手が1人になって余裕をかましていたせいか、サンティアゴは追撃を予想していたなかったようだ。
目の前へと迫り來るカルロスの攻撃を、慌てたような聲を上げて防ごうとした。
「ハッ!!」
「痛っ!」
カルロスの連撃のうちの1つが、サンティアゴの腹を淺く斬り裂く。
斬られたサンティアゴは、顔をしかめながらまたも後方へと跳び退き距離を取った。
「痛て……、お前の方は剣技もすごいな」
「チッ! また……」
せっかくダメージを與えたと思っても、またもその傷は再生によって回復してしまった。
しばらく戦っているが、魔法による回復よりも斷然魔力消費のないサンティアゴの再生にはうんざりしてくる。
何度斬りつけても再生し、たいして魔力も消費しないため、きが全然鈍らない。
それどころか、先程サンティアゴが言ったように、段々とのキレが良くなってきて攻撃を當てることすら難しくなる一方だ。
まさにチート能力と言ってもいい。
「まぁ、そんな剣技も……」
「っ!?」
サンティアゴは話の途中で地を蹴る。
そして、今度は自分からカルロスに剣撃を放ってきた。
「ハッ!!」
やや大振りの攻撃。
その隙を見逃さず、カルロスは刀でサンティアゴの剣を持つ右手首を斬り飛ばした。
「ヌンッ!!」
「ガッ!?」
「再生があるからこんな手も使えるんだよ」
手を斬り飛ばされたというのに、サンティアゴはそのままカルロスへと接近する。
そして、攻撃をしたばかりのカルロスの腹へ左拳を打ち込んだ。
攻撃をけたカルロスは、今度は自分が後退させられることになった。
「ぐうぅ……、斬られながらか」
直撃をけたカルロスは、痛みの強さに顔を歪める。
どうやら、肋骨に痛手を負ったようだ。
しかし、痛みの合としてヒビがった程度だと確信し、すぐに攻撃をけた個所に回復魔法をかけた。
ケイからも言われていたが、再生ができる敵はわざと自のを犠牲にして、隙をついてくるという話をけていた。
まさに先程の攻撃は、右手を斬り飛ばさせることを見越しての攻撃だった。
「おぉ! 回復魔法も使えるか? 素晴らしいが、俺の再生の方が魔力を消費しない。これが種族の差だ」
回復魔法をかけるカルロスを見て、サンティアゴは心したように笑みを浮かべる。
訓練を重ねないと、回復魔法はただの魔力食いの魔法でしかない。
しかし、カルロスの回復魔法はごく量であっという間にダメージを取り除いたようだ。
それを見ると、目の前のハーフエルフが相當な訓練をしたことがうかがえる。
素晴らしいと思うが、サンティアゴは再生という回復魔法以上の能力を所持している。
そのことを、カルロスの回復魔法と同じ速度で回復させた右手を見せて自慢してきた。
「もう一人が何をやっているのか分からないが、お前を痛めつければ戻ってくるだろう……」
ケイがどこに行ったのかが気になるのか、サンティアゴは森の方へと目を向けながら話を続ける。
何を企んでいるのかは気になるが、知ってしまっては楽しみが半減する。
そう判斷したサンティアゴは、まずは目の前のハーフエルフを痛めつけることにした。
「だから本気でやってやるよ!」
「っっっ!?」
言葉と共に、サンティアゴはこれまで以上の魔力を全に纏う。
その魔力量に、カルロスは目を見開いた。
「そんな魔力を使って、が耐えられるわけ……」
「ハッ!!」
「速っ!!」
魔闘の魔力量を増やすということは、更なる強化を施したということだ。
しかし、魔力量を増やせば増やすだけその制は難しくなる。
その制ができなければ、その反は筋挫傷《きんざしょう》俗稱、離れや骨折などといった形でへと返ってくる。
魔闘に使用する魔力量は、日々の訓練によって見極めるものだが、どう見てもサンティアゴは制できている用意は見えなかった。
そのことを指摘したカルロスを無視し、サンティアゴはそのまま地を蹴る。
魔力量の増大によってサンティアゴの移速度がアップし、一瞬にしてカルロスとの距離をめ、剣による攻撃がカルロスの脳天へと振り下ろされた。
その移速度に驚きつつも、カルロスは何とかその攻撃を刀でけることに功した。
「グッ!! 防いだってのになんて力だ! ……そうか!!」
攻撃を防いだのはいいが、魔力量のアップによりパワーまで上昇しているため、その場でけ止めるようなことはできずに、カルロスは吹き飛ばされる形になった。
とても制できていないというのに、どうしてサンティアゴが魔力量を増やしたのかカルロスには理解できなかったが、その答えはすぐに導き出せた。
「奴の場合壊れても関係ないからか……」
魔力量の限界を見極めなければならないのは、制ミスによってを痛めることを防ぐためだ。
しかし、サンティアゴは怪我をしてもすぐに再生させることができる。
そのため、怪我をしようが気にすることなく魔力量を増やすことができるということだ。
「本當に面倒な……」
パワーアップにまで再生が関わって來たことに、カルロスはまたもうんざりした。
もしも自分や父に、サンティアゴと同じ再生能力があれば、エルフの莫大な魔力量をの負擔など気にすることなく強化に當てることができる。
つまり、強化だけで世界最強になれてしまうということだ。
そう考えると、サンティアゴが自慢していた通り、たしかに羨ましく思えてきた。
「ハハッ!」
「ハハッ……」
武を構えて向き合う2人のうち、サンティアゴは楽しそうに、カルロスは困したようにという対照的な笑みを浮かべることになったのだった。
書籍・漫畫化/妹に婚約者を取られてこのたび醜悪公と押しつけられ婚する運びとなりました~楽しそうなので張り切っていましたが噂が大げさだっただけで全然苦境になりませんし、旦那様も真実の姿を取り戻してしまい
【書籍化・コミカライズ企畫進行中】 「私は父に疎まれておりました。妹に婚約者を取られても父は助けてくれないばかりか、『醜悪公』と呼ばれている評判最悪の男のところへ嫁ぐよう命じてきたのです。ああ、なんて――楽しそうなんでしょう!」 幼いころから虐げられすぎたルクレツィアは、これも愛ゆえの試練だと見當外れのポジティブ思考を発揮して、言われるまま醜悪公のもとへ旅立った。 しかし出迎えてくれた男は面白おかしく噂されているような人物とは全く違っており、様子がおかしい。 ――あら? この方、どこもお悪くないのでは? 楽しい試練が待っていると思っていたのに全然その兆しはなく、『醜悪公』も真の姿を取り戻し、幸せそのもの。 一方で、ルクレツィアを失った実家と元婚約者は、いなくなってから彼女がいかに重要な役割を果たしていたのかに気づくが、時すでに遅く、王國ごと破滅に向かっていくのだった。
8 1526/15発売【書籍化】番外編2本完結「わたしと隣の和菓子さま」(舊「和菓子さま 剣士さま」)
「わたしと隣の和菓子さま」は、アルファポリスさま主催、第三回青春小説大賞の読者賞受賞作品「和菓子さま 剣士さま」を改題した作品です。 2022年6月15日(偶然にも6/16の「和菓子の日」の前日)に、KADOKAWA富士見L文庫さまより刊行されました。書籍版は、戀愛風味を足して大幅に加筆修正を行いました。 書籍発行記念で番外編を2本掲載します。 1本目「青い柿、青い心」(3話完結) 2本目「嵐を呼ぶ水無月」(全7話完結) ♢♢♢ 高三でようやく青春することができた慶子さんと和菓子屋の若旦那(?)との未知との遭遇な物語。 物語は三月から始まり、ひと月ごとの読み切りで進んで行きます。 和菓子に魅せられた女の子の目を通して、季節の和菓子(上生菓子)も出てきます。 また、剣道部での様子や、そこでの仲間とのあれこれも展開していきます。 番外編の主人公は、慶子とその周りの人たちです。 ※2021年4月 「前に進む、鈴木學君の三月」(鈴木學) ※2021年5月 「ハザクラ、ハザクラ、桜餅」(柏木伸二郎 慶子父) ※2021年5月 「餡子嫌いの若鮎」(田中那美 學の実母) ※2021年6月 「青い柿 青い心」(呉田充 學と因縁のある剣道部の先輩) ※2021年6月「嵐を呼ぶ水無月」(慶子の大學生編& 學のミニミニ京都レポート)
8 193斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】
【書籍化、コミカライズ情報】 第一巻、2021/09/18発売 第二巻、2022/02/10発売 第三巻、2022/06/20発売 コミカライズは2022/08/01に第一巻発売決定! 異母妹を虐げたことで斷罪された公爵令嬢のクラウディア。 地位も婚約者も妹に奪われた挙げ句、修道院送りとなった道中で襲われ、娼館へ行き著く。 だが娼館で人生を學び、全ては妹によって仕組まれていたと気付き――。 本當の悪女は誰? きまぐれな神様の力で逆行したクラウディアは誓いを立てる。 娼館で學んだ手管を使い、今度は自分が完璧な悪女となって、妹にやり返すと。 けれど彼女は、悪女の本質に気付いていなかった。 悪女どころか周囲からは淑女の見本として尊敬され、唯一彼女の噓を見破った王太子殿下からは興味を持たれることに!? 完璧な悪女を目指した結果溺愛される、見た目はエロいけど根が優しいお嬢様のお話。 誤字脫字のご報告助かります。漢字のひらがな表記については、わざとだったりするので報告の必要はありません。 あらすじ部分の第一章完結しました! 第二章、第三章も完結! 検索は「完璧悪女」を、Twitterでの呟きは「#完璧悪女」をご活用ください。
8 181【書籍化決定】白い結婚、最高です。
沒落寸前の男爵家の令嬢アニスは、貧乏な家計を支えるため街の菓子店で日々働いていた。そのせいで結婚にも生き遅れてしまい、一生獨身……かと思いきや。 なんとオラリア公ユリウスから結婚を申し込まれる。 しかしいざ本人と會ってみれば、「私は君に干渉しない。だから君も私には干渉するな」と言われてしまう。 ユリウスは異性に興味がなく、同じく異性に興味のないアニスと結婚すれば妻に束縛されることはないと考えていた。 アニスはそんな彼に、一つだけ結婚の條件を提示する。 それはオラリア邸で働かせて欲しいというものだった。 (ツギクル様にも登録させていただいてます) ※書籍化が決定いたしました。12/9、ツギクルブックス様により発売予定です。
8 165久遠
§第1章クライマックスの35話から40話はnote(ノート)というサイトにて掲載しています。 あちらでの作者名は『カンジ』ですのでお間違いなく。表紙イラストが目印です。 ぜひぜひ読んでください。 また第2章は9月1日から更新します。第2章の1話からはまたこちらのサイトに掲載しますので、皆様よろしくお願いいたします。失禮しました~§ 「君を守れるなら世界が滅んだって構いやしない」 この直來(なおらい)町には人ならざるものが潛んでる。 人の生き血を糧とする、人類の天敵吸血鬼。 そしてそれを狩る者も存在した。人知れず刀を振るって鬼を葬る『滅鬼師』 高校生の直江有伍は吸血鬼特捜隊に所屬する滅鬼師見習い。 日夜仲間と共に吸血鬼を追っている。 しかし彼にはもうひとつの顔があった。 吸血鬼の仲間として暗躍する裏切り者としての顔が………
8 198【新】アラフォーおっさん異世界へ!! でも時々実家に帰ります
書籍第1~2巻、カドカワBOOKSより発売中!! 『おめでとうございます!! あなたは15億円獲得の権利を得ました!!』 といういかにも怪しげなメールを受け取った在宅ワーカー大下敏樹(40)は、うっかり大金の受領を選択してしまう。悪質な詐欺か?ウイルス感染か?と疑った敏樹だったが、実際に15億円の大金が振り込まれていた。 そして翌日現れた町田と名乗る女性から、手にした大金はそのまま異世界行きのスキルポイントとして使えることを告げられ、最低限のスキルを習得した時點でいきなり異世界の森へと飛ばされてしまう。 右も左もわからない、でも一応チートはあるという狀況で異世界サバイバルを始めた敏樹だったが、とあるスキルにより日本に帰れることが判明したのだった。 合い言葉は「実家に帰らせていただきます!」 ほのぼの時々バイオレンスな、無理をしない大人の異世界冒険物語、ここに開幕!!
8 91