《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第341話

「ん? ようやく戻ってきたか……」

「……貴様っ!!」

魔王ソフロニオがいる場所から姿を消していたレイナルド。

しの時間を空けてこの場へ戻ってくると、レイナルドは戦場の狀況を見て驚愕の表へと変わる。

というのも、ソフロニオの相手を任せた獣人たちが、全員倒れていたからだ。

辛うじて息をしている者から、明らかに息をしていない者。

最後まで殘っていたであろう隊長のブラスも、ソフロニオの足下で蹲っている。

頼みのキュウとクウも、怪我と魔力切れでけなくなっているようだ。

こんな最悪に近い狀況も理解していたとはいえ、実際に目の前にするとソフロニオへの怒りしか湧いてこない。

そんなレイナルドを見かけたソフロニオは、返りにまみれた顔で笑みを浮かべていた。

「ハハッ! 何をしていたのか分からないが、こいつらを相手に遊ばせてもらったぞ」

ソフロニオは、両手を広げ獣人たちが倒れている現狀をレイナルドに見せつける。

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まるで自慢するかのような態度だ。

「さて、お前もこいつら同様けなくしてやろう」

どこへ行っていたのか分からないが、戻ってきたのなら探す手間が省けたようなもの。

ターゲットをレイナルドとしたソフロニオは、に染まる手を向けて構えを取った。

「うぅっ……」

「…………」

レイナルドへと殺気を向けるソフロニオの足を、足元で蹲るブラスが摑む。

もうレイナルドが戻ってきているというのにそれに気付いていないのか、時間を稼ぐという約束を守ろうとしているのかもしれない。

這いつくばりながらも足を摑んで來たブラスに対し、ソフロニオは無言で睨みつける。

「……邪魔だ!」

「ゴフッ!!」

もうほとんど抵抗もできないくせに自分の邪魔をしてくるブラスを、煩わしく思ったソフロニオは摑まれていない方の足で蹴飛ばす。

蹴り飛ばされたブラスは、地面に何度もバウンドして転がっていった。

しばらく転がって止まったブラスは、ピクリともかない。

生きているのか死んでいるのかも分からない狀況だ。

「ブラス!! 貴様っ!!」

「他の奴に気を取られていて良いのか? 何だか顔が悪いぞ……」

「クッ!!」

怒りで今にも斬りかかりたいところだ。

しかし、ソフロニオの言うように、レイナルドの顔が優れない。

ソフロニオには気付かれていないようだが、封印魔法の魔法陣を描くために大量の魔力を使用している。

一気に魔力を使ったことにより、疲労が押し寄せてきている狀況だ。

魔法陣の発のためにも、これ以上の魔力消失は控えたいところだ。

『今すぐにでも魔法陣を発させたいところだが……』

ソフロニオを封印するのなら、今すぐに魔法陣を発させてしまえばそれで封印できるはずだ。

しかし、そうしたくてもレイナルドにはできない理由があった。

それは、ブラスをはじめとした倒れている獣人たちだ。

生きている者も死んでいる者も、このまま封印の中に閉じ込めてしまう訳にはいかない。

せめて、彼らを本島に移させてから魔法陣を発させたい。

「ハッ!!」

「くっ!」

みんなのことが気になり、レイナルドは魔法陣を発するのを躊躇う。

そうしている間に、ソフロニオは攻撃を仕掛けてくる。

レイナルドは、倒れているみんなに更なる被害が及ばないように、攻撃を躱しつつこの場からしずつ離れた。

『くそっ! このままじゃ、魔法陣を発させる前に俺がやられちまう!』

距離を取れたのはいいが、自分1人でソフロニオの相手はきつい。

攻撃を躱すだけで一杯で、このままいつまでも逃げていることなどできないだろう。

そうなると、せっかくの魔法陣も意味をなさなくなる。

ソフロニオの爪攻撃を躱しつつ、レイナルドは倒れているみんなを巻き込んでしまうことになっても、魔法陣を発させるべきか頭を悩ませた。

【レイ! みんなは任せて!】

「っ!?」

どうするべきか悩むレイナルドに、突如念話が屆く。

その念話が屆くとすぐに、倒れているみんなが突如浮かび上がり始めた。

そして、そのままエルフ島の本島の方へと飛んで行った。

「さすがキュウ! ありがとよ。これで心置きなく発できる」

こんなことができるのは、父の従魔であるキュウしかいない。

そのことに気付いたレイナルドは、獨り言のようにキュウへ謝の言葉を述べた。

「何を言って……」

「フンッ!!」

突如獨り言を呟いたレイナルドに、ソフロニオは一旦攻撃の手を止めて訝し気な表になる。

レイナルドはそのチャンスを見逃さない。

話している最中のソフロニオを無視し、封印の魔法陣を発させた。

「……? 何だこれは?」

レイナルドが地面に手を突くと、魔法陣が発する。

それにより、あっという間にドーム狀の壁が出現し、人工島を覆い盡くした。

その壁の中に閉じ込められたソフロニオは、まだ何が起きたのか理解していないようだ。

「封印の魔法だ」

「なっ!?」

“ガキンッ!!”

魔法陣を発させると同時にその場から跳び退いたレイナルドの返答に、ソフロニオは慌てて壁を爪で斬りつける。

しかし、質な音を響かせるだけで、全く壁を破壊することはできない。

「お前、このために……!?」

「今頃気付いたか?」

「くっ!! こんな壁!!」

“ガキンッ!! ガキンッ!!”

今更になってレイナルドの行の意味を理解したのか、ソフロニオはレイナルドを睨みつける。

そして、何とかして外に出ようと両手の爪で壁をがむしゃらに斬りつけ始めた。

「おのれっ! せっかく地上に出たばかりだというのに!!」

した魔法陣はを増し、ドーム狀の壁は更に高質化していく。

そのため、父のケイ並みの魔力を有するソフロニオであっても、全力で攻撃しても壁を壊すことができず、段々と地面へと吸い込まれ始めた。

「おのれっ!! おのれーー!!」

段々と魔法陣の中に吸い込まれて行ったソフロニオは、大きな喚き聲と共にそのまま地中深くへと消えていった。

「ハァ、ハァ、ハァ……」

魔法陣を発させて跳び退いたレイナルドは、魔力切れ寸前のを押して本島へと泳いで戻った。

海岸に著いたレイナルドは、疲労困憊で息を切らし仰向けに橫になった。

「お疲れ……」

「ハァ、ハァ……、父さん……?」

海岸でを休めていたところで、父のケイと弟のカルロスが姿を現した。

そして、彼らも魔王の1と戦ってきたということを、レイナルドは知ったのだった。

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