《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第343話

「ラウル! 行くぞ!」

「あぁ、分かった!」

急遽カンタルボスにった報告に、客人であるファビオとラウルも特別に加わって、すぐさま會議がおこなわれた。

その結果、リカルドがドワーフ王國へ援護に向かうことが決まり、ファビオとラウルも同行することになった。

他にも獣人大陸の各國が參戦することが決まっているが、事が重大なため、ファビオの転移で先に3人でドワーフ王國へと向かうことにした。

「兄さんは國に戻った方が良いんじゃないか?」

「いや、魔王なんて存在放って置くわけにはいかない。お前だけでなく、俺も行った方が確実に勝率が高まる」

自分とは違い、兄のファビオは小國とはいえエルフ王國の王太子の立場だ。

跡継ぎが他國の戦いに関わって、もしものことがあってはいけない。

そのため、ラウルは自分が行くからファビオは戻った方が良いのではないかと考えた。

しかし、ファビオはその考えを否定した。

ドワーフ王國は、エルフ王國にとても同盟國に當たる。

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祖父のケイは、転移できると言っても遠く離れた日向へと向かってしまっているため、魔王の出現を知らせるまでの時間がかかってしまう。

ならば、最初に知った自分たちが向かうのが一番速い。

この時のためにケイが開発した封印魔法は、自分とラウルも使えるようになっている。

しかし、祖父のケイや父のレイナルドと比べると、魔法陣を完させるまでの時間が違う。

その問題を解消するために、2人で行った方が良いと判斷した。

「オスカルは?」

封印の魔法のことを考えると、1人よりも2人という兄の言うことは分かる。

ならば、2人よりも3人なら更に良い。

そう思ったラウルは、ファビオの子供であるオスカルのことが頭に浮かんだ。

「ラファエルに會いに行くとか言ってたから、魔人の國へ行ってるんじゃないか」

「そうか……」

ファビオの息子のオスカルは、魔人のラファエルに會いに行くと言って、エルフ王國からいなくなっていた。

そのため、魔人大陸に行っているのだとファビオは思っている。

魔人のラファエルは、ケイが一時期引き取り、エルフの國で訓練をつけていた。

年齢的にも近いオスカルは、ラファエルをライバルとして張り合うことで実力を高めてきた。

封印魔法は1人で使いこなすことはできないが、戦闘面ではかなり役に立つ。

出來ればオスカルも連れて行きたかったところだが、エルフ王國にいないのでは呼び出すのも無理そうだ。

仕方がないので、ラウルはオスカルのことは諦めることにした。

「転移できるからって、好き勝手してるな……」

「まぁ、覚えたばかりだから仕方ないんじゃない?」

息子の頼みということもあって、ファビオは転移魔法を教えた。

それがし前に使いこなせるようになったため、々な場所へと行くようになってしまった。

ファビオは祖父のケイのことが好きではあるが、出來ればそういったところは似てしくなかった。

「あいつも一応王族になるのだから、好き勝手するのをやめさせないとな……」

「まぁ、そうだね」

エルフ王國もしずつではあるが発展していっている。

そのため、一応王族であるオスカルも、これまでのように國民の者たちと同じように生きていくのではなく、上に立ち國民のために何ができるかを考えるべき存在でなくてはならない。

なのに、いろんな場所へ好き勝手に移するのは困ったことだ。

そろそろそれを注意するべき時なのではないかと、ファビオは考えていた。

王になることのないラウルとしては、まだ若いのだから甥っ子の好きにさせていいのではないかとも思っているが、そこは兄に任せるべきだと思っているため、余計なことを言うのは控えた。

「2人共準備は良いか?」

「はい!」「大丈夫です!」

ファビオとラウルが待ち合わせ場所に到著すると、防を裝備したリカルドが先に來ていた。

2人の姿を見たリカルドは、引き締まった顔で話しかけてきた。

その問いに対し、2人は力強く返事をした。

「あなた、気を付けてね」

「あぁ、必ず帰るから、ここで待っていてくれ」

「えぇ……」

出現した魔王との戦いに向かうラウルに、妻のルシアが心配そうに話しかける。

リカルドの娘であるため、ルシアも魔族の存在が危険だということは知っている。

その魔族の王という存在を相手に夫のラウルが戦いに向かうのだから、心配になるのも仕方がない。

そのルシアに、ラウルは笑顔で返答する。

義父であるリカルドや、兄のファビオもいるのだ。

もしもの時には封印魔法という切り札も持っている。

そのため、ラウルはこの場へ必ず帰ってくることを約束した。

「パパ……」

「大丈夫! 俺が帰るまでママと一緒に待っていてくれ」

「うん……」

息子のカミロが現狀を全て理解しているのか怪しいが、父がどこか危険な所へ向かうことは分かっているらしく、不安そうに話しかけてきた。

そんな息子に対し、ラウルは頭をでながら諭すように話しかける。

そのラウルの言葉に、カミロは頷きを返した。

「カミロ! おじいちゃんも行って來るからな!」

「……うん。頑張って……」

「あぁ! じいじは頑張ってくるぞ!」

ラウルとのやり取りを見ていたリカルドは、さっきの真剣な顔はどこへ行ったのか、弛んだ顔でカミロへと話しかける。

その圧に若干おされつつ、カミロはリカルドへ応援する言葉をかける。

その言葉に力を得たのか、リカルドは上機嫌で力瘤を作って見せた。

「父上! やはり俺も……」

「言っただろ。お前はもうこの國の王だ。これからはお前の世代がより良い國へと導くんだ」

エリアスも會議では自分も行くと言っていたのだが、リカルドに止められた。

しかし、やはり父だけに危険な場所へ行かせることが我慢できないのか、またも自分も行くと言おうとした。

だが、リカルドもその時と同じ理由でそれを止めた。

「ならば俺が……」

「お前は、エリアスがもしも國を間違えた方向に導きそうになった時、それを修正するという重要な役割があるから駄目だ」

父の生前退位により、エリアスはもうカンタルボスの國王だ。

なので、父の言うように危険な場所へ行くことを許可できるわけがない。

それに反し、自分は次男だ。

もしものことがあっても、この國に大きな問題が起こることもない。

そう思ったファウストは、兄のエリアスの代わりに自分が行くことを提案しようとした。

しかし、これもまたリカルドによって會議の時と同じように止められた。

父の言うことも分からなくはない。

そのため、エリアスとファウストはそれ以上同行することを求めるようなことはやめるしかなかった。

「では行こう!」

「「はい!」」

リカルド親子のやり取りの最中に、ラウルは転移の魔法を発させる。

そして、やり取りが終わると、3人は転移の扉をくぐって魔王のいるドワーフ王國へと向かって行ったのだった。

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