《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第344話
「ハッ!!」
「グッ!!」
「このっ!!」
ドワーフ王國に出現した魔王アマドル。
救援をけ、魔人王國からラファエル。
隣國であるヴァーリャ王國の國王であるハイメが、援軍としてこの地へと現れて戦っていた。
ラファエルだけでは実力差があり、とても抑え込めるような相手ではなかったが、ハイメが來たことにより足止め程度はできるようになった。
戦闘方法はアマドルの攻撃をハイメが抑え、ラファエルが隙をついて魔法で攻撃するという形だ。
「ハハッ! なかなか面白いな」
「チッ!」「きが速い……」
ハノイが防いだところをラファエルが魔法で攻撃をするのだが、アマドルにはその攻撃が通用しない。
アマドルはラファエルの攻撃を躱したり、裝著している手甲で防いだりして全くダメージが與えられないでいた。
しかも、アマドルの態度を見る限りまだ余裕があるような様子だ。
「このままではジリ貧だ……」
「全くだ……」
ラファエルの呟きに、ハノイも同意する。
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余裕のあるアマドルとは違い、自分たちはギリギリの狀態だ。
アマドルの一撃はとんでもなく重い。
それを抑えるのに必死のハノイと、かなりの魔力を込めた魔法も通用しない。
このままでは敗戦濃厚だ。
「……ムッ?」
「「っ!?」」
ラファエルの魔法を躱したアマドルは、何かに反応するように視線を移す。
そのすぐ後、ラファエルたちも何かが迫っていることに気付いた。
「あっ! いた!」
「……オスカル? お前何でここに……?」
この場に現れたのは、カルロスの息子であるオスカルだった。
あまりにも意外な人の登場に、ラファエルはさっきまでの張が途切れそうになった。
しかし、そんな狀況ではないため、オスカルへこの場に來た理由を問いかけた。
「お前の國に行ったらこの國にいるって聞いたからだが……、ヤバい狀況みたいだな?」
「分かったなら、手を貸してくれ」
「あぁ、分かった」
転移の魔法を覚えたのでエナグア王國へと向かったが、目的のラファエルがいなかった。
魔王を名乗る者の出現により、ドワーフ王國へ援軍へ行っているということだった。
その存在は、祖父のケイにより危険だと聞いていた。
そんな相手にラファエルが勝てるか分からない。
そのため援軍に來たのだが、どうやら良くない空気を醸し出している。
空気を察したオスカルに、ラファエルは參戦することを頼む。
そのつもりで來たオスカルは、すぐに腰に差した刀と銃を抜いてアマドルへと構えを取った。
「おかしなのが來たな……」
見た目獣人だが、エルフのクオーターであるオスカル。
魔力の高い獣人を意外に思ったのか、アマドルはオスカルを興味深げに見つめた。
「援軍か……?」
「ハイメ様。エルフ王國のオスカルです」
急にきた獣人。
しかし、あまり見たことのない種族の者だ。
ラファエルの様子だと仲間のようだ。
そのため、ハイメはラファエルへと問いかける。
問われたラファエルは、簡潔にオスカルのことを紹介した。
「ケイ殿のとこの?」
「孫に當たります。ハイメ様のことは祖父より窺っております。微力ながら協力させていただきます」
「あぁ、頼む」
ラファエルのハイメという言葉で、オスカルはこの牛人がヴァーリャ王國國王のハイメだと理解する。
祖父のケイから聞かされていたからだ。
そのことを告げると、ハイメは笑みを浮かべて協力を了承してくれた。
「行くぞ!!」
「「はい!」」
3対1なんてはっきり言って卑怯と思えるが、相手が相手だ。
そんな事を気にせず、3人はアマドルへと向かって攻めかかった。
「待たせたな、セベリノ殿。カンタルボス元國王リカルドだ」
「エルフ王國レイナルドの子。ファビオです」
「同じくラウルです」
ラファエルとハイメに加え、オスカルがアマドルと戦い出したところで、カンタルボスからリカルドたちがドワーフ王國へと到著した。
許可なく転移で國してしまったが、今はそんな事を言っている狀況でないことは分かっている。
そのため、リカルドたちは手短にこの國の王であるセベリノへ挨拶をわした。
「おぉ! よく來てくれた!」
「早速魔王の下へと向かいます!」
「申し訳ない! 協力謝いたす!」
挨拶もそこそこに、リカルドたちは魔王と思わしき者のいる所へと向かった。
そのリカルドたちに、魔王に引き寄せられたらしき魔たちと戦うセベリノは謝の言葉をかけて見送った。
「フンッ!」
「グッ!!」
魔力の込められたアマドルの拳が迫り、オスカルは刀で防ぐ。
しかし、威力を抑えきることなどできず、オスカルはそのまま吹き飛ばされた。
「なんて威力してんだ……」
防に専念していたハイメだが、ジワジワと威力の高まるアマドルの攻撃を抑えきれずに後退させられる。
ハイメを無理やり後退させたアマドルは、その隙に攻撃擔當になっているオスカルとラファエルへと襲い掛かった。
強靭なをしているハイメですら抑えきれないのだから、オスカルが抑えきれないのも當然といったところだろう。
引き飛ばされて著地したオスカルは、痺れる手を振って覚を取り戻した。
「オラッ!」
「グゥッ!!」
オスカルに続いて、ラファエルにもアマドルの攻撃が飛んでくる。
ラファエルもその攻撃を刀で防ぐが、同じく吹き飛ばされるように飛んで行った。
「オスカル! お前手數が足りないぞ!」
「……すまん。転移で結構魔力を使っちまって……」
「お前……」
3対1になって有利になるかと思ったが、戦闘開始から全力で戦っている自分と同じ位の魔法攻撃しかしないオスカルに、ラファエルは文句を取ばす。
その指摘に対し、オスカルは申し訳なさそうに返答した。
その答えがどうしようもないものだったため、ラファエルは腹を立てるより呆れるしかなかった。
「ったく! 怪我をさせても回復してしまうってのに……」
3対1になって、オスカルとラファエルの攻撃は多アマドルに怪我を負わせることができるようになった。
しかし、その怪我もすぐに回復してしまう。
これでは怪我を負わせても何の意味もさない。
そのため、ラファエルは勝機が見いだせなかった。
「久々にいたからが重かったが、段々とほぐれてきた。お間らを相手にするのも飽きてきたし、そろそろ仕留めていくか……」
をほぐすようにかしながら、アマドルは小さく呟く。
そして、標的を決めたのか、これまで以上の力を込めて地面を蹴った。
「まずはお前からだ!」
「っっっ!!」
標的になったのはラファエル。
あっという間にラファエルとの距離を詰めたアマドルは、魔力の込めた拳で毆りかかった。
“ドンッ!!”
「グウゥ……、なんて威力してやがんだ!」
「っ!?」
アマドルの拳がラファエルへ當たる前に、その攻撃をけ止める者が現れた。
拳をけ止めたその者は、その威力に文句を言いながらけ止めた手とは反対の手でアマドルに毆りかかった。
その攻撃を躱し、アマドルは後退した。
「……何者だ?」
「カンタルボス王國のリカルドだ!」
またも現れた援軍に、アマドルは面倒臭そうに問いかける。
その問いに答え、ラファエルのことを救ったのはリカルドだった。
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