《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第349話

「こんなゆっくりしていて良いの?」

魔王が出現して2日が経っている。

そのうち3の魔王は、ケイとその子や孫によって封印することに功した。

まだ1が殘っているというのに、ケイやレイナルドたちは特に何もしていない。

それを見て、何となく不安に思ったオスカルは祖父であるケイに問いかけた。

「慌てても仕方がないだろ?」

オスカルの問いに対し、ケイは呑気に釣りをしながら返答する。

海岸に設置した椅子に座り、優雅な一時を過ごしているようにしか見えない。

それが尚更オスカルを不安にさせている要因と言って良いかもしれない。

魔王と呼ばれる危険な魔族を放置して、どうしてこんなじでいられるのか分からないのだ。

「殘りの魔王がいるのは人族大陸だ。だから急いでいく必要はない」

「でも……」

魔王の一人が言っていたが、魔王たちは四方に分かれて人間を支配するという考えだった。

東の日向、西のドワーフ、南のエルフで、殘りは北だ。

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そうなると、殘りの魔王は人族大陸のどこかで暴れているはずだ。

それが分かっているため、ケイはのんびりしているのだ。

「かなりの人間が魔王にやられてしまうだろうが、所詮は人族だ。気にする必要はない」

封印した3の魔王の実力を考えると、人族大陸にいるであろう魔王も相當な強さなはずだ。

人族の中にも強者はいるだろうが、あの再生能力を相手に勝てるような存在がいるとは思えない。

恐らく、相當な數の人族が殺されている可能が高い。

それが分かっていても、所詮被害に遭っているのは人族であって、それ以外の人種には関係ないことだ。

元々、日向以外の人族はエルフにとって絶滅を招いた存在であって、気が向かなければ救う価値もない存在でしかない。

エルフのけてきた仕打ちを考えるならばケイとしては當然のことだが、孫のオスカルはそういったことは聞いただけで目にしたわけではない。

だから、人族のことも心配しているのかもしれないが、ケイは気にするなと告げた。

「俺が気にしているのは、人族じゃなくて魔人大陸に移してこないかってことだよ」

「あぁ、そうか……」

人族大陸の北と言うと、西へ向かえば魔人大陸に渡ることもできる。

そうすると、魔人たちにも被害が及ぶかもしれない。

オスカルとしては、人族の心配などではなく、友人でライバルのラファエルのことが気になっていたようだ。

「大丈夫だ。ちゃんと魔王の封印にはいく」

「そうなの?」

その理由なら心配しているとに納得できる。

しかし、オスカルはし勘違いしている。

ケイは別に殘りの魔王を野放しにするつもりはない

釣りをしてのんびりしているだけのように見えるかもしれないが、こうしているのにはちゃんと理由があるのだ。

「魔王の封印には結構な魔力を使うし、危険も伴う。だから怪我と魔力が回復させて萬全の狀態にしてから向かうつもりだ」

「そうだったんだ……」

魔王という存在を知り、それが姿を現した時のために、ケイたちは々と準備を重ねてきた。

島のダンジョンを利用して戦闘能力を鍛えてきたし、もしもの時のために封印の魔法も作り出した。

しかし、実際に戦ってみると、かなり危険な存在だということが分かった。

もしも封印の魔法を作っていなかったら、人類は魔族の支配下に収まっていたかもしれない。

殘る1は、出會って突発的に戦うのではなく、萬全の狀態で、危険はなく封印するのがケイたちの狙いだ。

そのため、ケイはのんびりと過ごしているのだ。

たしかに、戦った想としては勝てる気がしなかったため、オスカルはその説明に納得した。

「行くのは俺とレイナルドとカルロス。それに、ファビオとラウルも連れて行こう」

「封印魔法が使える全員だね」

「そうだ」

基本的に自分と息子であるレイナルドとカルロスがいれば、魔王を封印することはできるとは思う。

しかし、安全に安全を重ねて、レイナルドの息子であるファビオとラウルも連れて行くことにした。

その5人の人選に、オスカルは納得の頷きをした。

5人共、封印魔法が使える者たちだからだ

「あぁ、あとお前は5人の運搬役だ」

「……えっ?」

し悔しいが、自分は魔王と戦うには実力が足りない。

アマドルと戦った時、リカルドやハノイがいなかったら、確実に大怪我を負っていただろう。

殘った魔王も、アマドルと大差ない強さをしているはずだ。

もうしばらく、あんな化けを相手に戦うのは遠慮したいため、オスカルは5人に任せておけば何とかなると安心した。

しかし、その安心も束の間、まさか自分も付いて行かないといけないことになり、オスカルは思わず変な聲を出したのだった。

◆◆◆◆◆

「あそこか……」

昨日話合っていたように、ケイたちはオスカルの転移によって人族大陸へと渡った。

そして、西から東へと捜索すると、魔王だと思われる存在を確認した。

「隨分、すごいことになっているな……」

「……あぁ、予想以上だな……」

遠くにいる魔王の周囲を見て、レイナルドは僅かに顔を顰めつつ呟く。

ケイもその呟きにそれに同意した。

というのも、魔王を相手に戦ったであろう人間が、大量に橫たわっていたからだ。

人族が多犠牲になっても良いと思ってはいたが、予想以上だった。

掲げている旗が様々な模様をしている所を見る限り、周辺の國が連合として戦っているのかもしれないが、魔王相手には通用していないのだろう。

「さっさと封印して帰ろう」

「あぁ……」

かなり離れた場所から眺めているというのに、ここにまでの匂いが屆いてくる。

それだけ大量のが流れているということだろう。

気分の良いものではないため、カルロスは作戦の開始を求めた。

同じ思いからか、ケイをはじめ他の者たちもそれに頷いた。

「5人ばらけて、封印魔法の魔法陣を作る。仕掛けが終わったらの場に戻って待機だ。オスカルはいつでも転移で逃げられるようにしていてくれ」

「「「「「了解!!」」」」」

安全に魔王を封印するために、ケイたちは5人で封印魔法の魔法陣を作り出すことを開始することにした。

魔王と會話をする気はないし、名前も知る気もない。

最後に封印魔法を完させるケイが、顔を合わせるだけでいい。

粛々と最後の魔王の封印をするために、ケイたちはこの場にオスカルだけを殘し散開したのだった。

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