《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第352話

「……で? 壁を作るってどんな風に?」

魔王サカリアスを封印して翌日。

ケイがカルロスと共に封印したサンティアゴは、日向の南にある無人島。

レイナルドが封印したソフロニオは、ケイたちがあらかじめ作っていた人工島。

リカルドやハノイの協力を得てファビオとラウルが封印したアマドルは、ドワーフ王國の西の地。

どこも人が封印に踏みるようなことはないだろう。

それに引きかえ、サカリアスを封印した場所は東西の國が爭い合う土地。

放って置いたら、結界に閉じ込められる人間が大量に出ることになる。

ったからといって、封じ込められた魔王に何かできることはないだろうが、念のためこの地も人が寄り付かないようにしておいた方が良いだろう。

面倒なのですぐにとりかかろうと、ケイたち6人はサカリアスを封印した場所の側へ、オスカルの魔法で転移してきた。

著いて早々、レイナルドはケイに尋ねる。

「壁と言ったが、そんな人工を作ったら不自然だ。だから他の方法を考えた」

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「他の方法?」

思い付きで壁と言ったが、こんな所に壁があったら不自然でしかない。

だから、ケイは他の方法がないか1日考えることにした。

そして、その別の方法というのが思いついた。

父のケイが何を言うのか不安なレイナルドは、恐る恐る質問した。

「地図を見ると、ここの北と南に山がある」

「……それが?」

レイナルドの質問をけ、ケイは地図を取り出し広げる。

そして、今6人がいる地點の北と南にある山を指さした。

北と南に山があるのは、目視できるため地図を広げなくても分かる。

しかし、その山が何の意味があるのか分からなかったため、カルロスは首を傾げる。

「この2つの山をくっ付けてしまおう」

「「「「「……えっ?」」」」」

あまりにも突拍子もないケイの言葉に、この場にいた他の5人は思わず聲が出てしまった。

「山脈にするって事?」

「そうだ」

山をくっ付けるということは山脈を作るということだ。

そのことを確認するようにレイナルドが問いかけると、ケイは軽い口調と共に頷いた。

「……いや、人工島なんかより面倒じゃないか!」

簡単に言うが、山を作るなんてかなりな作業になることは間違いない。

海に石を積み上げて土を盛った人工島の方が、まだ簡単だった気がする。

北と南にある山は、見えているとは言っても數十kmはある。

それをくっ付けるなんて、人工島以上に時間がかかること間違いない。

そのため、カルロスは強めの口調でツッコミをれた。

「大丈夫だって。このメンバーなら」

ここにいるのは、エルフ王國の中でも魔力が多い者たちだ。

ケイの息子であるレイナルドとカルロスはもちろん、孫であるファビオ、ラウル、オスカルの3人は、見た目は獣人に近いとは言ってもかなりの魔力量がある。

恐らく、魔力量だけならこの世界の人間の中でトップにいる者たちだ。

そのため、ケイは簡単だと考えたのかもしれない。

「このメンバーでもきついって」

今度はケイの言葉にレイナルドがツッコミをれる。

エルフの國近くの人工島は、ケイとレイナルドとカルロスの3人で造った。

それでもかなりの期間を必要とした。

その時よりも規模がでかいのに、人數が増えたからってそう簡単にできるものではない。

「人工島は魔王対策の訓練する前に作ったものだろ? 訓練した後の今ならできるって」

「そうだけど……」

思った以上の反発に、ケイは自分が簡単そうに言っている理由を話した。

人工島は、ケイが封印魔法を考え出してから造り上げたものだ。

その時は、エルフの島にあるダンジョンを使用しての戦闘訓練もたいしておこなっていなかった。

それに引きかえ、今は訓練を重ねて魔力量も増えている。

規模が大きくはなったが、その魔力による魔法でなんとかなるはずだ。

そう言われると、たしかに人工島を作った時よりも魔力量は増えているため、レイナルドは頷くしかなかった。

「じゃあ、開始するか……」

渋々といったじで了承した5人と共に、南北の山の最短距離の地點を見つけたケイは、早速山造りを始めることにした。

「まずは人工島の時と同じように土臺を造って、土を被せる。それを繰り返して高くしていく」

山なんて造るようなものではないため、造り方なんて分かる訳もない。

なので、ケイは人工島を造った時と同じように造っていくことにした。

「土砂崩れとか起こさないかな?」

人工島の場合、崩れないように波を堰き止めるための防波堤などを設置したが、ここでは雨による土砂崩れが心配になる。

土を重ねただけの場合、簡単にそれが起こる気がしたため、レイナルドはケイへと問いかけた。

「多崩れても通り抜けられなければ問題ないだろ」

「……それもそうか」

基本的に、東西の國がこの付近に近付かないようにすればいいだけの話だ。

この周辺土地を求めて爭っていたのだから、ここの土地をなくしてしまえばいい。

そのための山なので、土砂崩れが起きようとも特に問題はない。

見上げる程の山を見て、わざわざそれを越えてまで領土拡大を図るようなことはしないだろう。

そう考え、ケイたちは土魔法を使って、土を圧したブロックを土臺にしてガンガンと積み上げていった。

「3人はやっぱりすげえな……」

「だな……」

「そうだね……」

ケイ、レイナルド、カルロスの3人は、人工島製造の経験があるからか、ポンポンとブロックを作り上げていている。

同じようにファビオたち孫世代もブロックを作っているのだが、1個を作るまでの速度が違う。

この作業に必要なのは魔力量もそうだが、土を一気に圧する魔力制の方が需要だ。

その差が浮き彫りになっているのだ。

結構難しい魔法なのだが、簡単そうに作り続ける祖父や父たちを見て、自分たちの魔法がまだまだだと話し合っていた。

「そうだ! オスカルだけは魔力を溫存しておけよ」

「っ! 分かった」

今日1日で造り終えるようなものではない。

かと言って、ここで野営するつもりもないため、ケイはオスカルに魔力の溫存を指示する。

ここに來る時同様に、島へ帰るための転移係という訳だ。

それを聞いたオスカルは、自部だけ楽できると若干嬉しそうに返事をした。

その様子を見た従兄のファビオとラウルは、羨ましいという気持ちでしの間オスカルのことを見つめていた。

結局、ケイが言ったように、このメンバーは半年もしないうち山脈を作り上げたのだった。

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