《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第356話

「さて、行くか……」

【うん!】「ワウッ!」

魔王を封印した結界に、強力な魔が蔓延るダンジョンが出來上がっていた。

そのダンジョンを放置していると、魔王が復活してしまうことになる。

まともに戦って勝つのはケイでも手に余るから封印したというのに、復活でもされたら面倒だ。

そのため、ケイは結界のダンジョン攻略をおこなうことにした。

息子のレイナルドやカルロスには、もしものことを考えて自分たちのどちらかが付いて行くと言っていたが、2人とも國のことで々忙しい

生存確認にたまに來るだけで構わないと斷った。

かと言って、ダンジョンに挑むのは、ケイ1人でおこなうわけではない。

従魔のキュウとクウを連れて行くつもりだ。

裝備を確認し、魔王を封印した結界の中にることにしたケイが話しかけると、キュウとクウは嬉しそうに返事をした。

これから危険なダンジョンに挑むというのに、何だか2匹とも楽しそうだ。

【ご主人と一緒! 楽しみだね?】

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「ワウッ!」

キュウは、念話でクウに話しかける。

この何十年も間、ケイと共に長い間出かけるということが無かった。

しかも、前回ケイたちが調査に行った時も留守番だったので、し殘念だったのだろう。

島での平和な生活もいいが、ケイと共に新しい場所に向かうという好奇心が、2匹の気分を高揚させているのかもしれない。

「気を付けてくれよ」

「分かっているって」

國の仕事をするレイナルドを補佐する仕事が多いので忙しいはずなのに、カルロスはわざわざ見送りに來た。

結界へ向かおうとするケイが、何だか警戒が無いので心配なようだ。

そんな息子の心配をよそに、ケイは軽い口調で返答する。

「じゃあな!」

「あぁ……」

ケイはカルロスに短く聲をかけ、彼の見送りをけつつ、キュウとクウを連れて魔王サカリアスを封印した結界へとって行った。

【えいっ!】

「ガッ!!」

結界って早々、ケイたちは魔に遭遇する。

前回も遭遇したギガンテスだ。

普通の人間が遭遇したら確実に死をもたらすギガンテス。

しかも、その変異種となれば、なお強力な魔である。

その魔を、遭遇してすぐにキュウが風魔法で仕留めた。

風の刃により、上半と下半が分かれた狀態でギガンテスは崩れ落ちた。

「……明らかにまともなケセランパセランじゃねえな」

【えっ?】

ギガンテスの変異種を、魔の餌とも言われるほど弱小のケセランパセランが仕留める。

常識的に考えて、あり得ない景だ。

そのあり得ないことをやってのけたキュウを見て、ケイは今更ながらに異常じた。

ケイの小さな呟きに、キュウは「何?」と言いたげな視線を送る。

「いや、何でもない」

どう考えてもおかしいが、今さらそれを言ったところで意味がない。

を倒して嬉しそうにしているキュウを褒めるように、ケイは頭をでてあげた。

「ワウッ!」

「ギャッ!!」

ダンジョン攻略が目的だが、どれほどの期間ここに滯在するか分からない。

の強さからいって、2、3日で攻略できるとは思えない。

そのため、ケイたちは拠點となる場所を探していたのだが、またもギガンテスと遭遇することになった。

そのギガンテスを、今度はクウがあっさりと倒した。

強化した當たりによって、巨のギガンテスを何十メートルも吹き飛ばし、を大木に打ち付けて絶命させた。

大木に打ち付けた時、「グシャ!!」と大きな音を立てていたのが印象的だ。

「……よ~し、よし!」

「ハッハッハ……」

ギガンテスを倒したクウは、「倒しましたよ!」と言わんばかりに近寄ってくる。

そんなクウを、ケイは褒めるように頭をでる。

でられたクウは嬉しそうに目を細めた。

『こいつも異常だよな……?』

たまたまカンタルボス國王で見つけた柴犬そっくりの魔のクウ。

亡くなった妻の花が気にり、従魔として一緒に過ごすことになった。

花が亡くなったことで、契約が切れたクウはケイと同様に落ち込んでいた。

その寂しさを紛らわせることができればと、ケイはクウを自分の従魔にすることにした。

そんなクウは、柴犬と言っても狼らしく、まあまあの強さの魔と言ってもいい。

しかし、花やケイと共に行しているうちに、いつの間にか強くなっていった。

キュウが異常過ぎて忘れているが、クウもギガンテスを倒せるような種類の魔ではない。

そのことを、ケイは心でかに再確認していた。

「ここでいいだろ……」

結界を捜索していると、ケイたちは拠點とするのに丁度いい場所を見つけた。

樹々に覆われている森からし離れた開けた平原のような場所を拠點とし、し行ったり口からり、ダンジョン攻略を開始することにした。

「懐かしいな……」

【何が?】

拠點にできる場所を見つけ、ケイは小さく呟く。

それが聞こえたキュウは、呟きに反応する。

「アンヘル島に流れ著いた時も、同じように拠點探しをしたと思ってな」

【ふ~ん……】

流れ著いた時は名もなき島だったが、今ではエルフ王國の存在する島として一部には知られているアンヘル島。

そこに流れ著いた時、ケイは前世の記憶を得ることになった。

容姿と魔力以外にとりえのない生き人形と言われた種族。

それがその當時のエルフの現狀だった。

しかし、ケイ1人の漂著によって、その狀況が変化を起こしていった。

今では、王國として世界へしずつ広まっていっている狀況だ。

國と認められ、一応國王にまでなったが、今また何もないところから行を始めるという現狀に、ケイは昔のことを思いだしていたのだ。

や人間の存在に怯えながら拠點を探していた期。

それが今では、特にそんな事気にする必要がないというのだから長したものだと、我ながら関してしまった。

出會うし前のことだったため、キュウはあまりピンと來ていないようだった。

「あっ! 鹿だ!」

拠點となる場所を決めて早々、ケイは巨大な鹿の魔を発見する。

発見して次の瞬間には、銃から魔力弾が飛び出して鹿の息のを止める。

とんでもない速度の早撃ちに、巨大鹿も撃たれたことに気付かなかったのか、フラフラ歩いて倒れてかなくなった。

「晝食食べてからダンジョンへ向かうか?」

【賛!】「ワウッ!」

時間的にし速いが、鹿を手にれたケイは、晝食にすることにした。

その提案に、キュウとクウも嬉しそうに返事をする。

たいした容量ではないとは言っても、ケイは魔法の指を裝著している。

その中には々調味料がっているので、調理するのもそれほど苦になることはない。

新鮮な鹿を味付けして焼き、ケイたちは晝食を楽しんだ。

キュウやクウが異常だと言うが、実の所、一番異常なのは自分なのではないかということには気付かないケイだった。

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