《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第365話
【あっ! あった!】
「ワウッ! ワウッ!」
キュウとクウが嬉しそうに聲を上げる。
「おぉ、見つかったか……」
キュウたちを追いかけるように、ケイも表を緩めた。
「こんなに見つからなかったのは初めてだ」
【そうだね】
「ワウッ!」
彼らが発見したのは、次の解消へと向かう通路へのり口だ。
魔力を吸い取る階層にり、ケイたちはこれまでで一番苦労したと言ってもいい。
もしもしの間も魔力が使えないほどの吸引力だったら、ケイたちでは攻略できなかったかもしれない。
エルフにとって、魔力は生命線だと思い知らされたような場所だった。
しかし、それもようやく終わりが見えた。
「「「「「キシャーー!!」」」」」
「っ!! チッ!」
次の階層へのり口を見つけて喜ぶケイたちだったが、そこを狙っていたのか、この階層では何度も戦ったカンパネロが群れで襲い掛かってきた。
せっかく喜んでいたところだというのに、何だか半減させられた気分だ。
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この階層で戦い抜くために編み出した瞬間魔闘。
これを使いこなせるようになった今では、いくら能力の塊のようなカンパネロでも脅威ではない。
むしろ、手間が増えたことにイラ立ち、ケイは思わず舌打ちをした。
【任せて!】
「ワウッ!」
赤ゴリラの群れに対し、キュウとクウが反応する。
2匹はカンパネロに接近すると、至近距離による魔法攻撃を開始した。
【ハッ!!】
「ギャッ!!」
距離が離れると魔力が吸収されて魔法の威力が落ちてしまうが、至近距離なら僅かしか魔法は弱まらない。
それさえ分かっていれば、魔法攻撃も使用できる。
魔法が使えれば、魔法特化のキュウたちも戦える。
至近距離から放たないと通用しないという危険が存在するが、もう散々この階層で戦ってきているため、ちゃんと魔法の通用する領域は理解している。
そのため、キュウは魔法により、カンパネロたちをどんどん撃ち倒していった。、
「ワウッ!!」
「ゴアッ!!」
キュウと同じように、クウも魔法攻撃を使用してカンパネロを倒していく。
違う所は、クウの場合は直接攻撃も使用している所だ。
柴犬の見た目をしているクウは、魔法でカンパネロの腳を止めると、瞬間魔闘を利用して前足で毆り飛ばす。
毆られたカンパネロは、頭が吹き飛び、大量の出をして絶命した。
「あまり無理するなよ!」
【ハーイ!】
「ワウッ!」
2匹にばかりに任せておく訳にはいかない。
し張り切る傾向の強い2匹に注意しつつ、ケイもカンパネロ退治を開始した。
「フゥ~……、それにしても結構な數だな……」
蟲の魔だけに繁力が高いのか、この階層では何度も戦ってきた。
もう慣れたと言ってもいいくらいなので苦ではないのだが、キュウとクウだけでなくケイも手伝ってくれているというのに、倒しても倒してもカンパネロは現れてくる。
瞬間的に魔闘を使用するという方法でこの階層で戦えるようになったとは言っても、魔力を消費していることには変わらない。
そのため、長引けば魔力消費による疲労も増す。
湧くように現れるカンパネロに、ケイは思わずため息を吐いた。
「どういうことだ……」
現れるカンパネロを倒し続けていたケイたちだったが、明らかにおかしい。
次々現れることはこれまでもあったが、今回の場合出現するタイミングが絶妙なのだ。
まるで、ケイたちを休ませないようにしている意図があるようにじる。
【ハァ、ハァ……】
「ハッハッハッ……」
「……まずいな」
戦い続けているため、キュウとクウは魔力を消費して疲労がたまってきたのか、息を切らし始めている。
これ以上この狀態が続くようなら、攻撃をけてしまう可能もある。
2匹が魔力無しの狀態でカンパネロの攻撃をければ、1撃で致命傷。
最悪即死しかねない。
「…………もしかして」
この狀況に、ケイはある考えが浮かんだ。
そのため、ケイは魔力を消費するのを覚悟で、探知魔法の範囲を広げた。
「っ!! やっぱり!」
思った通りだった。
このカンパネロたちは、何者かの指示をけて行していた。
「キュウ! クウ! もうし頑張れ。俺は大元を絶ちに行く!」
【うん!!】「ワウッ!!」
疲労しているキュウたちを置いて行くのは不安だが、このまま手をこまねいていてもジリ貧になるだけだ。
それよりも元を絶つため、ケイは先程探知した場所へと移を開始した。
「キシャーー!!」
「っと!」
先程発見した場所に著くと、巨大な鎌がケイに襲い掛かってきた。
その攻撃を、ケイはを翻して回避する。
そして、その鎌を振るった魔の姿を目にした。
「こいつは……変異種の更に変異種か!?」
これまでケイがこの階層で戦ってきたカンパネロも変異種だったが、この個は更に強力な力を有しているように見える。
特に違うのは、仲間のカンパネロたちに指示を出している所だ。
自分に向かってきたケイに対し、もう周囲を仲間に包囲させている。
変異種が更に変異し、知能が上がっているのかもしれない。
「もしかして、ゴールに來るのを待っていたのか?」
次の階層に向かう通路を見つけた所で、自分たちに襲い掛かって來た。
ゴールに先回りして、準備萬端で待ちけていたのかもしれない。
知能が上がっていると考えれば、このようなことも可能だろう。
「キシャーー!!」
「知能が上がっているようだが、俺を數で囲めば何とかなると思うなよ!」
ボスの指示に従い、ケイを囲むカンパネロたちが一斉に襲い掛かる。
それに対し、ケイは指示を出しているカンパネロに向かって啖呵を切った。
「ギッ、ギギ……」
「……だから言っただろ? こんなことで俺には勝てないって……」
カンパネロたちに指示を出していた変異種が、中傷だらけの正に蟲の息の狀態で小さく聲をらす。
言葉まで理解しているのかは分からないが ケイはその変異種を見下ろしつつ戦う前に言ったことをもう一度呟いた。
「ギッ……」
「ハッ!!」
瀕死の狀態でもケイに攻撃をしようと考えているのか、鎌をかそうとする。
しかし、そんな事をさせるつもりもなく、ケイは変異種に止めを刺した。
【ハァ、ハァ……】「ハッハッハッ……」
「ご苦労さん」
大元を倒したケイはすぐにキュウたちのもとに戻る。
ケイの方に集まったことで減っていたらしく、キュウたちは怪我なくカンパネロたちを倒し終えたようだ。
しかし、もう疲労困憊という狀況らしく、2匹ともかなり息を切らしていた。
そんな2匹に労いの言葉をかけて抱き上げると、ケイは次の階層に向かう通路へと向かっていった。
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