《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第367話
「玄武鎚!」
“ドスンッ!”
一言呟くと共に、巨大な鎚が出現する。
「っ!!」
出現した鎚は、1.5mほどの長さをしており、金屬部分と棘が生えたような形の鎚をしている。
その武を玄武は軽々と持っているが、地面にれた時の音がただ事ではないことから、相當な重量をしていることが窺える。
もしも直撃をくらえば一撃で戦闘不能もあり得えると悟り、ケイはピクリと眉をかした。
「ハッ!!」
「っ!!」
“ドガンッ!!”
鎚を構えた玄武は、すぐさまケイへと襲い掛かる。
とても重量のある武のように見えないような速度で、振り下ろされた鎚がケイに迫りくる。
それを、ケイはバックステップをする事で躱した。
躱された鎚はそのまま地面を打ち付け、大きな音を立てて小さなクレーターを作り出した。
「すごい威力だ」
一撃の重さを見て、ケイは嘆の言葉を呟く。
『だが、重量ある武を使っているにしては速いが、俺には躱せる範囲だ』
威力があっても當たらなければ意味がない。
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そういった意味では、あの鎚はケイにとって脅威になり得ない。
速いと言っても、充分躱せる範囲の速度だからだ。
「ハーッ!!」
「シッ!!」
後退したケイを追いかけるように、玄武は追撃を加える。
再度振り下ろされた鎚を橫に跳んで躱し、ケイは銃の引き金を引いて反撃に出る。
“カンッ!!”
ケイの放った弾丸が、玄武に迫る。
しかし、その弾丸が玄武に傷をつけることはなかった。
裝著している鎧によって、弾かれてしまったからだ。
「堅いな……」
人化する前の時と同じように、防力が高いようだ。
玄武が裝著している鎧は、ケイの弾丸を弾いても傷1つ付いていない狀態だ。
「でも……」
「くっ!!」
鎧に覆われているため、ダメージを與えられそうなところはない。
裝著していない顔・首・手・足の部分ぐらいだろうか。
玄武を中心として円を描くようにきながら、ケイはそれらの部分を狙って、2丁拳銃による攻撃を開始する。
連して攻撃してくるケイの攻撃に、玄武は武と鎧を使って必死に防した。
「いつまで耐えられるかな?」
ケイの攻撃は、しでも反応が遅れれば確実に怪我を負う。
ケイに攻撃をさせないために、自ら攻撃に出ようにも武による攻撃は通用しない。
そのため、玄武は防に徹し隙を窺うことを選択したようだ。
そんな玄武に対し、ケイは持久戦を覚悟した。
「くっ!! このままでは……」
「ムッ!?」
ケイの攻撃が開始されてし経つと、玄武の反応が遅れ始める。
防のための集中力が途切れ始めたのかもしれない。
それにより、ケイの攻撃が掠るようになり、玄武の鎧を付けていない部分に傷がつき始めた。
このままでは、銃弾がクリーンヒットしてしまうかもしれない。
そう考えた玄武は、思いついた策を行に移すことにした。
「ヌンッ!!」
「……土魔法か?」
玄武は右足で地面を打ちつける。
それによって地面が隆起し、石の壁が玄武を覆い隠した。
土魔法による防のようだ。
「しかし、その程度の壁なんて意味がない!」
休憩をさせるつもりはない。
ケイは足を止めて、玄武の作り出した石壁に銃口を向けた。
「ハッ!!」
ケイは、ここまでの速度を求めた攻撃ではなく、威力を高めた攻撃を放つ。
石壁の中の玄武ごと消し去るのが狙いだ。
“ボンッ!!”
ケイの2丁拳銃から放たれた強力な魔力弾が石壁に直撃し、大発を起こして土煙が舞い上がった。
先程まで會った石壁は、強力な一撃により跡形もなく吹き飛んだ。
「……消えた?」
いくら強力な一撃だと言っても、玄武の防力を考えるならば死んでいない可能が高い。
そのため、舞い上がった土煙が治まってくると、ケイは玄武の姿を探した。
しかし、その姿が跡形もなくなっている。
そのことにおかしいと思ったケイは、周囲に意識を向けた。
「っ!!」
ある直が浮かぶ。
その直に従い、ケイはその場から前方に飛び込んだ。
その行が正解だった。
いなくなった玄武は、いつの間にかケイの背後へと回っていたのだ。
音もなく近付いた玄武は、そのまま鎚による攻撃をケイに放ってきていたのだ。
飛び込んだことにより、ケイはその攻撃を躱すことになったのだ。
「くそっ! 反応が速いな……」
奇襲攻撃に功したと思ったのだが、上手く躱されてしまった。
そのため、玄武はいら立ちの言葉を呟いた。
「影移か……?」
「ご名答」
どうやってあの石壁の中から移したのか。
それを考えると、ケイはその方法に思い至った。
闇魔法のなかにある影移。
それを使えば可能だ。
玄武が作りだした石壁のなかは、暗闇に覆われていたはずだ。
その闇を利用して、から蔭へ移したのだろう。
ケイがその推察を尋ねると、玄武は隠し通せると思えず頷いた。
「この……」
「おっと!」
闇魔法を使ったにしろ、姿を現したのならまたその場に釘付けにするだけだ。
そう思って、ケイは拳銃をまた玄武へと向ける。
しかし、そうはさせまいと、玄武はまたも土壁を作り出した。
先程と違うのは、ドーム狀ではなく、その名の通り直立した石壁を作り出したのだ。
「またか?」
石壁の影を使い、またも別の場所へと移するつもりなのかとケイは考える。
影移中は、どういう訳か探知から外れる。
恐らく、移中は異次元空間を移しているからなのだろう。
そのため、突如別の場所に移されても気付きにくいが、周囲に意識を向けていれば対応できる。
ケイは探知に頼らず、周囲に意識を向けた。
「ハッ!!」
「っっっ!!」
石壁を使っての影移をおこなうとケイは思ったようだが、玄武の狙いはそれではない。
鎚をフルスイングして、自分が作り出した石壁を破壊することが狙いだ。
玄武のその行により、石壁が破壊される。
そして、破壊された石壁の破片が、ケイに向かって飛んで行った。
「くっ!」
大量の破片が、マシンガンのように襲い掛かる。
その攻撃を、ケイは風魔法で吹き飛ばした。
「なっ!?」
「オラオラッ!!」
石の破片を吹き飛ばし、玄武の姿を確認するケイ。
しかし、その姿を見て驚く。
ケイが破片を吹き飛ばしている間に、玄武はまたも土壁を作り出していた。
そして、鎚を構えた所を見ると、またも石壁破壊による破片攻撃をおこなうつもりらしい。
「っ!?」
「ハッ!!」
再度石壁を破壊して攻撃をしてくる玄武。
しかし、その破片がケイに屆くことはない。
何故ならケイの姿が、その場から消えていたからだ。
それに気付いた玄武は、その場から移する。
すると、先程まで玄武退いた場所に、魔力弾が通っていった。
「あぶねえ、あぶねえ……」
「目には目をってな」
ケイがやったのは、玄武と同様に影移をして別の場所に移し、魔法攻撃を放ったとというだけだ。
冷や汗を掻いた玄武に対し、ケイはしたり顔で呟いたのだった。
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