《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第368話

「ハッ!!」

「っ!?」

玄武は鎚を地面に打ち付ける。

何が目的なのか分からず、ケイは首を傾げた。

「フンッ!!」

どうやら玄武の狙いは弾を求めたらしい。

地面を打ちつけてできた瓦礫の石に魔力を流し、自分の周囲に浮かばせた。

そして、その石をケイに向かって飛ばして來た。

「ハッ!!」

數が多いが、躱せない速度ではない。

飛んできた石弾を、ケイはステップを踏んで回避する。

「っ!!」

ケイが石弾攻撃を躱し終えて玄武のいた方へ視線をやると、その姿はいつの間にか消えていた。

“ズッ!!”

「右か!?」

どこに行ったのか探そうとしたところで、ケイはその場から跳び退く。

玄武が右から迫っていたのをじ取ったからだ。

さっきまでケイがいた場所を、鎚が通り過ぎる。

躱しはしたが、その風圧だけで吹き飛ばされそうだ。

「このっ!!」

「フンッ!!」

攻撃を躱したケイは、後退しながら銃を向けて魔力弾を発する。

しかし、不十分な制からの速のため、魔力弾の威力は低く、玄武は鎧で苦も無く弾いた。

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「そういう戦い方か……」

ここまでのやり取りで、ケイは玄武の得意な戦法を理解した、

玄武の戦法は、土魔法と闇魔法を使った戦闘スタイルのようだ。

あの鎚による攻撃力を見ると、どうしたって接近戦は避けたくなる。

ならば距離をとっての攻撃となると、石弾の攻撃をけ、その石弾に集中していると影移により距離を詰められて鎚攻撃をけるというパターンのようだ。

「攻撃は何とかなるけど……」

戦闘スタイルを理解したはいいが、問題點があった。

玄武の攻撃は、ケイなら躱すか防ぐことができる。

しかし、問題は玄武の防力だ。

生半可な攻撃は鎧を使って防がれてしまう。

鎧を付けていない顔や首や手足の関節部分に攻撃を與えるには、ある程度の接近と集中力がいる。

あまり近づきすぎるとあの鎚攻撃が怖い。

かと言って距離をとって威力のある攻撃をしようにも、影移を使って魔力を溜めている時間を與えてくれないだろう。

“チラッ!”

お互いの攻撃が通用しない持久戦。

それならそれで別に構わないと、ケイは一瞬キュウとクウのいる方に視線を向けた。

「あの従魔たちに核を破壊させようとしても無駄だぞ」

「っ!!」

玄武の言葉に、ケイは僅かに眉をかす。

「なんだ、気付いていたのか?」

「當たり前だ。俺を核から離そうといていたからな」

ケイの目的は玄武を倒すことではない。

このダンジョンの核を破壊して、封印されている魔王に供給される魔力を絶つのが目的だ。

そのため、守護者である玄武を核から離し、その隙にキュウやクウに破壊させてしまえばいい。

そうすれば、たいした苦も無くダンジョンの攻略が完了するからだ。

しかし、どうやら玄武には狙いが読まれていたらしく、ケイはつまらなそうに聲をらした。

「今頃お前の従魔は、我の配下に襲われているだろう」

「あっそ……」

狙いがバレているならもう気にしない。

ケイは堂々とキュウたちの方へ視線を向けた。

すると、たしかに玄武の言うように、キュウとクウが亀や蛇の魔を戦っているのが見えた。

「うちの従魔が押しているけど?」

もしものことを考えると心配になり、ケイはキュウとクウの様子を窺う。

しかし、よく見てみると、キュウとクウが魔の方を押していたため安堵する。

あの狀況なら、魔を倒して核の破壊に移れるかもしれない。

「何匹倒しても無駄だ。我を倒さない限り魔は何度も出現し続ける」

「なるほど……」

玄武の焦りをうために問いかけたのだが、全く意味をさなかった。

ケイは答えに納得し、心の中で「無限湧きかよ!」とツッコミをれていた。

前世のゲームでも、プレイヤーに楽をさせないための処置がされているものだ。

それと同様に、きちんと対応策を用意されていたようだ。

「なら、お前を倒すしかないか……」

キュウとクウに核の破壊を期待するのが難しいことは分かった。

なので、ケイは玄武を倒すことに考えを変えることにした。

「フンッ! 我の防を突破できるというのか?」

「やってやるさ!」

たしかに、玄武の防力は強力だ。

怪我を負わせるにも、顔・首、手足の関節部分に僅かしか與えられていない。

しかし、何度傷つけても回復する魔王を相手にする訳ではない。

あの強固な鎧を突破すれば何とかなるはずだ。

玄武の挑発に対し、ケイは笑みを浮かべて返答した。

「ならばやってみろ!!」

「っと!!」

話している最中、玄武が指を僅かにかす。

それにより、ケイの背後から石弾が飛んできた。

躱された石弾を、引き戻すようにして攻撃してきたのだろう。

不意の一撃に驚きつつも、ケイはそれを首を倒して回避した。

「っ!!」

「ハッ!!」

背後からの攻撃に意識を向け、それと同時にケイへと襲い掛かった。

どうやら、ケイと話している間にこの機會を狙っていたようだ。

「ハッ! 自分から寄って來てくれるなんてありがたい」

「うっ!!」

玄武の鎚が迫るなか、ケイは待ってましたとばかりに笑みを浮かべる。

すると、鎚がケイに當たる直前に地面が隆起した。

隆起した土の手に毆られ、玄武は空中へと打ち上げられた。

「土魔法はお前の専売特許じゃないんだよ!」

「だから何だ? ダメージなどけていない」

玄武が話している間に企んでいたように、ケイも同じく企んでいた。

気付かれないように足の裏から地面に魔力を流し、いつでも魔法が発できる狀態にしていた。

玄武の企みを利用するためだ。

企みは見事に上手くいき、ケイは玄武に一泡吹かせてやった。

攻撃が當たらず、上空高く打ち上げられたことには驚いたが、所詮それだけのこと。

してやったりの顔をしているケイに、玄武はだからどうしたといったじだ。

「お前は空中じゃたいしたことできないだろ? 俺はそれだけの時間がしかったんだよ!」

空中にいる狀況では影移はできない。

魔力を足場にして戻ってくるにしても、落ちてくるまでの間ケイは魔力を溜め込む時間が稼げる。

「ハァーッ!!」

玄武を倒すためには、もっと強力な攻撃力が必要。

そう考えたケイは、に纏う魔力を一気に増やした。

「……そんなのでけるのか?」

魔力を足場にして蹴り、勢いよく地上に戻って來た玄武。

その間に魔力を高めたケイを見て、疑問の言葉を投げかける。

たしかに大量の魔力による魔闘で、戦闘力が上がっているかもしれないが、とてもコントロールできる量の魔力ではないからだ。

けるさ。俺はエルフだからな……」

「っっっ!!」

玄武の質問に答えを返すと、ケイはその姿を消したのだった。

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