《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第373話

「フゥ~……」

戦闘が終わり、ケイはホルスターに銃を収めて一息つく。

「お…おのれ……」

目の前には、ボロボロになった人型の生が膝をつき恨めしそうにケイのことを睨んでいる。

人間ではなく人型と示したのは、尾を有し、頭から角が生えているからだ。

その生には、が數か所開いている。

その傷の深さから、即死でないのが不思議なくらいだ。

「……ぐふっ…………」

人型の生は、を吐き出して前のめりに倒れる。

どうやら事切れたらしく、そのままかなくなった。

「玄武に白虎に朱雀、そして青龍か……」

倒れた人型の生を眺めつつ、ケイは呟く。

東西南北に封印した4の魔王。

その封印の結界にできたダンジョンは、放置しておけば魔王が復活してしまう可能がある。

そうならないために、ケイは4つのダンジョンの攻略を開始した。

今倒した人型の生は、魔王サンティアゴの封印の地にできた結界のダンジョンの最終階層の守護者だ。

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人型の姿に変する前は青い龍の姿をしており、最初に攻略しダンジョンの玄武から続き、まるで四神のようだとケイは考えていた。

「地球と何か関係があるのか?」

前世では伝説の聖獣として知られていて、漫畫やゲームなどで登場してくるイメージだった。

この世界には、日向という昔の日本と同じような國が存在しているが、四神の伝説なんて聞いたことが無い。

転生したケイからすると、地球に関係する何かがないと、このように一致することは無いのではないかと考えてしまう。

「神レベルの話か? そうなるとどうしようもないな」

この世界に來て、自分はイレギュラーな存在だと認識している。

地球で溺れ死んで、記憶を持ったまま転生したなんてどう考えても普通じゃない。

かと言って、ラノベでよくあるように神様的存在から何かを言われたわけでもないので、この世界に地球の知識がっていても、確認するはない。

ドワーフ王國の前國王で、ケイと同じ転生者だったマカリオの言うように、自分の思った通りに生きていくのが正解なのだろうか。

「まぁ、いいか。ひとまず帰るか……」

【帰ろう!】「ワウッ!」

これでひとまず、封印されている魔王の力を削ぐことができた。

魔王が弱まったことにより、結界も消えていることだろう。

今のうちにこの場から去ろうと、ケイは転移魔法を使用してダンジョンから出を計ることにした。

呟いた言葉から理解したのか、従魔のキュウとクウもケイの側へと近寄る。

そして、ケイが出した転移の扉を抜け、ダンジョンの最下層から地上へと戻っていった。

◆◆◆◆◆

「オッス!」

「おぉ! おかえり!」

地上に転移したその日は、ひとまず疲労を回復しようとのんびり過ごす。

そして、翌日になるとケイはエルフ王國へと転移していった。

エルフ王國にある自分の家へ帰ると、たまたま息子のレイナルドと顔を合わせたため、ケイは挨拶をわした。

父の久しぶりの帰還に、レイナルドも驚いているような反応だ。

【ただいま!】「ワウッ!」

「キュウとクウもおかえり」

ケイと挨拶をわしたの後に、キュウとクウもレイナルドと帰還の挨拶をわした。

「おぉ! ケイ様が戻ってこられた!」

「なに!? じゃあ今夜は祭りだ!」

レイナルドと話していると、他の住民もケイの帰還に気付き始めた。

そして、ケイが何かを言う前に、みんな急に祭りの準備を始めてしまった。

「おいおい! 別にそんなことしなくても……」

「良いんだよ。みんな祭りを開く理由を求めていたんだから」

夏は夏祭り、秋は収穫祭、冬は新年を祝う祭り。

その中で、エルフの國には春の祭りがない狀態だった。

この國の人間はみんな真面目だ。

國を作ったケイと妻の花。

それをより良くしようと働く、2人の息子のレイナルドとカルロス。

彼らのおで自分たちが生きていけていると、謝の気持ちが強いからかもしれない。

ケイたちからすると、みんなができる限り幸せになってしいという思いから行した結果だと思っているため、そんな謝されるのは気恥ずかしい。

中には崇拝に近い対応をする者もいたりするため、そこまで行くと申し訳ないという気持ちにすらなってくる。

出來れば、フレンドリーな対応でいてしいところだが、一応王という立場なのでそうもいかないのだろう。

「……だったら、花見なんて良いかもな……」

「花見?」

春の祭りと聞いて、ケイの頭の中に浮かんだのが花見だった。

そのことを呟くと、側に來ていたカルロスが反応する。

言葉の響きに、面白い何かをじ取ったのかもしれない。

「日向の春の風詩で、桜の花をでるんだ」

「確かに桜はキレイだからね。良いね花見」

桜の木は、日向に行った時手にれてきた。

花の墓の側に植えるためという思いからだ。

ソメイヨシノかは分からないが、接ぎ木などをしてしずつ増やしている。

短い期間ながら、春になると墓地近くの広場は薄ピンクの花で付き、幻想的にすら見える狀況になる。

そのことを思いだしたのか、レイナルドもそうしたくなる日向人の気持ちも納得できる。

それも、母の花のが流れているからだろうか。

「俺もあの花好きだぜ。じゃあ、その花見ってやつやろうぜ!」

レイナルド同様、カルロスも花見に賛のようだ。

すぐにでも始めたいという態度で、計畫を立て始めた。

「「「「「カンパーイ!!」」」」」

墓地近くの広場に、多くの國民が集まった。

レイナルドとカルロスの行は素早く、花見祭りはその日のに広まったようだ。

ケイの挨拶の終了を合図とするように、集まった者たちは盃を掲げて聲を上げている。

飲み過ぎなければいいのだが、花より団子(酒)の者たちだろう。

「今後のことを考えると、桜をもっと増やす必要があるかもな……」

まだ國民の數はないからこの場にほぼ全員集まっているが、人口が増えたらこの場では狹いかもしれない。

祭りと言っている以上、出來る限り多くの國民に楽しんでもらいたい。

今後のことを考え、ケイは桜を増やす必要があると思い始めた。

「別の場所にも植えるって事も良いかもね」

「じゃあ、その方向で進めるか……」

ケイの呟きが聞こえていたらしく、レイナルドが案を出し、それをけたカルロスが同意した。

「……ちょっと離れる」

「んっ? ……あぁ、分かった」

自分と同じことを息子2人も考えだし、行へと移す。

そのやり取りを見たケイは、何かを思った科のように笑みを浮かべ、その場から離れていった。

どこへ行くのか聞こうとしたレイナルドだが、向かった方向から察したらしく、短い返答でケイを見送った。

「……ただいま。花……」

ケイが祭りから離れて向かったのは、花やこの國で亡くなった者たちが眠る墓地だった。

その中で、一番桜が綺麗に咲いている側の花が埋葬されている墓の前へと來たケイは、帰還の挨拶をした。

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