昨日俺は、ランク戦でＡランク相手に勝ちを捥ぎ取り、代償に右腕を失った。

今は慣れない左の片手で、朝ごはんの調理をしている。

料理が完した。すると、昨日溺れているのを助けたが起きた。

「えぅ……　どこ、ここ……」

彼は、ベットの上で子リスのように周りを見渡している。

すると何かを思い出したのか。何かに恐怖をするように、を丸め小刻みに震えだした。

その姿は、待をされているのように、全てを拒絶するように震える。

音で気づいた俺は、できた料理を置き、彼の寢ているベットへと急いで向かった。

「おはよう。僕は君に危害は加えない。もう一度言う、僕は君に危害は加えない」

震える彼の目の前で、腰を下ろした。

目線を合わせ、彼にゆっくり優しく言う。これで俺は安全と分かっただろうか。

彼の手首からは拷問をけたのか、無數に切り傷がある。

時間が経っている傷、最近できたような傷。

痛々しいミミズ腫れの痕に、ただ悲しくなった。

近くから彼の顔を見る。目はキリッとしていて、他のパーツはかなり整っていた。

モデル雑誌のたちよりも、あまりに出來上がっている顔立ちは凜としていて、おとぎ話に出てきそうなほど綺麗であった。

しかし彼の顔は、かなり疲弊している。今すぐに、彼には安全と休息が必要だ。

「わ、わたし拐されて、飛行機から……　おち、落ちて……　怖かった」

ぼそぼそと言ってはいるが、彼は必死に言葉を発している。

これだけでもかなり辛かったんだとじ取れた。

「頑張った、君は頑張ったんだ。ここは安全だ、君はもう頑張らなくていい」

そう言い、彼の右手を優しく握る。

その手はし冷たく、守ってあげたくなるような小さな手である。

彼の目から雫が出る。ゆっくりと頬を伝い、ベットに落ちた。

彼は、ダムが壊れたように一気に泣き崩れた。

嗚咽が混じりながら、次々と出ては長袖で滴をふく。

左手で握るのをやめ、背中を優しくる。

そして抱きしめた。強く、強く、強く。

とても心の傷は深そうだ。彼が泣き止むまでずっと抱きしめてあげた。

この高そうな服からして富裕層のお嬢さんなのかもしれない。

基本、富裕層の家は、警備がかなり厳しいはずだ。間違えても、拐なんて笊な警備ではないはず。とすれば、犯人は相當のやり手か、能力者が拐したと考えられる。

ここは下手にくよりも、ここでかくまう方がいいのかもしれない。

実は昨日、保健室に抱きかかえて行ったんだ。

だけど、ここ（ＥＳＰ學園）の登録が無い人は見れないと言われ、仕方なく俺の部屋で寢かしている。

と考えつつも、彼にそばにいてしいと思った。

それは、俺がどうしようもなく、彼に一目ぼれをしてしまったからだ。

「朝ごはん作ったんだ、食べようか」

彼の機嫌を聞くようにった。恐らくだが昨日から彼は何も食べていないはずだ。

「今は食べたくない……。　……ごめんなさい」

彼は、うつろな目をして呟くようにそう言った。

今の彼に、俺はどうすることもできない。しかし今の彼には食べが必要だ。

「今日の朝は豆腐だからさ。一口だけでいいんだ。食べよ」

ここは彼のことを思って、無理にでも食べさせた方がいいのかもしれない。

今日は水曜日の朝。毎週、決まって豆腐を食べている習慣がある。

「わ、わかった豆腐食べる」

どもりながら彼は承諾し両手を前にしている。

「起き上がれないの、ひっぱって」

「いいよいいよ、持ってくるから、ここで寢てて」

無理にかなくてもいいのにな、とか思ってしまう。反的に右腕を出してしまった。

「み、右腕……　も、もしかして私を助けた時に？」

恐るおそる聞く彼、顔が青ざめていた。

それは俺の右腕は先が無く。

の滲んだ真っ赤な包帯が、グルグルと巻かれているからだ。

彼を助けたことと関連づけて、考えてしまったのかもしれない。

「あ、これか……　これは昨日の決闘でさ。まあ鎮痛剤が効いてるから、今は大丈夫だよ」

しぶしぶ頭を掻きながら彼に言う。

彼には包帯で巻かれているため、傷の様子は見えてはいないが、切られた腕先は皮で塞がっていて、完全というほどでもないが昨日の治療で治っていたのだ。

「病院いかないと……　どう見ても大丈夫じゃないよ」

こちらを心配するように彼は言う。

そういえば昨日、あのまま病院を抜け出してきたんだっけ……

さすがに戻らないとな。ついでに無くなった右腕についても聞いておかないといけない。

「心配してくれてありがとう、本當に俺は大丈夫だから」

いつもユウにする癖で頭をポンポンとでてあげた。

「いや……　その、うん……」

彼は下を向くと、目を合わせずにいた。

「そういえば君の名前聞いてなかったね。俺の名前は佐部佑」

「私は來舞……　ここはどこか、教えてほしい」

ボソボソとをめるように喋る彼。くるりと俺の部屋を一すると、彼は聞いてきた。

「ここは、俺の家だよ。そこそこきれいでしょ？」

自慢をするように手を広げながら俺の部屋を紹介をする。

俺の住処はコンテナでできた６畳ほどの大きさである。

ドアを開けて、すぐ左には臺所があり、正面には１６インチの１０年前のブラウン管テレビに、そこそこの大きさの本棚、部屋の端っこには小さいテーブルが有り、そこにノートパソコンが置かれてある。

そしてその正面に、今彼が寢ているベットがある。

パソコンは、俺のランク（特別枠）では買えないような代で、月末に集められるジャンク品を、俺が修理をして使えるようにしたものだ。

ネット回線は隣のＢランクアパートのコードを引っ張ってきて使っている。

なので通信速度が遅くなるが、これはしかたあるまい。

「狹いけど……　落ち著く」

彼は膝を抱きかかえるように寢ると、布団をくるっとに包む、彼は布団に顔を埋めていた。

あまりの可さに思わず俺は小をるようにでる。

にょきっと顔を出し俺のでる作を見ていた彼。こうされるのは満更でもないようだ。「ご飯食べようか」と彼の頭を優しくりながら聞く。

彼は小さく頷いた。俺の料理は彼の口に合うだろうか。

一人晝食を食べた俺は、彼とテレビを見ていた。彼は一心不にご飯を食べている。

お晝のバラエティー番組が終わった直後、急ニュースが寫り込んだ。

「昨晩未明、來財閥の來舞さん１６歳が何者かに拉致されました。犯人は不明とのことです。來さんの自宅からの中継が繋がっています。太田さん太田さん」

ニュースで寫り込んだ、「えっ！」とスプーンを落としながら、が空いた豪邸の映像にに彼は目を丸くしていた。

「私の家じゃん！！　ついに私にもテレビデビューきた」

急に目が輝き出しガッツポーズをしだした。

「なんだよそれ！！　初めてがこんなので嬉しいのかよ！？　お嬢さん拐されたんだよ！！」

なんともまあツッコミをれたわけだが、彼はニヤニヤしている。

「えへへ、でもほら私かわいい」

と見ると彼の學ラン姿の寫真がニュースで使われていた。

寫真の端っこには１７歳と書かれており、俺と同い年ということにしばかり驚いた。

「高校生ってやつなの？　その……舞さんは」

いきなり名前で呼ぶなんてどうも馴れ馴れしいんじゃないだろうかと思いながら、彼の名前をたどたどしく読んだ。

「そうＪＫだよ。舞って読んでいい」

名前で呼ぶ許可が降りて、嬉しいなとかそんなことを思ってしまった。

お返しになんておかしいとは思うけど、俺のことも名前で呼ばせても。

「俺も佑って読んでくれ」

キメ顔ともいかずとも、しばかり彼の反応が気になりながら顔を見る。

「わかった佑」

ぎこちない彼の笑顔が見えた。それも可く見える。

これが、このが、をしたってことなんだろうか。

「俺ってさ、舞としばらく一緒にいたいと思ってるんだけど、舞は家に帰りたい？」

勢いで拉致犯罪者のような変なことを言ってしまった。一歩間違えれば変態である。

「えっ……　うん、実は私もしばらくここにいたいって思ってた」

彼は口を隠すように驚くと、嬉しいようなが篭った聲音で言う。

「じゃあこのニュースの真犯人は俺ってことで」

「いいねそれ」

互いを見合わせ、雙方から笑顔が出てきた。

彼も俺に慣れてきたんだろうかなとか、彼の反応を見てそんなことを考えた。

『急特殊召集、佐部佑、職員室へ來い。繰り返す。急特殊召集、佐部佑、職員室へ來い』

全土を渡る急の地區放送に俺の名前が呼ばれた。

何か俺がやらかしたのかと焦るが湧き出てきたが。

もしかすると……　舞のことなんだろうか。

「佑放送で呼ばれたよね」

「そうそう、お怒りの召集だよ。ここだと誰が來るか分からないから舞も一緒に行かない？」

こういう一方的な呼びかけには急いで行かないほうが良いと、俺の人生経験から學んでいるため、悠々と準備を始める。

「わかった、著替えとかある？　急いでたらそのままで良いけど……」

「いいよいいよ、こういうのはゆっくりでも良いんだ。著替えなんてなんでも貸してあげる」

「ありがとう、おぱんつとシャツズボンで」

「おｋ、おぱんつはこれしかないけど」

俺はできるだけ新品で、小さいボクサーパンツを舞に見せる。

「あ、ちょうどいいかも……　男の人ってこんなの履くんだね」

広げたパンツをけ取ると、びよんびよんと橫に引っ張っている。

ちょっと彼の息遣いが荒くなったような気がしたが、多分気のせいだろう。

「トイレで著替えてくる。すぐ終わるから待っててね」

マジマジとパンツを見ながら、くるっとトイレの方向へと回るとドアを開けトイレにった。

さ、さすがに著替え姿を見せる、完全未防備なの子では無いよなと、ガッカリとまではいかないが、しばかりしょんぼりした。

そんなことを期待していた俺という存在には、もっと悲しくなったが。

そうしてしして彼が出てきた。「どう？」と聞いてきたが、ふくよかとも言えないボディが完璧すぎて、いくらダボダボの男の服を著ていても、その魅のは浮き出てくるんだなと、素晴らしい、現代のほこ×たてを見た。

そういえば、あの番組っていつの間にか消えてしまったよな。

詳しくテレビを見ていなかったから、どんな容の番組だったかなんて覚えてないけど。

「可い子って何を著ても可いんだね」

お世辭ではない本音を、脊髄反のように彼に言う。

「ありがとう、嬉しい」

彼、そのままの表でもかわいい、なんて當たり前のことなんだけど、俺の言葉に反応して、恥じらいでいるような表を見せる彼もほんとにかわいい。つまり可い。

「できるだけ怪しまれないように帽子もかぶろうか」

「うん」

適當なキャップを舞に渡し、彼はかぶるために髪を一箇所に纒めるようだ。

長い髪を手についていたゴムでポニーテールのように後頭部で締める。

そのの子の醍醐味ともいえる仕草にマジマジともいかないが、橫目でしっかりと見る。

揺れる髪からはほのかにシャンプーの香りが漂い、の子の匂いというものに、改めての子が側にいるんだなと改めて実した。

準備が満タンで「よしこれから行こう」と言おうとした瞬間、ドアが風に曬されたように開いた。

「佑にーさん！！　おはよー！！」

暗がりの部屋を、ライトで照らすように大きく開いたそのドアの先に、夕がいた。

「「「ぎゃーーー！！」」」