《最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~》13話

「おいデカブツ!」

ある程度考えがまとまってきたので彼の真正面へと立った。

「無能力者よ、その反応、思考速度だけは評価してやろう」

それに反応し彼は遮蔽への攻撃を止め、俺をたたえるように言い放った。

なんでこうもトップを走っている連中は人間が出來ているんだろうか。

しばかり癪にってしまう。

二人はフィールドの中央線に沿うように向かい合っている。

その距離は9メートル。お互いが攻撃をしようと行すれば屆く範囲である。

「それよりも。お前のおかげで俺の隠れるところが無くなったじゃねえか」

奴に嫌味を言うように投げかけた。

俺の橫を見渡せば、日本刀で試し切りしたの木々達のように、3×2メートルほどの長方形の障害たちは斜めに切られていた。

それは児に遊ばれた積み木のように、無造作に散らかってもいる。

「それはすまない。ゴキブリのようにちょくちょくと逃げ出すお前には、逃げ場所を潰しておく必要があると考えた。住処を潰してしまい本當に申し訳ないと思っている」

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彼は軽いジョークをたたくように投げかる。

こいつ最高に煽りがうまいじゃないか。

口のうまさににやりと口元が上がってしまう。

「ったく…… むちゃくちゃなんだよ。しっかし、なんで何も持っていないのにこれらを壊せるんだ?」

俺は彼の能力について聞いてみた。もちろん彼の能力だけは全くと知識がない。

「何を言っているんだ。お前は、私のことを洗いざらい調べてきたのだろう。初の見事な避けは、事前の報がないとできない蕓當だ。まあ私は貴様については全くとは調べてはいないが」

お前のことなど眼中になかったからなと彼は言った。

その言い草からは、全てを見かしたようにも聞こえる。

その強者特有とも言えるその言いぐさに不快なが、俺の腹の中を駆け巡る。

俺は14歳から去年の16歳まで、ランク祭に出場をすることができなかった。

だから報が無いというのも無理はないとも思う。

なんせ俺はランク祭に出ることが葉うまで、でさまよう亡霊のように生きていたからな!

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最弱無名だった過去…… だけど今は違う!!

「バレてたか…… そうだよ。だけどお前の能力詳細だけは分からない。でもまあさすがにおじさんクラスの上級者は、嫌でも俺の頭の中に『功績』という報がいくらでもってくるよ。だけどよおじさん。俺のことを知らないだなんて、顔に似合って勉強不足なんだな」

全ては能力さいのうと言わんばかりに、こいつらは絶賛というビールを浴びてきた者たちだ。

の片隅にいた俺とは違う人たちだと俺は思っていた。

だけど今こうして最弱無能と言われてきた俺と、互角とも言えないが戦えているんだよ。

一方的に俺が最高に気持ちが良いわけだが。

「ああ、私の勉強不足だ。貴様のような無能力者が卍城を倒したことがいまだに信じれなくてな。卍城は最高の甘ったれ野郎だ。あいつの真の実力ならお前ごときにはおくれを取らないだろう。だが一時の気の迷い、判斷ミスでお前のような石っころ一つに転んでしまった」

奴は唾を吐き捨てるように呟いた。

「これでは、他の能力者に示しがつかないではない。そうは思わないか? 我々A級というものは戦爭の前線で戦う、いわば國を背負う裏のヒーローだ。そんな重圧の掛かった看板に糞をり付け、おいおい自分は病棟で聲帯の治療ときた」

聲質からは憤怒をじ取れる。奴の卍城に対しての好度がそうとうなマイナスであり、彼が”負けた”ことに対してどれだけふがいない思いをしているのか分かった。

俺には心底どうでもよかった。

「へへっ! そうかいそうかい。そういえばさすがに俺たち、戦闘を無視してしゃべりすぎじゃないの……」

彼の顔めがけて、不意打ちのナイフを投げる。投げる対象からは、その攻撃は見えないような技を使った。

これは義手のような瞬発的なパワーが出せなければできない技である。

右手から、ツバメの急降下ように放たれたナイフは、狙いすましたように彼の顔へと向かう。

しかし、空中で放す途中余計な力がっていたためナイフは半回転し、柄を頭にして飛んでいってしまった。

「ッ…… 甘い」

彼は何かを慌てるように、顔の前でナイフをキャッチする。

バリアを使うことはせずに右手を使っていた。

はたから見るとば、蚊を空中で握りつぶすかのようにナイフをキャッチしているようだが、しかし俺には微々たる焦りのようなものが見えてしまった。

なんだ……? 今のは。

「不意打ちか…… 弱者の貴様らしいな」

彼は、何かを斷ち消すように発した。

速度は十分だったが、さすがに誤ってしまった軌道だ。

いやこれくらいの攻撃は、こんな強者には通用しないのだろう。さすがはS級に一番近い人間だ。

接近戦はあの見えないブレードに、遠距離はどこにあるのかさえ分からない鉄壁の壁……

これらを全て読み切ることなんてでき……いいや、やってやるんだよ!

発想を逆転させるんだ。こちらのペースにもっていけば活路は開くはずだ。

彼の攻撃は明らかに遅い。剣先生についていけたんだからいけるはずだ。

俺は銃を奴の顔めがけ構える。

彼の姿が大きな壁のようにも見えた。

それは巖窟のようで、今の限界を超えるにはこれくらいはないとな。

俺は今の自分そしてこの壁を越えて、あの人にしでも近づく。

壁があるなら叩き壊すだけ…… ここは接近戦でいこう。拳で行くぜぇえ!!

「行くぜおっさん!! 俺の攻撃ダンスについてこられるか!!」

俺は姿勢を前のめりになりながら、獲に見立てた彼を噛み殺しに行くように地を蹴った。

の時間に対する意識を極限まで起させ、時間が5分の1の境界線を越える。

思考の半分を彼の攻撃の読みに、さらに半分はこちらの攻撃を読んで展開するだろうバリアの予測に使う。

相手の攻撃による反応は脊髄に全てを任せ、覚でかす。

このの使い方は剣先生の教えによって使うことができた。

これは一種の悟り狀態まで神を変化させ、による無駄な思考を一切減らし、いかに効率よく相手の攻撃を避け、どれだけ早く攻撃を繰り出せるかということだ。

それらを『覚醒せし覚《Awake Sinn》』と名付けている。

俺は蹴った腳を再び、ジャンプをするように蹴り上げる。壁を叩き割るかのような勢いを、じながら全力で進んでいく。

走りながら銃のSIG SAUER P228 XXダブルクロス 改を懐から取り出す。

周りの景は奴をとらえると、書き終えた油絵を指でなぞるように、滲んでいた。

あのでかいでかい壁を突き破り――俺は勝利をもぎ取る。見ていてくれ。舞、夕、剣先生。

「正面からとは迷ったか無能力者よ!!」

彼はまたもや何もついてはいない腰から何かを抜き取るように構える。

それを読んでいた俺は銃をバリア狀の太刀を持っているだろう手へと放つ。

奴はどうあがいても間に合わない弾に、バリアを使ったらしい。

彼の切りかかった腕が途中で止まっていた。

そしてバリアによって防がれた弾が地へと虛しく落ちた。

3秒も満たないギリギリの時間で、奴のミッドレンジまで行けた俺は、落ちた弾と同時に、奴の今にも切りかかりそうな右腕を、左の手のひらでこれ以上は切らせないようにと止める。

そして止めた勢いで義手の腕を大きく振りかぶり、フルパワーで奴の顔面へと叩き込んだ。

奴はスッと寸分で避けていた。

それは大きい図とは思えないほどの軽いのこなしである。

奴は淺くしゃがむと、義手のひじ関節に上に突き飛ばすように張り手。

それは俺の使ったパワーをけ流すように使っていて、寸分も狂わないロボットのように無駄がない。

張り飛ばされた義手は、金屬とは思えないほど上へと振り上がり、その反で俺のがつられるように宙へと舞う。

當時に飛びかけそうな意識を自我へと引き吊り落とし、すぐさま、カウンターとも言えるような右足で鋭いキックを彼の顔面へと決めた。

しかし彼は巖盤のような左腕でによるガード。

攻撃はうまくけを決められた。

次の左頭部の攻撃へと移すべく、を安定させ奴を眼中で捉える。

しかし、右手がけ刺しの剣を持っているように構えられていた。

このままでは奴のけ切りにやられると判斷し、をバック宙するように後方へ、そしてきれいに著地。

瞬時に奴は見えないブレードを抜き切るかのように構えていた。

すぐさま奴の橫大振りによる剣撃を避けるべく、義手を後ろへバックするように叩き込んで距離を取った。

バッタのように回避した俺は、後ろからの衝撃に転がるように対処。

瞬間、鋭い何かが俺の目の前を通り過ぎたのが第6で認識した。

奴は見えない剣を橫に切り降ったのだろうと覚的に察知する。

著地と同時に、彼が接近戦でバリアを展開しないことに疑問を抱いた。

俺ごときの接近戦には使わないということだろうか……

強者ゆえの手加減――いやこれは先ほどの過去の先頭と鑑みるに咄嗟には使えないということか?

いやそれはない。先ほどの銃弾を防いだのはどう見てもバリアだ。

では弾丸のような強烈な衝撃にしかバリアは発することができない……?

それなら納得はいく。

軌道が狂ったナイフでの投擲を防いでいたあいつは、妙に焦っていたからな。

これはまだ仮定の段階だ。もうし様子を見る。

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