激闘により、ランク祭戦闘エリアの障害は朽ちた建のようにバラバラであった。

一つは、座をすように、人型の形。もう一つは、極一転を狙ったように、大きい円を描いて、コンクリートが抉り取られている。

床には二歩、三歩と、削り取られたように跡があった。

正面には、対戦相手のゴウ。

「その傷の治り方……　お前が能力者だったなんてなあ！！　」

奴はそうぶと、右頬をクイッと上げ、口が片方上がる。

そしてこうも。

「化けが、この俺様がぶっ倒してやるぜ！！」

俺のほうへと右手をパンチをした、その腕は音をならして宙を切る。

その言葉に、観客はヒートアップし、歓聲はドームを反響するように響く。

「ああ、こいよ！！　俺を殺せるなら殺してみろ！！」

そう答え、ホルスターから銃であるＳＩＧ　ＳＡＵＥＲ　Ｐ２２８　ＸＸダブルクロスを取り出した。

その銃は白銀の沢を見せると、特注で改造された造形でこの手に食いつくように馴染む。

「殘り三分弱ってところか、お前を倒すには十分な時間だなぁ！！」

そう言い、中腰の狀態での流れる傷口をる。

攻撃をするためクラウチングスタートの構えをとる。

あの傷跡は、始めて間もない時に當てた弾丸だ。

接近してきたあいつを、人的な急所めがけて放った。

それを奴は、急所を避けて、あの攻撃を食らったのだ。

しかし、いくら急所を避けたとはいえ、あの場所の臓をえぐって時間がそれなりに経っているためかなりのダメージがあるはずだ。

なんて神力だ、まあこっからは勝負なんだけどな。

超能力とはいえ、頭を狙われては再生は間に合わないだろう。

頭への攻撃は、極力よく注意を働いてかわそう。

奴の行は、イノシシのように単純明快だと今までの戦闘で分かった。

あの言いぐさだとあとしで、奴は出多量で倒れてしまうだろう。

耐えて堪えて、耐える、避けられるならば避ける。そしがあいつに勝つ最後の手段だ。

ああ、やってやるぜ。

みっともないが、この作戦であいつに勝てる。

奴がをあげるのが先か、俺がをあげるのが先か。

これほどまでに、熱い試合はないだろう。

超回復か、超攻撃、どちらが優れているか勝負だ。

「行くぜえ！！」

初、奴がいた。

その力は突如発されたジェット機のように、勢いよくそのはこちらに向かってくる。

その移の衝撃に空気は切り裂けそうなほど、甲高い音を鳴らす。

波のように空気の刃をまとい、あっという間に手の屆く範囲まで來ていた。

「だりゃああああああああああああああああああああ」

亜空間を移したかのように、右手が腹を壊す勢いで向かってきた。

剣先生に認められた自慢の反応と、今までの経験に基づいた読みで躱す。

しかし激痛。

わずかながらにかすれ、三本ほど肋骨を折られた。

掠っていながらも、その攻撃力は常軌を逸している。

「クッ！！」

橫のステップで、攻撃をけ流しながら大きく距離を取る。

距離を取る途中、に先ほどと似た、縦の揺れが襲った。

――――ドクン。

に電流が走るような覚。超回復で肋骨は手品のように、回復した。

斷りに反した力にタスクは、肋骨をでる。

無茶苦茶な回復力に驚く。

先ほどのけないまでの負傷に、回復の力の発は遅かった。

なるほど、首から上までの損傷は治癒力が遅くなるということか。

不完全ではない再生能力。

まあこれくらいのハンディはあってもいい。

すぐさま奴が著地した位置に、カウンターである銃弾を放った。

奴は第二撃をするべく、中腰になって俺を見ている。

俺の攻撃を見ていたのか弾を避けた。

そのうちに障害に撤退をする。

リロードと、力回復を目的にした行だ。

すぐさま、コンクリートごと突っ込まれては大変なので、そのを走らせる。

から、出た瞬間を隠していたコンクリートが発したかのように木っ端みじんになった。

奴が、障害ごと攻撃を仕掛けたのだろう。

砂煙の中、奴がいた気流を捉え、走りながら弾丸を放った。

煙の中に、一発、二発と弾は食われ、三発目を打ったと同時に、次の障害へと隠れる。

――――フウと息をついた一瞬だった。

ダイナマイトの発音のようなものと、気づけばそのは宙に浮いていた。

左腕はは反対側に曲がっており、右脛から下は激痛が走る。

すぐさまの欠陥を察知し、俺の能力は発した。

腕は芯が通ったように元通りになり、足の痛みはなくなっている。

しびれるような自の能力で目覚めると、空中で制を立て直す。

立て直しながら太ももから、ナイフを取り出した。

著地、奴が正面一〇メートル先で構えていた。

「これでぇ！！　とどめええええええええええええええええええええええ」

考える間もなく、奴は俺の方へと突進を始めていた。

その速度に避けるという思考が考えつく前に、今度こそ、そのパンチは腹にあたった。

その一撃に、スポンジのようにへこんだ腹はありったけの、、臓を飛び散らせ、俺は後方へと吹っ飛ぶ。

をくの字に曲がったと思いきや、ショットガンの弾のように俺のが飛び出しているのが分かった。

手に持っていたナイフは、宙を飛び奴の足元へと落ちる。

戦闘エリアギリギリにまで吹っ飛ばされていた俺は、目の前の自の、裝に大きな咳と共にを吐いた。

赤いの池は、俺の顔を反して、目の前の臓などからは生臭いにおいを放っている。

俺の臓なのかと気づいた時には、激痛と再生が始まっていた。

そして、再生が終わった合図であるしびれるような覚で、俺はゆっくりと立ち上がった。

地に落ちていた臓は凄まじい速度で乾燥すると、砂煙となって風と共に消えていく。

そこには激痛を楽しんでいる俺がいた。

Ｍという質ではなく、自の再生能力に面白いという想が生まれたのだ。

――――この覚、病み付きになる。

なあこれが”力”ってやつなのかよ……

このバケモノめいた現象が……

たまらない。ああ、お前らは自分の能力｟さいのう｠にこんな思いを巡らせていたんだな。

無能力と言われていた過去だったが、今の自分にとんでもないような萬能が芽生えていた。

俺は、やれる。

なあ、俺を見下していたお前ら、どうだ。

俺はお前らよりやれるんだぞ。

だからしっかりと見ていろ。

――――――俺の戦いを。

覚醒せし覚《Awake Sinn》――――――。

意識が加速し、ゴウを除いた映像の簡略化が始まった。

そして、背景は絵のをにじませたように、歪んでいく。

俺を立ったのを確認したのか、奴は攻撃をする構えをとっていた。

脳の報選択に痛覚の報を消した。

次に、いかにない移で彼の攻撃を淺いダメージにするかそのことに重點を置く。

吹っ飛ばされた攻撃の影響で、銃が奴の近くに落ちている。

一つは奴の５メートル橫に、もう一つは左後方の３メートル離れた位置だ。

攻撃を加えるには、二つの銃を取り直さなければなければならない。

なぜ避けることに専念せずに、攻撃を加える必要がるのか。

しでも時間を稼ぐことと、攻撃を躱すことが難しいからである。

奴の攻撃回數はあとしで終わりといったところだろう。

腰にあるマガジンポーチの重さで、だいたいのいくつマガジンがあるか考える。

ざっと九つと言ったところだろうか。

敵を視界にとらえる。

奴は休みも容赦もなく、攻撃態勢にった。

地をなぞるようにると、凄まじい眼をこちらに向けてきた。

――――突撃。

前転をするように、避けるが遅かったのか足にへと、その攻撃が當たった。

足は宙に舞って、目の前に落ちる。

が水を出しているホースのように勢いよく噴出し、周り一帯はの池と化している。

足をわし摑み、切られた足へとくっ付けた。

すると、再生能力が発した。

接ぎ木をするようにして、何倍もの速さで再生する足。

しっかりとけるようにはなっていた。

全速力で、二つの銃をとり、それを後ろに渡すように構え、を頼りに奴へと放った。

そのまま倒れ込むように、を転がし、奴の狀態を見た。

「てめえ！！　この場に及んでまだそんな元気があったのかよぉ！！」

奴は噴笑しかけるようにぶと、アッパーパンチをする要領で俺の方へと中指を立てた。

見ると右肩に銃弾が當たったのか、だらだらとが流れ、地へと水たまりのように溜まっていく。

あの損傷を見るに、最後の攻撃が仕掛けられてくるだろう。

「威勢がいいな。突進攻撃はこれで終わりか？」

「俺はやれるぜ。おめえはどうだ無能力者！」

「余裕だよ」

多くを語る必要はないと思っていた。

なぜならそれは、戦闘をしているからだ。

殘りない時間だと、俺とこいつの間ではわかっていた。

（最後に立っているのはこの俺だ）

奴の本気はこれから來るだろう。

「ほんじゃまあ……」

奴はそれでもと、その攻撃態勢を変えない。

しかし、今までとは違うその雰囲気に、頬にビリビリとちらつくような張が走った。

「行かせてもらうぜえええええええええええええええええええええ！！！！」

絶、そして絶。

「ドロップウウウウウウ！！！！！！スタンプウゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ！！！！！！！！！！」

來たッ！！　奴の至高にして、強烈にして、必殺であり最強の技。

先ほどはまともに食らって、その威力にメンタルを持っていかれた。

だが、今度は二度とをあげることはない。

――――さあ、來い！！

俺はモロに攻撃をけた。

ひたすら地面に力をれて立っていた俺は、無殘にも、空気に舞う埃のように吹き飛ばされた。

一個目の障害に當たると、そのとコンクリートが同時に吹き飛び、下半が外れて、次の障害へと休む間もなく飛んでいく。

まともな人間ならば死んでいてもおかしくない攻撃に――

――――ゥアァッ！！

口から固形が出ていくのが分かった。

そのダメージにも関わらず、たがが外れているであろう能力は、そのを意識共々再生させる。

「ああああああああああああああ！！！！」

かすかな視界が戻ったと思えば、全崩壊による激痛が俺を襲った。

そして電撃が流れるようにそのを震わせると再生が始まった。

「ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

未だ続く凄まじい激痛に、がちがちと歯を鳴らし、再生を待っている。

徐々に激痛が一つ一つ無くなっていき、覚もだんだんと元のに戻っている。

その覚を、痛みに狂った頭でじ取り、視界はぼやけ口からはよだれが出ている。

人間というものは慣れるといった環境適応が備わっていると誰かが言っていた。

しかし、このが半壊した狀態からは凄まじい激痛があった。

その激痛に俺は慣れることができなかった。

凄まじい激痛の前では、環境適応など無に等しいのだとわかる。

――――俺は最後まで立っているんだ。

そんなことを思いながら、足をガタガタ揺らしながら立った。

下半が無くなって、立てるようになった時間。

おおよそ２０秒足らずだ。

とんでもないような自分の能力ににやけながら、奴の向を見る。

奴は毆り終わった狀態で固まっていた。

銃弾を食らった肩であるはずなのに、奴はとんでもない威力で俺に攻撃をした。

とんでもないやろうだ。

その固まっていた姿は、日本國歴史で有名な弁慶を思わせるような姿勢である。

全からのの提供が止まり、ついに戦闘不能となったのだろう。

奴は、最後までやり切ったのだ。

固まっていた顔はなんだか満足げでもあった。

ブウウウウウウウウウウウウウウウウ！！！！

試合終了の合図が鳴り響く。

會場全からとんでもないような歓聲が聞こえてきた。

ああ、やりきったぜ。

なんともやり切った笑顔がムクムクと湧き出てきた。

すると後ろの方から聞きなれた聲が聞こえる。

「タスクぅううううううう！！！！！！！！」

それに気づいた俺は、その聲の方向を振りむく。

その最前列には、涙を流しているマイがいた。

そんな心配そうな顔をしていた彼に、ありったけの笑顔を見せる。

そして勢いよく立てた親指を向けた。

◇　◆　◇

試合が終わり、選手待合室に戻っていた。

すると、勢いよくドアが大きく開いた。

「タスクゥウウウウウウウウウウウウウ」

マイが來ていた。

俺の全を隈なく見ると、まみれにもかかわらず抱き著いてきた。

「もう……　タスクのばかあああああああああああ」

俺のに顔を押し付けるようにしてんでいた。

「ごめんな、心配かけちゃって」

彼の後ろ髪をでる、その髪からはいい匂いが鼻にってくる。

そのサラサラの髪、肩を震わせながら泣く彼に、その時に言う言葉を言えずにただ抱きしめた。

ずっとずっと彼に、自分の存在をわからせるように、強く強く。

「なんでタスクが生きているのかなんてわかんない……　だけど、こんな戦いは二度としないで」

そう言って彼はさらに強く抱きしめた。

「わかった……　ごめんね」

それから、彼が泣き止むのを待ち、を綺麗にして二人一緒に帰った。

俺はずっと彼の隣にいたいと思った。

それが再確認できた。