「ファイッ！！」

始まりの火ぶたが切って落とされた。

両者一斉に、向かい合っている相手と距離を取る。

距離が２０メートルほど離れたと同時に、奴の腰から小型のアサルトライフルが飛び出してきた。

いままで腰にすっぽりと収まっていたため、奴がアサルトライフルを持っていることに気づかなかった。

――――ダッ、ダッ、ダッ、ダッ、ダッ。

奴の銃から放たれた銃弾は、一発は元に立っていた白線の位置に當たり。

二発目は、俺のを追うようにして、空中を切る。

すぐさまの軸移による、軌道変更によって二発目は回避することが出できた。

そのままジグザグに橫へと走り、三、四、五発目が向かってくると同時に遮蔽に隠れることができた。

狀況を確認するように、彼の攻撃を遮蔽から確認する。

すぐ近くからは、鉄とコンクリートの弾けるような音が聞こえてきた。

銃弾は、こちらを狙って連による手數を知らしめていた。

――――アサルトライフル。

それが今戦っている敵の武である。

自の力が、表面的に表すことができない能力者の大抵は重火を使って戦いを繰り広げる。

俺もこの二丁の銃で、ここまで勝ち上がってきた。

奴も同じ系統の武である。

それは、一昔前の能力者が戦場を闊歩していない時代の戦いと、同じである。

深呼吸を三度ほどして、しだけれていた息を整える。

奴も同じ銃火使いだということに親近がわいたのだ。

接近戦が得意なものは、この狹いランク祭において自のを使ったほうが、まだ早く終わると言っていた。

奴の足音を十一時の方向から耳から音を拾い確認。

両脇にあるホルスターから、銃を二丁取り出した。

白銀のフレームが、沢をみせ、これからの激戦が始まるということに、気分が高ぶる。

淺く左を向き、遮蔽から飛び出した。

奴は向かって左の一五メートル離れている柱から、その移を見越して、三秒ほどの連。

――――ダダダダダダダダッ。

その撃によって見せたを、走りながら放つ。

上手く奴は隠れ、一発は遮蔽すれすれを通り、もう一発はコンクリートをえぐった。

そのまま奴の対角線上に移するように、隠れる。

対銃火の戦闘は、両者の誰かが大きく出れば戦況は変わる。

遮蔽に背中でもたれかけ、奴が移するのか聴覚をフル活用して聞いていた。

能力者の大抵は、その能力を生かした戦闘を繰り広げる。

あるものは鎌を使い、あるものはその手に銃弾さえ防ぐことができるグローブをはめる。

誰も彼もが、銃を使わないということはないが、使う人間は數派なのだ。

しかし、この戦いは前時代の戦いとは決定的な違いがあった。

奴が持っているのは確かにアサルトライフルとリボルバーだ。

しかし、とある特殊な能力者が使うとこのようになる。

その一瞬。

三時の方向にリズミカルな銃聲、同時に薬莢がコンクリートの地面に落ちる音。

それと同時に、右手に凄まじい激痛が襲った。

そして、俺の能力が発して、その手に付いたと切れた頬は再生する。

とある弾がコンクリートを突き抜けて俺の腕を貫通したのだ。

すぐさま、二発、三発と、遮蔽にを隠しているにも関わらず當たる。

肘に當たった一発はそのまま腕を貫通して飛んで行った。

そして、肩に當たった二発は骨へと直撃したのか、その部位は貫通していない。

奴の指がトリガーが離れたとづき、次の障害へとを隠す。

――――どういうことだ？

０．５秒ほど考えてやっと気づいた。

奴は”能力者”だということに。

この厚さ一メートルもある、コンクリート製の遮蔽を貫通するほどの威力。

対ライフルによる撃。

ではなく、念強化能力による、銃弾の強化。

またも能力者の戦いでは、その意味を持たない遮蔽だ。

に頼っていたしょうもない思考を片付け、こちらから仕掛けることを考える。

銃弾が貫通したを右目で、奴の隠れていると思われる柱を覗く。

奴はこちらを待ち構えるかのように堂々と立っていた。

「僕はあなたと同じ遭遇でした。僕の能力はの強度を上げることしかできない。ですがあなたは違う。無能力でここまで這い上がってきた。それがあなただ」

そしてこうも。

「僕のような人間がもう一人ここにいたなんて！！　さらには誰よりもあなたは戦える。ですが僕はそんなあなたを越えます」

何を言っているんだ。俺は俺だけで、お前はお前だけだ。

確かに、生きていれば誰かに會い、その誰かにじるシンパシーというはある。

だが、水と油がわらないように、人間もまた、同じではない。

俺は誰かの助けでここに立っている。

自力で上がってきたお前とは違うんだ。

だけどな、俺を期待している人のため、自の目標のため、俺は突き進む。

それが俺だ。

「いつまで隠れているんですかタスクさん！！　僕はあなたを倒し、越えてみせます」

コンクリートの遮蔽の後方から聞こえるのは、明確な答えと宣言である。

俺の左肩を抱えながら荒く息を吐く、肩は使いがならないほどにダメージを負っていた。

肩と腕をつなぐ関節に、盲管銃創のダメージがあるからだ。

再生しようにも、に弾がっていては、その効果は、無に等しい。

コンクリートを突き抜けることはできるが、では弾の形を変形させて、俺のをむしばむように痛みがある。

「――――ハァッ、ハァッ」

時間が経つにつれて、激痛と、無理な再生が俺を苦しめていた。

大きな息づかいとともに、額にある大粒の汗を左腕でガシガシとぬぐう。

だが、畑井ゴウの攻撃とは天と地ほどの痛みだ。

まだこちらの痛みの方が、神的には圧倒的に楽である。

”普通”ではない考え方に、口元が緩んでいた。

そんな自分を客観視しながら、片手で銃のリロードを済ませる。

「僕の攻撃に逃げ場なんてありませんよ！！　わかっているでしょう！！」

左手にはリボルバー、右手にはアサルトライフル。

能力が発できるのはあのリボルバーからだと考える。

ほんの一瞬、その隙さえあれば。

奴の俺の距離は、短くも、俺のでは地球を一週するくらいには長かった。

戦いの迫した空気で、意識が過剰な距離を生む。

いや考えを改めろ、距離が遠いならば、こちらから行くに限る。

自信の痛覚、意識を完全掌握させて地球の裏側、いや人間の限界すらも超えてやる。

――――それが俺の戦いだ。

覚醒せし覚《Awake Sinn》――――――。

発と共に、障害から出た。

視界は、極限間まで報の単純化、彩報は奴の周りだけ、時間は、二分の一．

正面二〇メートル、単撃武に連続撃は圧倒的不利である。

それでも俺は行く。

それを気づいたのか奴は待ち構えたようにそのアサルトライフルをこちらの方へと向けた。

「とち狂ったんですか！！　タスクさん！！」

激するように奴はんだ。

「うるせえ、來いよ俺はここにいるぜ！！」

奴は右手に持っていたリボルバーを素早く収めると、アサルトライフルを放った。

連による手數をそれでもかと見せる。

それを躱すようにに銃を二丁、奴の方へと向け二メートルほどジャンプをして放つ。

「的ですね！！　的ですよあなたァ！！」

空中で靜止した首を思いっきり右肩へと曲げた。

右肩にあったのは、自製のキテレツスイッチ。

畑井ゴウ戦で學んだこと、それは奇襲の重要だ。

足には、イレギュラーダガー｟奇襲ナイフ｠が潛伏されている。

そのナイフが奴のアサルトライフルを握っていた手へと、空中を飛ぶ戦闘機のように空。

空を切るような音を立て、その手に當たった。

親指の骨を斷ち、切られた指と同時に奴の銃火が落ちる。

「あああぁああ！！　それですよタスクさん！！　これがあなたの真骨頂だッ！！」

奴は左手でナイフを取り出した。

俺はキックをする要領で奴のへと、落ちていく。

構えられていたナイフは、ふくらはぎを切り、が噴き出る。

地と俺のを浴びた相手は、たたきつけられるように地面に倒れた。

二人は混ざるように後ろへと転がっていき、俺が上に乗りかかった狀態で止まった。

すぐさま左手で奴の襟橋をつかみ、顔面の中央にある鼻あたりを頭突き。

頭突きの衝撃、後頭部と足場のコンクリートの激突に砕けるような音が鳴る。

音と同時に、コンクリートの末が二人を襲った。

そのまま左腕で、奴の顔面を何度も毆りつける。

一発、二発、三発、四発、連打。

アドレナリンの効果なのか、何発れたのかのかさえ今の俺にはわからない。

力は限界に近づいて、毆る威力はるだけのようなパンチになっていた。

突然と首を絞めるような覚が、そしてそのまま頭を地へとたたきつけられた。

そのままの上下位置は形勢逆転。

すると奴は、腕十字の構えをとり、俺の右腕をへし折るように関節が曲がらない方向へと曲げる。

ほどかせるためにと奴の足へと嚙みついた。

奴の足をかみちぎって、そのを顔いっぱいに浴びる。

を噛みちぎっていくと、鉄のように固いが歯に當たった。

「ぃいいいいぎいいいいいいいいいいい」

奴の痛みに耐える聲が、右の耳からってくる。

埒が明かなくなったため、ナイフを取り出して腕を切り落とすことにした。

だめだ、腕がへし折られる。

かなり時間が経ったが太ももに裝備していたナイフを取り出した。

しかし、肘の関節と、周りの筋は完全に斷裂して、骨の通っていない棒となっている。

「諦めてくださいいいいいいいいいいいいいいい」

悲痛なびと負けを認めろという聲が、奴から放たれた。

負けじと大きな聲を張り上げる。

「誰が諦めるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

左の腕を右腕へとかせることができた俺は、腕を切り落とした。

腕の骨は全て折られていたため、存在を否定されたような激痛が襲う。

「あああああああああああああああああああああ」

「あなたって人は！！　最高だあああああああ！！」

奴は途中まで切れていた腕を木の枝を引きちぎるように引き取った。

その腕から飛び出したは、蛇口を限界までひねったように勢いがある。

そのは、奴の顔へとピンポイントに飛び出している。

で気が紛れているうちに、すぐさま左腕で、奴の足をどかし、奴から距離を取った。

それを追うように、全を使ったブレスをするように飛び込んでくる。

痛みで視界が揺らぎながらも、腹をキックして対処。

二メートル先まで、奴は飛んでいく。

そしてホルスターにある、銃を取り出し、奴へと向ける。

それと同時に奴もまた、リボルバーを構えていた。

「「これで終わりだあああああああああああああああああ！！！！」」

二人の弾はお互いの人的急所を見事に打ち抜いた。

箸を咲くようにして、同時に倒れる。

――――ドクン！！

に電流が流れるようにしての再生が始まった。

立ち上がるころには凄まじい倦怠が襲ったが、ゆっくりと立ち上がる。

そして倒れていた奴を一目見ると、大きく左手を天高く上げた。