目が覚めた。

 「タスク兄さん、おはようございます」

 　左手を握っているのは、ユウだ。

 　手の甲をほっぺたにつけ、彼はずっと俺の起きるところを待っていたらしい。

 　それは、彼の手がかなり溫かいからだ。

 「おはよう、そういえば今日の授賞式何時からだっけ？」

 　そういい辺りを見回してみる。

 　見知らぬ天井はハイライトを浴びているように眩しく、壁、ベット小は、清潔な白一である。

 　鼻からアルコールの消毒のようなつんとした匂いが広がっている。

 　右腕には點滴がされており、赤い、白いの２種類が、俺のの中にっていた。

 「授賞式は一週間前ですよ……」

 　え、一週間！？　俺はどれだけ寢ていたんだ！？

 　彼の、心配している顔。

 「ま、マジ？　どれだけ寢ていたんだよ……」

 　右手で、顔を拭くようにがちがちとる。

 「私……　心配したんですよ？」

 　ふと彼のほほにれている左手に、滴が付いたようなようなが伝わる。

 　それから彼の顔はこちらから確認できないほどに、前髪がその顔を隠していた。

 　彼は俺の妹のような存在だ。

 　昔から俺のことを心配してくれて、獨りにしないよう俺の相手をしてくれた彼。

 　右手で彼のサラサラな髪をでた。

 「ごめんな余計な心配かけちゃって」

 　一杯の謝罪の言葉を彼に告げる。

 　そういえばこうして二人で話すのも最近はなかったなと気づいた。

 「もう、タスク兄さんの馬鹿、くさい、変態、Ｍ字ハゲ、トイレかなり長い」

き、傷つくなあ……

はははと心の中で彼の罵倒を黙って刻み込む。

これだけ心配させたんだからまあ、あたりまえの償いだなと。

しかし最後のトイレ長いは余計じゃないんですか？

 「もう……　とにかく、死ぬなら私よりも遠くて、すぐにはいけないところで死んでくださいね」

 　その言葉と共に、俺の手が彼のおでこに當たる。

 　そして彼のくちから笑顔が出てきた。

 「ああそうだな、まあ俺死なねえけど」

 　冗談のようで本當のことを彼に告げた。

 　俺の能力は、人を超越した超再生、大量出以外では倒れない不死の。

 　まあこの能力を知らない彼には冗談のように聞こえるだろう。

 「知ってます、あの盾田を倒したんですから。そう簡単に死なないことなんて」

彼は、満天の笑顔で俺の顔を見ていた。

眩しいその笑顔、彼にとって誇らしいともじ取れる。

ああ、もうキュンキュンしちゃうじゃんか……

彼のその笑顔に顔が熱くなってしまった俺は、慌てて視界をそらす。

 「そいえば俺、授賞式出れなかったし、どうすんだ……」

 「あ、ほらトロフィーならここにありますよ」

 　彼は摑んでいた俺の手を放すと、立ち上がり、左上にあった機にあるトロフィーを見せた。

 　小さくも、しっかりとしたつくりがわかる金だ。

 「あ、出れなくても貰えちゃったんだ……」

 　普通もらえるかな……　まあ病欠みたいなものだし……

「私が男裝をして出たんですよ！」

 　えっへんと最近彼のは、富んでいたが、しっかりと引き締まっていたようにも見える。

 　え、それよりも男裝をして授賞式に出たという真実に、まばたきが止まらない。

 「よ、よくばれなかったな……」

 　とにかく驚いていた俺は、彼の誇らしいようなよくわからない顔に、妙な信頼が芽生え……

なわけあるか！　ああ、晴れ舞臺……　なんで俺は出れなかったんだ。

 　自分の表彰式なのに……

とにかく落ち込んでしまった気分をあげようと必死になって楽しいことを考える。

 　無理です、さすがにこれには俺のメンタルも……

はあ……

「あの……　あれだ。ありがとうな俺の代わりに出てくれて……」

 　別に改めて別の日に俺専用の授賞式をとり行うのもよかったのではないかと……

 　まあでも、俺を応援してくれた人たちを心配させるしな。

 　なら影武者でもよかったか。

 　そうだ、そう考えることにしよう。

 「ちょっと元気がないですよ？　調悪いんですか？」

 　ユウの心配そうな顔が、俯いていた俺を覗き込む。

 　すぐさま顔をあげて、なんでもないよアピール。

 「じぇじぇん、だいじゅぶ」

◇　◆　◇

「元気か年？」

 　マイがユウを呼びに行くと病棟を後にすると、剣先生が、足っていく彼を見て病棟にった。

 「先生外で會話聞いてたんでしょう？」

まあユウとの會話を聞かれて困ったところはない。

しかし他人に會話を聞かれるとなるとあまりいい気分はしない。

 「何も聞いていないぞ、それより授賞式の件だが」

 　と、ユウから聞かれた話を彼は始める。

 「ああ、聞きましたよ……　授賞式はユウが出たんでしょう？」

 「そうだ、男裝を私が教えたんだ。まあトロフィーはそこにあるから問題はないだろう？」

 　彼は左上にあるトロフィーを見ると、煙草を吸おうとポケットから取り出す。

 「あのですね先生……　問題がないわけが無いでしょう？」

 　今まで日を浴びなかった人間が、まあ一応、優勝したんだ……

それなのに……　なんでだよお！

 　やっぱりが抑えきれなくなった俺ののように、彼はジリジリと煙草の音を鳴らす。

 「たしかにな……　お前の日の浴びる瞬間を奪ってしまってすまない」

 　素直に謝罪をする彼。なにか理由があったんだろうか……

なぜかこちらが悪いような気がしてならない。

 「あ、すいません僕の代わりとやってくれたのに」

 　のんびりと寢ていた俺の代わりに出てくれたんだ。

 　そんなことよりも何か”裏”があるような気が、俺の中で付く。

 「そういえば、今日は私の家でバーベキューをしないかと思ったが……　そのじゃ來週くらいか？」

 　そのずいたおれの考えを妨げるように、醫療によっての回復を促進された俺のを見て、そう彼は聞く。

 　とりあえすは、おじいさんのようにがちがちになったものの、けと思えばける。

 「正直けますけど、醫者に聞いてみないとわかりませんね」

 　その瞬間、彼はナースコールを押していた。

 「ちょっと先生何してるんですか！？」

 　ジリジリジリジリと何回も押している彼の手を止める。

 「聞くならこうやって直接呼んだ方が早いからな」

 　すると、ちょっとの時間が経つと、５人ほどの看護師がこちらの病棟に駆け込んできた。

 「やあ」

 　剣先生は、汗だくの看護師たちに、煙草の煙とあいさつをかける。

 　この人ってほんとうに……

それから俺の能力を知っているという醫師が俺のところに來た。

 　そして剣先生と俺の聞こえないような聲で、會話をして、俺の腕に刺さっていた點滴針を抜いてもらった。

 　覚醒せし覚《Awake Sinn》を使えば彼らの會話を聞くこともできたが、さすがに使うほどの度も格も悪くはない。

 　どうやら今から、退院ができるようで、看護師が準備を始めていた。

 　剣先生は、じゃあまた私の家でと言われ、彼の自宅へと帰っていった。

 　ああ、もうちょっとここでのんびりしたいような気もするなあ。

 　そういえば著替えが無かったと気づき、せせこらいている看護師のお姉さんたちを見ながら攜帯端末で家の固定電話へとかけた。

 　３回のコールの後に、マイの聲が出た。

 「もしもし、佐部です」

 「あ、マイ？　俺だけど」

 「オレオレ詐欺というやつですね、お金は振り込みませんよ」

 「違うよ、俺だよ俺！」

 「否定しても、この私にはお見通しです、この希財閥……　あっ」

 「あ、じゃないよ！！　俺タスク！　マイさんそんな貴重な報ながしたらいけないでしょ！」

 「もしかして、タスク？」

 「もしかしてのタスクですよ」

 「実際の聲と電気を通した聲とは全然違うじゃん！」

 「そうなの？　そういえば俺退院できるらしいって」

 「ぜんぜん聲ちがうよ。退院？　よかった！　タスクと全然會えなかったの寂しかったよ」

 　するとずるっと、鼻ですするような音が聞こえた。

 「あの、心配かけてごめんな……」

 「うん、よかった。今度こそ……　會えなくなるのかなって」

 　目を閉じて聞いていた俺は、數秒黙った後にこう告げた。

 「マイ……」

 「うん……　どうしたの？」

 「あのさ……」

 「なぁに？」

 「俺とずっと一緒にいてくれないか？」

 「え、え……」

 　彼の戸った聲が聞こえる。

 　ああそうか、俺は……

強くはなれた、なら、誰かを。

 　マイを守りたいと、今思ったんだ。

 「君が好きだ」

 　その告白に、電話越しから、彼の口からポンッと空気が出たような音が聞こえる。

 　俺は彼の答えを黙って聞いてみる。

 「私も……　あなたが好きだよ」

 　その答えを聞くと、俺の耳あなから何かが沸騰したように熱くなっていくのがわかった。

 　中も恥ずかしくなってしまったのか、側から熱くなっているのがわかる。

 　それと同時に、うれしい気持ちが、中に駆け巡った。

 「マイ……」

 　俺はあまりの嬉しさに泣いていた。

 　けながらに、彼の電話越しに、泣き聲を聞かせてしまっている。

 　それを黙って彼は聞いていた。

 「タスク……　私は財閥のお嬢様……　將來はあなたのお嫁さんになりたいけど……　私は一人っ子だし、何よりも私の大切な家族を裏切るような真似はできない。それでも……　わたしと一緒に今をいれる？」

 　そうだ彼はお嬢様なのだ……

だけど、俺は彼が一緒にいてくれるという問いに迷わず答えた。

 「ああ、ずっと君を守るナイトになるよ」

 　彼が誰と結婚しても、彼を守るナイトになろうと決めた。

 　君が好きだ。

 「……わかった。至急あなたは、私のところに來て」

 「はい、マイ様」

 　そうして彼との將來永劫の契約が終わった。

 　俺は、誰かを守る誰かになりたかった。

 　なれただろうか、あの人のように。