《最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~》52話
僕は、彼が想定した唐突なチョイスを前にして、迷うことはなかった。
しかし答えを彼は聞くことはなかったのだ。
だから、すこしだけの沈黙の後に、僕から質問を投げることにしてみた。
「萬を見渡せる眼ということですか」
疑いようもなくして、僕は彼の言葉を信じていた。
イアさんが何を見ているのか、僕にはわからない。だけれど、彼はなんとなくとも、僕がこれから何をして、そして何を失っていくのかわかっているとも聞き取れるような、聲音であったのだ。
だからこそ、聞きたいこともあった。
「そうね…… だからこそを自在にれれるかこそ、の価値、意味、真意、始まり、そして終焉がわかるの」
不思議な力が無いような世界ならば、僕は簡単にも、イアさんの言葉にあらぬ疑いをかけているところだろう。だけれど、世界は今異能使いによる戦闘集団であふれかえっている。結社も舌を巻いてしまうほどの力、報索敵能力で、簡単に裏が暴かれてしまう世界だ。
そんな現狀だからこそ、彼が言っていることに、僕はどんなうたがいもなかった。だけれど、彼が、僕に対してなにかあって、それも恩を返されるようなことはしたことがない。彼に対して何かをしたといえば、僕は彼の下著をのぞいたくらいである。
「何よりもあなたの在り方、魂の場所に私は驚いたの」
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息をつっかるようにして、言葉を出していく。その言葉には、彼の驚きがあったような気がしていた。
「私の力は、対象がにしか向かないものなの。だけれどね、あなたには私のこの力が働いている。まるであなたがであるかのようにね」
真実を、それも僕には言葉一つ一つがわかっていても、しかし一つのセリフとしては全くと頭にってくることはなかった。
それが、僕にとって、とても衝撃的な言葉であったからだと、僕は自分を客観視している。こんなところで冷靜に自分を見ているところも、僕が””たる所以、だからだろうか。
それはそうとして、僕がということを質問してみた。
「僕が、―― 僕は確かに存在しています、そして人のように生きている。まあそれらは僕が人間だという証明にはなりませんけれど」
もし、僕という人間が、作られた存在なら、なんとなくとも、わかるような気がしなくもない。正直に僕は僕がわからないというのが答えの底にあったのだ。
「私と同じなのよ、自分には何もないような気がしていた。だからこそ、自分と同じような人間を見つけてしまったからこそ、あなたに話しかけたかったのかな」
にこやかに答えた。彼もまた自分がということであると説明をした。
僕らは、人間でない。
しばらく僕らは、靜かな空気が流れていた。
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僕は事の整理が追い付かなかったというわけでもないが、どうしてもどうしようもなく、黙っていたかったのだった。
「タスクさんってさ」
彼は切り出したように、言葉を紡ぐ。
「なんでしょうか?」
僕もまた、彼の言葉をイアさんの一言を待ってもいた。
「世界は、この爭いに満ちた世界は、誰かに作られたものだと、そう思ったことはない?」
世界は誰かによって作れらたものだと、僕はかんがえたこともなかった。
いまこうしてある世界は、5分前に作られたものなのかもしれないという話ならば、聞いたことがあった。
爭いがずっと、それも3百年も対戦が起こっているこの世界。
紛爭は絶えず、毎日のようにある。殺して殺して、殺して、そのうちには、この世界は簡単に人の手によって無くなってしまうものかもしれない。
そうなるというのならば、僕は足掻きたい。
僕一人の力では、世界側に対しては、ちょっとの爪痕にもならないだろうけれど。
「世界が誰かに作られただなんて、そのようなことは、考えたことがありません。だけれど、僕は破滅に向かっているのならば、足掻いてみたいと、その先を行ってみたいと思っています。たとえこの存在が、無くなってしまっても。というよりも僕は、僕という存在は――――」
――――消えないだろう。
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それは僕自の能力がそうだからである。僕という人間の能力は不死である。
だからこそ、死ぬこともなければ、消えることも、もしかするとないのかもしれない。
「いえ、だからこそ、足掻きたいですね。というよりも、僕の今の現狀が足掻いて、足掻いて生きているといっても過言ではないですから」
笑いを起こす自をするように、言い放った。
彼は関心をしていた、僕という人間が気にっているようにも見えた。
「かっこいいと、そんなタスクくんのこと、素直にかっこいいと思ったよ」
僕の顔をまじまじと見て、うんうんとうなずきながら、イア・ホーパ・アクェイという一人のは、僕の存在をとらているようだった。
今こうして出會って、數分も経っていたとは思えないほどに、彼は僕のことをわかってもいて、そしてまた僕も彼のことをわかっているようだった。
彼もおんなじことを思っていたのかもしれない、僕と同じ考えをしているという推測が簡単にできてしまう質問をしてきた。
「私たちってさ、前世は夫婦だったのかもしれないね」
と、唐突に言ってきたのだった。しかしその顔にはどことなく、その終わりをわかってもいるようだった。僕は彼が何かを、悲しいような何かをわかってしまっていても、僕にはどうすることもなく、彼が何を見ているのかわからなかった。
「確かに、不思議な距離というものが、ありますね」
エマと接しているときのようなそんな、覚が確かにイアさんとの間であった。
でも、頭の端っこでは、これはただの妄言だと思ってもいた。
僕がこの世界で生まれついて、験をしたことがないからである。
頭でわかっていても、僕という人間は、浪漫を求めていたのかという気づきがあっただけでも、しだけ、僕という人間がわかったような気がしている。
一瞬視界が、クラっとして、あたり一面がに包まれているような錯覚があった。
びぃッ、と、頭の中で電流が走るほどの映像が流れてきた。
それは悲しいほどの暗闇であった。
そして寒いと錯覚してしまうほどに孤獨な空間だった。
僕と誰かが、抱き合っていた。まるで別れを悲しむかのように。
一生、會えないのかもしれないという、悲しみが二人をおそっていたのだった。
どうしようもないことに、僕らは、いいや正確には僕のような人間だけが泣いていた。
そして目の前で僕を抱きかかえている彼は、だた僕のようなものを抱きしめると、やさしく、聖母のように背中をさすっていたのだ。
大丈夫だよと、背中のから伝わるほどの包容力。
「だからこそだよ。だからこそ、私を見つけてねタスク」
耳元で、ささやいてぎゅっと僕のような人間を包み込んでいる。
これは…… なんだ?
「――したの? ねえ、返事して」
誰かが現実の僕に話しかけているようだった。
待ってくれ、でも僕は、まだ見ていたい。
「あなたの居場所は、こちらでしょう」
彼の言葉が、イア・ホーパ・アクェイというの言葉が、頭に流れ込んできた。
そして現実が、僕の知っている現実が確かに目の前で始まった。
「い、今のは……」
僕は荒い息でつぶやいた。彼はそんな僕を見て驚いているようだった。
「急にぼうっとして…… 大丈夫?」
大丈夫たと、彼に返事をして、手で顔を覆い隠すようにした。
よく夢で見るような景だった。
なんで今になって、思い出したんだろうか。
もしかして、イアさんが何かを知っているのか?
「イアさん、何か衝撃的な夢を見たことはありますか?」
すかさず僕は聞いていた。
「夢…… 夢ですか」
彼は遠くを見ているような目になっていた。どこかそれは、安心しているような顔でもあったのである。
そんな顔に僕は、もしかすれば、彼もまた僕と同じような夢を見ているのではないのだろうかと早とちりにも、そんな考えが頭をよぎる。
しかし、すぐさま僕は冷靜になっていた。
そんな前世を信じるような人間ではないと、いままでの僕を鑑みて、黙ったのだった。
だからこそ、彼にそんなことを聞いてしまったのは、とても恥ずかしくなった。
「わかんないですね。あんまり夢は見ない人間ですから」
笑っている。どことなく、開き直ったような言い方でもあった。
「そうですか、あはは、まあね」
僕もまた、自分がなんという質問をしてしまったのか、頭を抱えそうなほどに恥ずかしいものであった。
互いを見て、笑いあってしまった。
この瞬間が、なんともずっと続けはいいのになと思った。
まるでエマと過ごしているかのようでもある。
まてよ…… なんでイアさんの前で、エマのことを思い出すんだ?
この二人どことなく似てい
「もう私も用事があるし…… また合って話そうか」
僕の思考を妨げるように、言ってきたのだった。
僕はすこしだけ考え込んでいたために、反応に遅れてしまった。
「じゃあまたね、タスクくん」
目の前で、彼は僕の顔を覗き込むように近づくと、にこっとえくぼを作って、垂れている髪のを耳へと掛けた。
シャンプーのいい香りが、僕の鼻を刺激して、そしてこう一言。
「さっきのさ、未來でのどちらかを選ぶって話」
近い。かなり近くなっている。
「はい」
僕はどうすることもなくなっていために、ただの返事を返した。
「あなたなら、どっちもし遂げられる。だからあなたの信じる道を進んで」
意味深なセリフを殘した。
そしてこうも付け加える。
「絶対に後悔はある、でもねあなたなら…… 彼を、そして私を………… 解放してくれる」
僕はこの言葉に対して、絶対に彼は、僕が疑問に思っている何かを知っていると確信が持てた。だから口を開いて、聞こうとする。
だがしかし、僕の顔のすぐ目の前に來ていた彼だったために、僕の口をそっとふさぐように、右手の人差し指で、しゃべれないようにやさしく口留めをした。
「それ以上は野暮ですよ」
2秒ほど、僕を見つめてそう言ったのだった。
どことなく、その顔は悲しいようにもうれしいようにも見えたのだ。
そして、ふっと回転をするように、僕のほうへと倒れ掛かっていた制を立て直して、橫目に僕を振り向いた後に、手を振ったのだった。
たしかに、これ以上は野暮だな……
彼は早々と、遠くに行ってしまった。
そんな彼を眺めながら、僕は力盡きたようにベンチでへたり座ったのだった。
彼はなからず“何か”を知っているようだった。
僕にはそれがなんなのかわからない。世界の、いいや僕自のなにか特大級の世界事にかかわるようなことなんだろうか?
謎なんてものは、そうこの謎に関しては僕には考えても考えても、底のない沼のように足元を奪われてしまうものだろう。
一つ切り替えてみた。たとえ何か大きなことがあったとしても……
そうだ――僕は、僕でしかない。
だけれど、いくら前向きな考えになったとしても――
――彼の複雑な顔が、僕の頭の中から離れることはなかった。
◇ ◇ ◇
「どうやら、この世界の……も、うすうすづいていたみたいね」
は、一人夜道を歩いていた。
しかしその周りには誰もいない。まるで誰かに話しかけるように獨り言を発している。
聲は深々と誰もいない夜道に響いていた。
「そうだな……」
彼の耳に一人の男の聲が流れてきた。
その聲の主は彼だけに聞こえるものであり、聲と同時に、通り過ぎたバイクの主でさえ、聞こえるものではなかったのだ。
奇妙な景といえば、そうなのかもしれない。聲の主からは、一つため息がこぼれていた。これは後悔からの念なのか、それとも、違う質を持っている吐息か。
それを確かめないほどに、は、同はしていなかった。だが、先ほどあったあの、青年がどうにかなってしまうのは許せないことであったのだ。
「それでも俺は、アイツ…… いいや、この世界の――に託すよ。間違いでもそれでもな」
聲には覇気がなかった。まるで本當に…… いいやは、これ以上は考えたくもなかった。それが耐えられなかったのだ。
「あなたは間違えている。これらが、この世界があの子、いいや私のんだことじゃない」
拒絶すらじ取れるその聲音に、聲の主は黙って聞いている。
罪をじ取れるような沈黙の後。
「絶対にあなたが幸せになんてなれない。だってあなたは……」
こらえきれなかった気持ちがの中であった。それも斷ち切れないような格であるのやさしさ、いいやこれは甘さだった。
それを自覚してしまったは、口を紡いだのだった。
「わかってるよ、わかってんだよ」
わかってはいない。本當にしいものは自分で摑むものだ。
決してそれは…… たとえ自分と同じ存在に摑ませることでも。
「そんなのでよく、片割れである私につながろうと思ったよね」
それでも私に縋ろうと繋がる々しさ、卑屈さに、反吐が出そうになる。
はを噛み締めた。同時に別人のような質の違いに、頭の管が張り裂けそうなほどのストレスが、激怒が出そうになった。
今すぐにでもこの聲の主を毆りたかった。たとえこの世界を作った神でもだ。
いままで、暴力的なことはしたくはなかった。だがしかし、こいつだけは、この聲の元だけは、どうにも許せはしない。
たとえ何かに裏切られてもだ。かつていた自分の世界に裏切られても。
「一生、あなたはこのままよ」
それから男の聲は聞こえることはなかった。
五月二十日。
夕暮れ時がしだけ早くなっているような気がしていた。気がしていたといってもすこしだけ空には、夕日に照らされた雲があったからだ。
昨夜、作戦が公布された。容は隅一派のグループを排除するというものだった。
何よりも敵陣を、特定することができたからであった。隅一派はいま、日本國、特區フクオカに潛伏をしている。
あくまで裏の存在である僕たちは、火種が出る前には、疑わしき組織は確実に消し炭になっている。
國際條例に乗っ取るわけでもなく、異形のものを排除するために、ヤングサンクションズが出される。どうやら、特別非常事態ということもあり、僕らのチーム、そのほか數組が日本へと遠出することとなった。
日本にある、能力者機関との連合するとも言っていた。どうやらそれほどまでに規模が大きかったということでもあるらしい。
なぜあのネストという男が、僕の前へと登場をしたのか、それはなからず、スタフェリアと僕との因縁があったからにすぎない。
十二支族…… 能力とは別の力を所持している存在達。僕はスタフェリアと対峙をしたことと、ネストとという、敵陣に突っ込んでいくような常識外れの行をしている敵と対峙したくらいである。
というわけで、僕らは日本へと向かうために、長距離輸送機へと搭乗をした。
「そういうわけだ。各自軽く目を通していてほしい」
薄暗い輸送機の中、指令を前に、コの字に一列一列でチームに分かれながら座っている。
僕らのチームは指令の真正面ということであった。
次の人、次の人へと、紙の束を一人一人に回していく。手渡された資料に、日本の文化が記されていた。あくまで隠に行するということでもある。
「質問は?」
ペンタゴンから直接送られてきた指令という存在は、僕たちをクルっと一した後に、そう言ってきた。顔がいというよりも、本當に年端もない僕らが戦えるのかという心配の念もあるのかもしれない。
「民間人の安否などは?」
別チームのさわやかなイケメンがそう言ってきた。
「それについては、ガス処理場の事故であると、昨晩から警報をならして、あらかじめの非難をさせてある」
淡々と答えた。僕たち、能力者とは距離をとりたいようだった。
「ほかは?」
誰も質問をすることはなかった。
そうして続けざまに指令がしゃべりだした。
「この作戦は日本能力者機関との連合チームで開始される。作戦自は、我々が考案して、多なりとも、二組織の會議をする。日本には我々の優位をしっかりと見せつけろ」
小國であると同時に、アジアで唯一、近代國家に戦爭を仕掛けた國でもあったからだ。
そんな國がまたもや武力を所持するとなると、たまったものではないらしい。
どうやら、僕らの國のトップは、日本があまり好きでもないようだった。
それから軽い説明の後に、自由の時間ができたのだった。
「確かお前って日本にいたんだろう」
エマが、僕に対してそんなことを言ってきた。
さっきの指令の言葉には、僕はなんとも思ってはいなかった。
「別になんとも思ってはいないよ。しあるとしたら、あまり日本には帰りたくはなかったな」
そんなに僕の母國が好きということもないわけで、とくにあの言葉にはなんとも思うことがなかったのだ。
「変わってるよなお前って」
「暴力のお前gッ……」
エルボが僕のわきに直撃した。クッ…… なんて暴力なんだ。
「でも、両親の墓には行ってくるよ」
エマの顔は暗くなっていた。僕の両親は、いない。もとは特區カゴシマの児養護施設で育った。だが親というものはいるみたいだった。
そんな僕はヤングサンクションズにったのち、興味本位で、DNA検査をする組織に両親の検索の依頼をしてみた。
すると、一人の男と、の報があった。はじめはわくわくしていたが、どうやら彼らは、東京で死んでいたようだった。
別に思いに更けてしまうほど、考えることでもなかったが、ショックはそれなりにあった。
その両親も二人とも天涯孤獨のであったらしく、僕もそのまま親がいない世界へと生をけたのだ。
でも孤獨というわけでもなかった。
それはここに來てからエマという存在がいるからだけれど。
「そうか、久しぶりにお前の顔をみて喜ぶだろうな」
エマは、できるだけ明るい口調で言ってきたのだった。
「エマも一緒に墓參りに行くか」
僕は彼を見て、そう言ってしまった。めるつもりが、なんとなく言葉が出ていたのだった。
エマの顔が、しずつ理解をしていくと同時に赤くなっている。
「え、一緒に行っていいの?」
そう聞いてきたのだった。挙不審になっている彼の顔は、僕に対して、本當に言ってもいいのかという、あたふたしてもいた。
「いいよ、しっかりと僕の両親にあいさつをしないと」
その言葉を聞いたエマの顔はすこしだけ、嬉しそうだった。
やっぱり僕は、彼のエマのそばにいたいとそう思ったのだった。
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