《不用なし方》第12話

やがて、二人は地元の大學に進學。

一人っ子の亜は自宅から通える大學しか験を許してもらえず、現在在學中の大學に學した。ちなみに彼が優希が同じ大學に學したことを知ったのは學式當日だ。

彼のマンションに通っているとはいえ、昔のようになんでも話せる関係に戻ったわけではない。亜の役目は食事を作ることだけ。作り終われば他に用もなく、早々に帰宅していた。進路について話した記憶もなければ、お互いのプライベートな話をした記憶もない。

しかし、會話らしい會話がなくても、他人の眼を気にしなくていい二人だけの空間は亜にとって心地よかった。

彼からも合鍵を預けられる程度には信用されていると信じていた。

しかし……大學にって間もなく、彼は自分が彼にとってトクベツな存在などではないのだと思い知らされることになる。

大學が休みの土曜日、なんとなく思い立って優希のマンションへと向かった亜は、室から聞こえてきた艶っぽい聲に揺した。

 経験はなくとも、なにをしているのかくらいは分かる。扉の開け放たれた寢室で絡み合う男の姿を見て頭が真っ白になった。

「え、ちょっ……やだ、誰?」

の存在に気付いたが慌ててを起こす。

「あぁ、家政婦みたいなもん」

優希の言葉を聞いて、その程度にしか見られていなかったことを知る。確かに、食事を作ったり、家事を手伝ったりするだけだ。家政婦と言われても仕方がない。

「あぁ、もぅ……なんかやる気が失せたから帰るわ」

は一糸纏わぬ姿でベッドから下り、散らかった服の中から自分のを拾い集めて素早くに著けると、すれ違いざまに亜を睨んで帰っていった。

「休みの日、頼んだ覚えないけど?」

「あ……ごめ……」

ベッドにいる優希は上半になにも纏っていない。目のやり場に困った亜は視線を逸らして床に向ける。

「休みの日は用事あるって言ったじゃん」

「あ……リハビリだと思って……」

「リハビリ? 治らないの分かっててやる意味あると思う?」

優希の言葉は投げやりで、亜が痛む。

「無駄ってことは……」

「うるせぇ! そもそも、こんなことになったのはお前のせいだろ!」

のような言葉が亜の心を深く抉る。

院中の優希に花瓶を投げられたときにも同じ言葉を聞いた。それほどまでに自分が憎いのだろうと、はその言葉をただけ止めるしかなかった。

「お前が……通らなかったら、こんな怪我することもなかったんだ!」

拳で足を叩く優希の傍に駆け寄って、亜はその手を摑んだ。

「やめて……足が痛いよ。……ごめんね、ごめんなさい……ごめんなさい……」

優希の拳を亜の涙が濡らす。

「悪いと思ってるなら、態度で示してみろよ」

「え?」

なにをしたらいいのかと尋ねようとした亜の視界が勢いよく回って景が一変する。

見下ろしていたはずの優希にいつの間にか見下ろされていた。自分が押し倒されたのだと気付いたのは彼の背後に天井が見えたからだ。

「ゆ……っ」

彼の手が服のボタンを外し始めても、抗うことさえできなかった。そうしてはいけない気がしたのだ。

そして……気持ちがわることなく二人は馴染みの一線を越えてしまったのである。

「……優希くん」

走馬燈のようにい頃からの自分達の姿を客観的に見て、彼の名前を口にしたとき……亜の頭の中が真っ白な濃い霧に包まれた。

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