《不用なし方》第25話

の世界は狹い。

それは攜帯電話の電話帳の登録件數が如実に語っていた。

以前使っていた攜帯電話にどれだけの件數が登録されていたのかは分からないけれど、おそらくそれほど數に違いはないと思っている。

大學から帰宅し、自分の部屋で考え込むのは事故以來日課のようなものだ。機に向かって課題をやっているように見せかけて……自分の中の疑問をノートに書き出している。

大きなことも小さなこともあるけれど、疑問は毎日増えていくばかり。なにひとつ解決していない。

大學にいるときは花か佳山、もしくは二人ともが傍にいることが多い。けれど、亜には二人が周囲を警戒しているように見えて仕方がない。どうしてなのかは分からない。上手く説明できないけれど、キャンパスにいるときの二人は明らかに張している。

そのことから、大學にも失った記憶に関するなにかがあるだろうとじていた。

花に預けた薬に関しては、調べるのに苦労しているのか、まだなにも教えてもらえない。意を決して自分でネット検索し、薬効が生理痛の緩和だけでないことを知ったけれど、生理痛が酷くないのに薬を処方してもらう理由を考えて……その可能に顔を強張らせた。

今まで異際したことはないはずだ。想いを寄せている人もいない……と思う。もし、際している人がいるのならば、會いにきてくれてもおかしくないけれど……院中を含め、今のところ佳山以外の親しい異はいない。

もし、自分ならば……人が事故に遭ったと知ったら、病院に駆けつけるだろうし、毎日でも通うだろう。

しかし、亜院している間にお見舞いにきたのは花と佳山、そして両親。何度もきてくれたのはその四人だけだった。

考え込みながら歩いていると、視界が開けてきた。

は吸い寄せられるようにそちらへと進んでいく。見えてきたのは陸上のトラックといわれる周回走路。陸上部員と思われるユニフォームを著た人たちが楽しそうに走っているのを見て、亜がチクチクと痛んだ。

どうしてが痛みを訴えてくるのか分からない。陸上をしている人に知り合いはいないはずだ。

小さな頃は活発でいつも男の子と遊んでいた記憶が亜にはある。けれど、その頃に仲良くしていた人たちの顔も名前も思い出せない。卒業アルバムを見れば思い出すかもしれないけれど……ヒントになりそうなものはすべて隠されてしまった。

専業主婦の母が家を空けることはほとんどない。そうでなくとも、亜が事故に遭ってからは絶対に家で彼の帰宅を待っている。家の中を探し回ることは不可能だと思っていいだろう。

寫真に頼れないのならば自分のなかに眠っている記憶に頼るしかない。

佳山の言葉を思い出したのだ。"失くしたっていう記憶は……やっぱり栗林さんの中に殘ってるんだと思う"彼はそう言った。ラウンジで賑やかな集団がやってきたときのことだ。亜は覚えていないけれど、賑やかな集団が苦手らしいは恐怖に近いものをじて震えていた。

そう……このは覚えているのだ。

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