《不用なし方》第38話
年が明け、亜は家族三人で穏やかな正月を迎えていた。
三人で初詣に出掛け、お參りしてお守りを買っておみくじを引いて見せ合って木に結んで……帰るために參道を歩いていると、正面から見覚えのある人が近づいてくることに気づいた。
だ。家族も一緒らしい。
聲を掛けたい気持ちはあるけれど、忘れてしまった人たちとの流を母が嫌がっていることは分かっているので、ワザと視線を逸らす。
「あ」
たちに気付いたのか、母が小さな聲を上げた。
その聲に相手家族も気付いて気まずい空気が流れる。亜は母がどんな対応をするのか靜かに見守った。
「あ……あけましておめでとうございます」
戸いながらも聲を掛けたのは母の方からだった。
「あけましておめでとうございます……昨年は大変……」
「あの、新年早々申し訳ないのですが……しお時間をいただけませんか?」
想像もしていなかった母の言葉に亜は目を丸くした。父も相手家族も亜と同じ反応をしている。
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母が父やの両親と共に離れていくと、その場には亜と優希との三人だけが殘された。
優希は今日も帽子を目深に被っている。
「あけましておめでとう、亜さん」
「明けましておめでとう、くん……と、お兄さん」
亜の言葉に優希のが小さく震えた。
「母さんたちなんの話をしてるんだろうね?」
「分からない……けど、多分悪いことじゃないと思う」
年末年始、亜は両親と卒園アルバムを見ながら過ごした。
最初こそ張した面持ちだったけれど、母の表は話しているうちに徐々にらかくなっていった。
「年末にね、お母さんが卒園アルバムを出してくれたの。小さいときの記憶なんて元々あるはずもないのにね」
重要なのは母が意図的に隠していたアルバムを出してくれたという気持ちの変化だ。
「一歩前進、ってじなのかな?」
「……そうだね」
の笑顔に小さく頷いた亜だったけれど……次の瞬間、覚悟を決めたように顔を上げた。
「くん、私が大學で倒れた日……岡部さんとお母さんがなにを話していたのか知らない?」
「へ? 岡部さん?」
「そう、廊下で話してたはずなの。その後から、お母さんの様子が変わった気がして……」
「……ごめん、ちょっと分からないや。あのとき、おばさんと會わない方がいいと思って岡部さんに全部お願いしちゃったんだ」
そういえば……目を覚ましたとき、醫務室にの姿はなかった気がする。
「あ……戻ってきた。どうしようか……取り敢えずワザとらしく自己紹介でもしとく?」
は両親の様子をしっかり見ていたようだ。互いの両親が聲が屆くかどうかという距離まで近付いてきたのを確認してから自己紹介を始めた。
「俺、です。現在高校三年生で、この春から亜さんと同じ大學に通う予定」
「えっと……栗林 亜です」
「うん、知ってる」
はニッコリと笑顔を返してきた。
「あら、自己紹介?」
の母がと亜のやり取りを見て微笑んだ。窘めるじもない。
「だって、亜さん覚えてないから初対面みたいなものでしょ?」
「だったら、あなたもするべきじゃないの?」
の母の視線が優希に向けられる。
「え?」
意外な言葉に、優希は目を白黒させた。
自分は関わらない方がいいと思って、亜との會話にはまったく口を挾んでいない。自己紹介もするつもりはなかった。
優希は問うように亜の母を見る。亜の両親が目の前にいるのだから、自分の一存では決められない。
亜の母の首が縦に振られる。……橫ではなかった。自分の名前を告げてもいいと言ってくれたのだ。
接することを嫌がっていたはずの亜の母が自己紹介を許すとは思わなかった。
嬉しさよりも戸いの方が大きいけれど……このチャンスを生かさなければ亜に知ってもらう機會は遠退いてしまう。
優希は亜を直視できずに顔を逸らして小さな聲でなを告げた。
「……優希」
かすかに聞こえたその名前に亜の心臓が大きな音を立てる。
「……え?」
を押さえる亜の目から涙が零れ落ちた。
「あ……亜さん?」
狼狽えたようなの聲に顔を上げた優希は、亜の瞳から流れ落ちる涙を見て固まった。
「亜……?!」
亜の母親が彼に駆け寄ってきて気遣うように背中をる。
「あ、れ……? なんで……?」
心が泣いている。悲しくて、寂しくて、申し訳なくて……涙が止まらない。 
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