《不用なし方》第42話
「なにか分かればいいね」
「……うん」
佳山の言葉に返事をしながら亜が立ち上がる。それを確認してから花も席を立つ。二人に付いていかないという選択肢はない。
空き教室を出て階段を下り、外へと向かう。
岡部が母と話していた容を教えてくれるかどうかは分からない。けれど、なにかしらのヒントは得られるような気がした。
三人がグラウンドの近くまでやってくると、岡部が気づいて小さく手を上げながら三人の許に近付いてきた。
「修おさむ」
岡部は佳山だけを見ている。つまり……と、亜と花は顔を見合わせた。
「……佳山くんって」
「オサムっていうんだ? 今初めて知った」
「え、今それ言う?」
二人の言葉に佳山は一瞬困した顔をしたけれど、すぐに目的を思い出して岡部と向かい合った。
「文哉ふみやさんにちょっと訊きたいことがあるんだけど」
どうやら、二人は下の名で呼び合うくらいに親しいらしい。
「なんだよ、改まって?」
三人を見ながら岡部が首を傾げる。嫌そうな顔はしていない。
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「年末に栗林さんが倒れたとき、一緒にいたよね?」
「あぁ、たまたまな」
「そのときの……」
「ちょうどこの辺だったかな。急に頭押さえて……」
岡部は一人で頷きながら真下の地面を指差す。
「訊きたいのは、醫務室に運ばれた後……」
「非常勤の醫さんが親さんに連絡したんだけどそれけど、それがどうした?」
佳山の質問を最後まで聞くことなく、彼の言いたいことを予測しながら答えていく。そのせいで回答が微妙にズレている。これが意図的なのか天然なのか亜には分からない。
これが意図的なのか天然なのか亜には分からない。
「文哉さん」
佳山が岡部のなを紡ぐ。の読み取れない聲音で。
佳山にまっすぐに見據えられて、岡部は居心地悪そうに視線を彷徨わせた。
「栗林さんのお母さんとなんの話をしたのかな?」
ニッコリと笑みを浮かべる佳山を見て、岡部の顔が引き攣る。
「いや……あれは、なんていうか……いい方向に転がればいいなって思って吐いた噓で……悪意はまったく……」
「それは、どんな噓なのかな?」
黙を許さない笑みに岡部は顔を強張らせている。
「俺、詳しい事とか知らないし……だから、自分のためじゃない誰かのために走ってる気がするって……」
「で?」
人の話を聞いているようで聞いていない彼の言葉を笑顔で聞き出す佳山が怖い。
亜は黙って二人を見つめた。
「空を見上げる癖があるから、もしかしたら亡くなった誰かのことを思ってるのかなぁって……。あ、勿論生きてるのは分かってるし、誰のことかも分かってるんだけど、なんていうか……」
二人の話を聞いていても誰のことを話しているのか分からない。けれど、花と佳山は分かっているようでなにも問い返さない。
「……なるほどね」
「お……俺、なんかヤバいこと言った?」
「まぐれとはいえ、ファインプレーだったと思うよ」
佳山の言葉に岡部が破顔した。亜にはその様子がなんだかい年のように見えて、思わず笑ってしまった。
「亜?」
「あ……ごめんなさい。おかしくて、つい……」
三人の視線が自分に向けられていることに気付いた途端に恥ずかしさが込み上げてくる。
「やっぱり笑顔がいいね、栗林さんは」
岡部が亜を見てニッコリ微笑むと、佳山が殺意を含んだような視線を向けた。
「え? あ……なんていうか、一般論? の子は笑顔が一番って言うでしょ? ね?」
慌てた口調で言葉を付け足す岡部を見て、花と二人でまた笑う。
「隨分と楽しそうだな、岡部?」
機嫌の悪そうな第三者の聲がすぐそばで聞こえて四人がきを止める。
もしかしたら笑い聲がうるさくて練習の邪魔になったのかもしれない……そう思って振り返った亜はそこに立つ人を見て瞳を瞬かせた。今日は帽子を被っていない。
もしも変わってしまうなら
第二の詩集です。
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