《不用なし方》第44話

二月のイベントといえば……バレンタインである。

しかしながら、大學は長期休暇中のためチョコを配るのは難しい。

「う~ん……」

どうしたものか、と考えていると攜帯電話が小さな音を立てた。メッセージが屆いている。

送ってきたのは花だ。作するとバレンタインデーの予定を尋ねる文が表示された。

に予定らしい予定はなく、時間を持て余しながら退屈な毎日を送っている。

「お母さん、明日キッチン使ってもいい?」

「あら、どうしたの?」

「花ちゃんが友チョコ換しようってメッセージを送ってきたの」

「あら」

「市販のでもいいかもだけど、やっぱりなにか作りたいなって思って」

「構わないわよ。あ、お父さんの分も作ってあげてほしいわ」

「分かった。じゃあ……まずは買いかな」

なにを作ろうかと考えながら部屋に戻って著替え、バッグに攜帯電話と財布をいれて階段を下りる。

「お母さん、ちょっと材料買いにいってくるね」

時間を持て余しすぎていたのだろう。やることができた途端に楽しくなってすぐに行したくなる。

家を出て様々なチョコレート菓子を思い浮かべながら駅前の大型スーパーへと向かっていると、前方に見覚えのある後ろ姿を見つけた。

聲を掛けるには々距離があると思っていると、目の前の橫斷歩道が赤に変わって距離がむ。

くん」

背後から聲を掛けて背中をポンと叩く。振り返ったが亜を見て破顔した。その笑顔を見るだけで気持ちが和んでいくから不思議だ。

「亜さん」

「こんにちは」

話し掛けながら彼の隣で足を止める。

「どこかに出掛けるの?」

の問いに亜は首を縦に振った。

「うん、駅前まで買いに」

「あ、同じだ、せっかくだから一緒にいこうよ」

「うん」

の人懐っこい笑顔に頷く。

「亜さんはなにを買いにいくの?」

「お菓子の材料だよ」

「お菓子? あ、もしかしてバレンタイン?」

「そ」

「いいなぁ、俺もしい」

「構わないけど、味の保証はしないよ?」

「ははっ、亜さん料理上手だから心配してないよ」

さらっと言われた一言が亜の耳に引っ掛かる。

……料理上手って、どういうこと……?

くん、私の料理食べたことあるの?」

「え? あぁ、亜さんが高校生のときにクッキング部で作ったお菓子を何度かもらったことあるよ」

確かにクッキング部に所屬していたし、お菓子も結構作った記憶がある。

誰にあげたのかは覚えていないので、亜にはの言葉が噓なのか真実なのかは分からなかった。 

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