《不用なし方》第47話
「え?」
亜は面識があると言ったけれど、花にはこちらを見ている人と會った記憶はない。
「ごめんね、待った?」
「ううん。兄ちゃんの練習を眺めてたし、佳山さんも話し相手になってくれたし」
「……兄ちゃん?」
花が陸上部の練習しているフィールドに眼を向けた。
「あ、前に亜さんと一緒にいたお友達さんですよね?」
前に亜と一緒にいた? 大いつも一緒にいるけれど……?
「あ、えっと……亜さんが大學に復學した直後に駅で會ったんですけど……覚えてないですよね?」
は苦笑して頭を掻いた。
「くんは、彼の弟だよ」
待っている間に自己紹介をしたのだろう、佳山が視線を向けた先には優希がいた。フィールドから睨むように佳山を見ている。
「……え?」
花はあんぐりと口を開けている。優希に弟がいたことを聞いたことがなかったからだ。
岡部も優希の視線の先にいる亜たちに気がついたようだった。優希をその場に殘して駆け寄ってくる。
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「本當だ、呼ばなくてもきた……」
がクスクスと笑っている。前以て佳山に彼を呼んでほしいと話してくれていたのだろう。
「修、なにしてんの? つか……なに、この面子?」
「ここを待ち合わせ場所にしてただけだよ」
佳山は岡部の問いに素っ気なく答えて亜にウィンクした。
「あ……あのっ」
 「あ、栗林さん、その後の調はどう?」
お禮を述べようと口を開いた亜の聲に重ねるように岡部が聲を掛けてきた。
「あ、大丈夫です。えっと……その節はご迷をお掛けしました」
「迷なんかじゃないよ。元気でいてくれたらそれで充分」
亜は笑顔で頷く岡部から視線を外し、傍のベンチにバッグを置いてその中に手を突っ込んだ。
「あの、お詫びというか……お禮というか……大したものじゃないんですけど……」
「ん?」
箱を一つ取り出して、取っ手の付いた紙袋にれてから岡部の前に差し出した。
「え、俺に?! マジで?! すっげぇ嬉しい! ありがとう、栗林さん!」
「おやつをもらった犬みたいだね、文哉さん」
心底嬉しそうな顔をしている岡部を見て佳山が笑う。
「これは花ちゃん」
同じように紙袋にれて花に手渡す。
「俺もしい!」
「うん、くんの分もちゃんとあるよ」
と佳山にも渡すと、バッグの中に二つ殘る。助けを求めるようにを見上げると、彼はニッコリと微笑んだ。
「大丈夫、すぐにくると思う」
亜の言いたいことを察したようで、はフィールドへと視線を向けた。の視線の方向を見ると、怖い顔をした優希がすぐ傍までやってきていた。
「お前ら……ここでなにをしてる」
「バレンタインのチョコもらったんだぜ、いいだろぉ」
ご機嫌な岡部を優希が殺気を含んだ視線でる。一瞬にして岡部の表が凍り付いた。
「……お前もか」
「うん。この間會ったときにお願いしちゃった」
優希の分も用意してあることは言うつもりがないようだ。自分で言えということなのだろう。
「あ……あの」
「あ?」
「ゆ……優希さんの分も、あるんです……けど」
「は?」
予想していなかった亜の言葉に優希が変な聲を出した。その様子をみんながニヤニヤしながら見ているような気がするのは……多分、勘違いではないだろう。
「ご迷じゃなかったら、これ……倒れたときとかクリスマスとか初詣のときとか、たくさん迷掛けてすみませんでした」
「おぅ……サンキュ」
亜が差し出した紙袋をけ取って、気まずそうに禮を述べる優希の姿にが笑う。
「あと、練習の邪魔をしてしまって……すみません」
「うぉっ、すげぇ! これ手作り?! 売りじゃないの?!」
頭を下げる亜の頭上から岡部の興したような聲が降ってくる。顔を上げると、彼は箱を開けて瞳を輝かせていた。
岡部の持っている箱をみんなが覗き込んでいる。
「味しそうだね」
「あ……これ、珈琲のやつだ」
が嬉しそうに亜を見た。
「合ってた?」
「うんっ」
の返事にホッとした亜だったけれど、岡部の箱の中を見た優希は何故か揺したように視線を泳がせている。それが亜を不安にさせた。
「エスプレッソケーキとケークサレとチョコレートサラミか……被らなくてよかったぁ」
花が視線を遮るように亜の目の前にクッキーとカップケーキのった包みを差し出す。
「亜と佳山くんのしか準備してないんだけど」
「あ、味しそう。ありがとう、花ちゃん」
「ねぇ、もう一つ箱が殘ってるけど、誰にあげるの?」
亜のバッグに一つ殘った箱を見つけてが問う。
「あぁ……お世話になった醫務室の先生に渡したいなぁって思ったんだけど……」
さらっとそんな言葉が飛び出して、亜はかに自分の言葉に驚いた。
「じゃあ、醫務室に寄ってみる? もし、先生がいたらお茶でもご馳走してもらおうよ」
「あ、うん。……あの、練習頑張ってください」
花は優希から亜を引き離して半ば強引に連れ去っていく。
「松澤……理由は訊かないけど、そんな顔を栗林さんに見せないでほしいな。彼が不安になってる」
「あ? 俺がどんな顔してるって?」
「彼を不安にさせる酷い顔だよ」
それだけ言って佳山は二人の後を追った。
「……お前の仕業か」
「なにが?」
問い返された優希はなにも答えずに練習へと戻っていく。
「弟くん、アイツどうしたん?」
「このエスプレッソケーキ……バレンタインに亜さんが毎年作ってくれてたものなんです」
は岡部の問いに答えながら悲しげな瞳で兄の背中を見つめていた。
50日間のデスゲーム
最も戦爭に最適な兵器とはなんだろうか。 それは敵の中に別の敵を仕込みそれと爭わせらせ、その上で制御可能な兵器だ。 我々が作ったのは正確に言うと少し違うが死者を操ることが可能な細菌兵器。 試算では50日以內で敵を壊滅可能だ。 これから始まるのはゲームだ、町にばらまきその町を壊滅させて見せよう。 さぁゲームの始まりだ ◆◆◆◆◆◆ この物語は主人公井上がバイオハザードが発生した町を生き抜くお話 感想隨時募集
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