《不用なし方》第52話
「あ……私はここで実習をさせてもらっていて……」
「俺はただのメンテナンス」
さらっと答える優希の言葉に亜は引っ掛かるものをじた。
どこかで、誰かが言っていた気がする。
彼にはブランクがある、と。何年も走っていなかった、と。
……頭痛はしない。記憶を失ってから聞いた言葉だからなのかもしれない。
もしかして……怪我をしていたのだろうか?
亜は口に出そうとした言葉を慌てて飲み込んだ。あまりにも無神経で失禮な質問だと気付いたからだ。
口に出そうとした疑問はとてもデリケートなものだ。気になったからと、考えなく尋ねるのは躊躇われた。
「じゃ、いきましょうか」
大沼が駐車場に向かって歩き出す。優希のことも送るつもりなのだろう。
建を出て関係者駐車場にやってくると、駐車している車の一臺がライトを短く點滅させた。高級の漂う國産車だ。
大沼は運転席に乗り込むとすぐにエンジンを掛けた。
「乗れよ」
優希は當然のように後部ドアを開けて乗るように促してくる。彼の車に乗るのは初めてではないのだろう。
「あ、失禮します……」
「どうぞ~」
乗り込むとドアが閉められて反対側から優希が乗り込んできた。
言ってくれたら奧に詰めたのに……。
亜が申し訳なく思いながら優希を見上げると、視線をじたらしい優希と眼が合った。
「運転席の後ろが一番安全だからな」
「え?」
「ちょ……なにそれ? 聞き捨てならないわ。私の運転が信用できないっての?」
「あんたの運転が上手いのは分かってる。けど、気を付けてても巻き込まれることだって……っ……なんでもない」
優希は言葉を途中で切ると、左側の窓の外へと視線を向けた。なんとなく気まずい空気が車に流れる。
「栗林さん、寢てていいわよ。著いたら起こしてあげる」
「え、でも……」
亜は自宅の住所さえ口にしていない。
「道案はいるから大丈夫。それよりもし眠ったほうがいいわ。その顔で帰ったら親さんが心配するわよ」
大沼とバックミラー越しに視線がぶつかる。
自覚はないけれど、指摘されてしまうほど顔が悪いのだろうか?
亜はし不安になった。顔が悪いことを母に気付かれると困る事態になりそうな気がしたのだ。
眠ることで多でも改善されるのならば今は彼の言葉に甘えて眠ったほうがいいのかもしれない。
隣に座る優希を見ると既に腕を組んで目を閉じている。彼が道案をするのではなかったのだろうか?
「心配しなくても大丈夫よ。ある程度の道は知ってるから」
優希と大沼が親しい間柄だということは先程の會話でなんとなく気付いていた。おそらく送っていくのも初めてではないだろう。
そう思った瞬間、がチクッと痛んだ。どうしてなのかは分からない。
車が靜かにき出す。運転に集中しているのか大沼は無言で、優希は眠ってしまったのか俯いたままだ。
運転をしてもらっているのに後部座席で二人とも眠ってしまうのはなんだか申し訳なくて、頑張って起きていようと思う亜だったけれど、心地よいピアノ曲が瞼を重くしていく。
「おやすみなさい」
遠くで大沼の聲が聞こえた気がした。
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