《不用なし方》第59話
その後、二人は海獣ショーを見たり、イルカやカワウソとれ合ったりした。軽く食事をしてから買いをしていると、やがて空のが変わり始める。
楽しい時間はあっという間だ。
「疲れてないか?」
朝早くから夕方まできっぱなしなので、さすがに彼のが心配になる。
「大丈夫ですよ。優希さんこそ私に付き合ってばかりで疲れてないですか?」
笑顔で答える彼の言葉に噓はなさそうだ。それどころか逆に心配されてしまっている。
「いや、俺は俺で楽しんでる」
「……本當ですか?」
「こんなことで噓吐いてどうする」
亜とはし違う楽しみ方をしているだけで、優希の言葉も決して噓ではない。
「なら、いいんですけど。あ、そこの店見てもいいですか?」
亜に手を引かれて店にる。正直、優希から見ればどの店に置いてある商品も同じものにしか見えない。
片手で商品を選びにくそうにしている亜を見て、優希が繋いでいた手をそっと離した。ぬくもりがあっという間に消えていく。
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「これ可いなぁ……これも可い……どうしよう、迷っちゃうなぁ……」
両手が自由になったことに気付いていない様子の亜はなにやら真剣に悩んでいる。その姿をし離れた場所で見ながら優希は苦笑した。
「悩んでるお前の方が可い、とか思ってるんでしょ。ムッツリ野郎」
急に真後ろから聞こえた聲に優希が顔を顰める。
「てめ……」
「らしくもなく、健全なデートですこと」
「なんでここに? 呼んでねぇだろ」
「私がどこにいようとあんたに関係ないでしょ」
花は優希の背後から視線を合わせることなく答えた。
「え?! なんでここにいるの?!」
聞き覚えのある聲に顔を上げた亜は、優希の背後にいる人に気付いて目を瞬かせる。花は自分に気付いた亜に極上の笑顔で手を振った。優希に対する態度とは雲泥の差だ。
「やっほぉ、亜。でも、ここにきたのは私だけじゃないんだなぁ」
「こんにちは、栗林さん」
「何故か俺もいるんだなぁ」
呼ばれたように佳山が近付いてくる。その後ろには岡部までいた。
「え……どうして?」
亜は今日いる場所を教えてはいない。晝間にメッセージで予定を訊かれたけれど、今日は出掛けているので會うのは難しいと返信しただけだ。
「運転手として俺を呼び出すってのはどうかと思うけどな」
「お前を呼んだのは俺じゃない。つか、お前ら全員呼んでねぇ」
「文哉さんしか車持ってる人がいなかったんだよ」
岡部を連れてきたのは佳山の獨斷らしい。けれど、花と佳山に居場所を知らせたのは優希のようだ。亜の眼には佳山と優希が連絡を取り合うほど仲がいいようには見えなかったけれど……男の友というのはには理解できないものなのかもしれない。
亜は分からないなりにそう結論付けた。
「今、二人のお土産を選んでるところだったんだ」
「え、そうなの? じゃあ、お揃いのもの買おうよ」
花の登場で亜と過ごす時間は奪われてしまったけれど、優希が殘念に思うことはなかった。
「隨分過保護だな」
優希は隣に立つ佳山をチラリと見た。
「僕たちというよりも、岸さんが心配なんだよ」
優希は亜を連れ出すために前以て花にアリバイ工作を頼んでいたのだ。その際に行き先を訊かれて馬鹿正直に答えてしまったのである。
勿論、合流する予定などなかった。
『亜には行き先を緒にしてるんですけど、おばさまに心配させたくないからちゃんと伝えときますね』
亜と優希がメッセージのやり取りをしている間に花が亜の母親に連絡をれていたのである。
それによって當日出掛ける際に掘り葉掘り訪ねられることもなく彼は外出することができたのだ。
「何時くらいからきてた?」
「晝頃かな」
おそらく遠くから見られていたに違いない。
優希はおかしな行を取らなくてよかったと心ホッとしていた。
「優希さん」
「ん?」
笑顔で近付いてきた亜が小さな紙袋を優希の目の前に差し出した。
「今日のお禮です」
「いや、だから……」
お禮のために連れてきたのに、そのお禮をされるのはなにか違う気がする。優希は參ったと頭を掻く。
「これは佳山くんの」
「え、僕?」
佳山に同じ大きさの紙袋を渡したのは花だ。
「違いだけどみんなお揃い」
花が攜帯電話にぶら下げたストラップを揺らす。
「今日の記念です」
に押し付けられて優希はその紙袋をけ取った。
「サンキュ」
今まで使っていたストラップは、以前亜が大學で倒れたときに握らせたのだと思い出して、優希は掌の上の紙袋を見下ろした。
「岸さん、俺のは……?」
「勿論ありますよ」
花は岡部にも小さな紙袋を手渡す。
「ありがとう、岸さんっ!」
「いいえ、どういたしまして。ってことで、帰りも運転お願いしますね。亜、あっちもいってみようよ」
「あ、うん」
亜が花に手を引っ張られながら隣の店へとっていく。
「っとに、変わんねぇな……攜帯がストラップ付けられない機種だったらどうする気だよ」
手元を見つめながらの優希の呟きは、亜の背中に屆くことなく消えていった。
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