《不用なし方》第62話
「はい、そこ! 手を握らない! まぁったく、油斷も隙もあったもんじゃないっ!」
重ねられた手から亜の手を引き抜いて花が佳山を睨み付ける。
佳山の言葉はおそらく事実なのだろう。
亜の眼にも母がどこか優希を避けているように見えていたし、正月に神社で會ったとき、両家の間に流れるぎこちなさや気まずさは亜にもじ取れた。
どうして彼を良く思わないのか、亜が彼に関わることを嫌がるのか、その理由は分からない。失った記憶に関係があるような気はしているけれど、尋ねたところで正直には答えてもらえないだろう。
「……そっか。じゃあ、あとでお禮の連絡する」
「それでいいと思うよ」
佳山は亜を安心させるようにニッコリと微笑んだ。
「亜……亜は今日、私たちと一日中一緒にいたことになってるから。アイツのことはおばさまには緒ね」
「え?」
いつの間にそういう話になっていたのだろう?
亜は説明を求めるように花を見上げた。
「元々、頼まれてたの」
「え?」
「亜が出掛けるとき、おばさまになにも訊かれないのはおかしいって思わなかった?」
花の言葉を聞いて初めて亜はその不可解さに気付いた。
どうして、今の今までそのことに気付かなかったのか……その理由は単純明快だ。
優希にわれて、外出できる理由ができたことに安堵すると同時に楽しみで、そのと同じくらいに異と二人で出掛けることに張していたからである。
出掛けると母に告げてお小遣いを貰う際も、なにも訊かれなかったことに安堵するばかりで、理由を訊かれなかったことを不思議に思う余裕はなかった。
彼が出掛ける際には、必ず"いつ、どこに、誰と、なにをしにいくのか、いつ帰ってくるのか"と、細かく訊かれるので、冷靜であれば気付けたはずだ。
「……」
「アイツも私たちを頼りたくなかったと思うけど、こうするしかなかったんだろうね」
「予定では最寄り駅で會うことになってたんだけどね」
佳山が困ったように微笑むと、花は亜の両肩を摑んで自分の方へと彼のを向けた。
「亜を一日中連れて歩いて自分だけ楽しんで最後に送る役目だけこっちに任せるっておかしいでしょ? ズルいと思わない?!」
最初から優希は自分を最寄り駅で花たちに託すつもりだったと告げられてが痛んだ。
「そっか……決まってたんだ……」
吐息をらすように弱々しく言葉が零れ落ちる。
「栗林さんと栗林さんのお母さんのことを考えてそうしたんだと思うよ」
優希の不用な優しさをじて目頭が熱くなっていく。
「っていうか……私たちに送らせるだけってことは、亜に噓を吐かせることになるじゃない?」
「岸さん?」
「朝からではなかったけど、後半は私たち一緒だったじゃない。これって噓じゃないでしょ?」
花は亜に噓を吐かせたくなかったのだ。母親との関係が昨年よりはいくぶんマシになってきたとはいえ、未だぎこちないことは分かっているので、これ以上余計な疑いを持たれたくない。自分たちが信用されなくなったとき、彼の母親がどんな行に出るのか予測できない。それが一番怖かった。
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