《不用なし方》第63話

「晝頃からの行は申し訳ないけど全部見てるから、ある程度のことには話が合わせられると思うよ」

手を繋いではしゃいでいる姿を見られていたと思うと、途端に恥ずかしくなってくる。

「あ……あれは、あのっ……はぐれないようにって……」

「別に、手を繋いでたくらいどうってことないでしょ。小學生じゃあるまいし」

花の瞳にからかいのが見えた。

「あ、あそこに立ってるの……栗林さんのお母さんじゃない?」

岡部が前方に立つを見つけて指を指す。亜の自宅前だ。

「あ……そうですね」

家の前で自分の帰りを待つ母の姿に思わず溜め息がれる。

車がスピードを落として亜の自宅前に停車した。

「おばさま、ただいまです~」

後部の窓を開けて花が笑顔を向ける。

「ね……岸さん?」

まさか、車で帰ってくるとは思っていなかったのだろう。慌てた様子で運転席へと視線を向ける。誰が運転しているのか気になったようだ。

「どうも、以前お會いした岡部です」

人の良さそうな笑顔で亜の母に挨拶をすると、岡部は ギアをパーキングにれてサイドブレーキを踏んだ。

「あ……陸上部の……?」

「そうですそうです。バレンタインデーに娘さんからチョコを貰ったので、ホワイトデーのお返しとして今日は運転手してました」

岡部が母に話し掛けている間に花と亜が車から降りた。

「ただいま」

「……おかえりなさい」

「おばさまにお土産です」

花がレジャー施設のロゴがった袋を差し出す。

「私たちもお揃いでストラップ買っちゃいました」

攜帯電話に取り付けたストラップを花が揺らすと、岡部と佳山も打ち合わせをしていたかのように攜帯電話を揺らした。

「許可してくれてありがとうございました、凄く楽しかったです」

「それは……よかった、わ。亜も楽しかった?」

「うん、凄く楽しかった」

優希と二人で過ごした時間も、五人で過ごした時間も本當に楽しかった。……帰りのことを除けば。

は殘念に思う部分を考えないようにして大きく頷いた。その様子に母の表がほんのし解れる。

「あ、わざわざ送ってくださってありがとうございました」

「いえいえ、俺たちも楽しかったです。あ、岸さん乗ってくれる? そろそろかすから」

「はいはぁい」

こちらに向かってくる車に気付いたようだ。

「じゃ、また」

「あ、ありがとうございました」

車の中から三人が手を振り、亜と母はゆっくりき出した車に向かって頭を下げた。

「寒くなかった?」

「大丈夫だよ。あそこ、ほとんど屋展示だもん。日が暮れてからはちょっと寒かったけどね」

不意に母が亜の手を握ってきた。一瞬不思議に思ったけれど……彼の手が溫かいことを確認したのだと気付くまでに時間は掛からなかった。

「たくさん歩いて疲れたでしょう? お風呂でを解してきたら?」

「うん、そうだね」

はモヤモヤしたものをじつつ頷いて母とともに家にった。

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