《不用なし方》第65話

四月になって新生を迎えたキャンパスは學園祭並みに賑やかだ。サークルの勧があちらこちらで行われている。

「春だねぇ……」

窓から外を眺めながら花が呟く。

「勧風景で季節をじるのもどうかと思うけど」

「新生は初々しいものでしょ。なのに……なんで當然のようにここにいるのかな、この子は?」

振り返った花の視線の先には、當然のように亜の隣を陣取るの姿があった。

「やっぱり、知ってる人がいると安心するじゃないですか」

「地元みたいなもんだし、同級生の友達もいるでしょうが。なんでうちらのところにくるのよ?」

「亜さんの傍って心地いいんですよね」

「亜も迷なら迷ってちゃんと言いなさいよ」

花は何故かの存在が気にらないようだ。しかし、亜は特に迷だとは思っていない。

「私は……知ってる人が傍にいてくれるのは心強い、かな」

はなんだか弟のようで可らしく思える。

「まぁ、そんなに邪険にしないでくださいよ。番犬くらいにはなりますから」

ニッコリと笑みを浮かべながら怪しげな言葉を発したような気がする。

「……なら許す」

今の一言でなにを理解したのか、花が急に態度を化させた。亜の頭にはたくさんのクエスチョンマークが浮かぶ。

「栗林さん、気にするだけ時間の無駄だよ」

「そうそう。単純に亜さんが好きだから一緒にいたいだけだし」

「おっと……それは異としてかな? 友人としてかな? 答え次第では考え直さないといけないかもしれないね」

「やだなぁ、佳山さん。的な好きですよ、當然じゃないですか」

佳山の険しくなった視線を見ても怯むことなくはカラカラと笑い飛ばす。

そういえば、心ついた頃には近くにいたというような言葉を聞いたことがある。だから"的な好き"なのだろう。彼の口から好きという言葉を聞いてもドキドキしないのは、亜もまたと同じようにじているせいかもしれない。

三人のやり取りを見つめながら亜はクスクスと笑った。

「そういえば……同じ大學にきたってことはアイツと一緒に住むの?」

花は深い意味もなく尋ねた。

「その予定はないですよ。遅くなったり、フォローが必要なときだけにするつもりです。二人ともいなくなったら両親も寂しいだろうし」

がざわめくのをじた。

仲が良さそうには見えないのに、花は優希のことをよく知っている。亜から聞いて彼が家族と離れて暮らしていることを知っているけれど、彼はどうして知っていたのだろう?

「亜、どうした?」

花が俯く亜の顔を覗き込む。

「花ちゃん、優希さんのことよく知ってるなぁって思って」

「あらら、なにその言い方? 気になるなぁ、嫉妬? そういう亜も新鮮でいいけど、殘念ながらアイツが高校時代から一人で暮らしてるのは結構有名な話なんだよね」

の頭をクシャクシャとでながら花は楽しそうに笑った。

當時、優希が一人暮らしをしていることを知っている人はたくさんいた。決して噓ではない。けれど、花の言葉は事実でもなかった。

花が優希のことに詳しいのは亜から聞いていたからである。ただ、正直に話せば記憶のない彼を混させてしまうと思った花は真実に近い噓を吐くことにしたのだ。

「まさか、亜にそんなことを言われる日がくるとはねぇ」

同じ高校だった人はみんな知っているのかもしれない。そう思うと恥ずかしくて顔が熱を帯びていく。

「もう、花ちゃんっ! からかわないでっ」

は花の手を遮って手櫛で髪を整える。その顔は真っ赤だ。

岸さん、栗林さんで遊ぶのはその辺にして、いきたいって言ってたカフェに移しない? ゆっくりしてると混むんじゃないかな?」

「あ、いく!」

今日は花の希で大學近くのカフェにいくことになっていた。

くんもいく?」

佳山が一緒にいきたそうな眼をしているに聲を掛ける。

「いきたいですっ」

四人はそれぞれに話ながら教室をあとにした。

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