《不用なし方》第68話
蜘蛛の巣のようにヒビのったディスプレイを見て心臓が暴れだす。息苦しくて自分の元を鷲摑みにする。誰の眼にも明らかな程その手は震えていた。
「……ぁ」
誰かに首を絞められているかのように聲が出ない。
「畫面がヒビだらけで、指じゃ反応しなくて……この間電気屋さんでマウスを買ってきたの。そしたら、たくさんメッセージがってた……あなたから」
亜が事故に遭ってからしばらくの間、優希は毎日メッセージを送っていた。やめたのは直接話をするようになってからだ。
事故のときヒビだらけのディスプレイを見て壊れたと思い込んでいた。既読も付かなければ返事もこないのだからそう思っていても不思議ではない。
しかし……壊れてはいなかったらしい。
途端に、毎日送っていたメッセージを思い出して恥ずかしさが込み上げてくる。
「あなたが怪我をしてから、亜とは疎遠になったと思っていたけれど……違ったのね」
過去のやり取りはどのくらい殘っていたのだろう? 記憶を失う前の勝手なメッセージの數々を思い出すと、ついさっきまでじていた恥ずかしさを罪悪が呑み込んだ。
「だから……あの日も一緒にいた」
「……すみません」 
謝罪の言葉しか出てこない。それ以外の言葉は紡げない。
「私が、嫌がると思った?」
「自分が……ガキだったんです。おばさんも、高校のときのこと聞いてますよね?」
目の前で小さく首が縦に振られる。
「俺と一緒にいたら変な眼で見られると思って距離を置いたけど、それでも優しい亜に……結局甘えてしまったんです。その結果、危険な目に遭わせて……すみません」
亜の母親がどこまで知っているのか分からないため、大まかに説明する。訊きたいことがあれば訊いてくるだろう。
「亜が……記憶を失ったとき、正直ホッとしたの。あの子、あなたの怪我は自分のせいだって責めてたから」
「違……っ、あれは俺が勝手に足をらせただけで、亜はなにも悪くないし、なんの責任も……っ」
顔を上げて、予想外に亜の母親の視線を真っ直ぐにけ止めてしまった優希は、呼吸ができなくなって口をパクパクとかした。続けようとした言葉が聲にならない。
「あのときはあなたを心底恨んだわ。……でもね、今の亜を見ているのも辛いの」
彼の言葉を聞いても、優希にはどんな言葉を掛けることが正解なのか分からなかった。
「きっと、私はやり方を間違えたんだと思うの」
優希自、諸悪の源である自分と亜を引き離すという亜の母親の判斷が間違っていたとは思っていない。だとしたら、なにを間違えたというのだろう?
「今更って思われるかもしれないけど……あのときのことを謝りたくて」 
「あのときのこと……?」
いつのことなのか、優希には分からない。それ以前に、彼に謝られるようなことがなにも思いつかない。謝らなければいけないのは自分の方なのだ。
「あなたが亜の心配をしてるのは分かっていたのに……酷なことを言ったと反省してるわ……本當に、ごめんなさい」
亜のことを心配していたというのならば、病院でのことだろう。記憶を失ったと判明したときのことかもしれない。
「俺がおばさんの立場だったら……きっと同じことを言ったと思います。だから謝らないでください」
こうして優希に會いにくるだけでもかなりの勇気が必要だったはずだ。
「理學療法士を目指すって分かった時點で、あの子の気持ちにだって気付いていたのに……」
「……え?」
「あの子、理學療法學科にいるでしょう? 理由を考えたことはない?」
ない。
心の中で即答しつつ、もしかしたらと期待してしまう自分がいた。
「なんの目標もなく大學にいこうと思うような子じゃないわ。あの學科にいきたいと思う心當たりなんて……ひとつしかないでしょう?」
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