《不用なし方》第70話
「お待たせしました」
タイミングよく飲みが運ばれてきた。運んでくるタイミングを見計らっていたのだろう。
「どうも」
優希の言葉にニッコリと微笑んで店長が背を向ける。
「あの、先にお會計を済ませてもよろしいですか?」
店長を引き留めて亜の母親が財布から千円札を取り出した。話し終えたらそのまま帰るつもりなのだろう。
「かしこまりました。千円お預かりいたします」
店長はエプロンのポケットに手を突っ込むと小銭を取り出して彼の掌に置いた。もしかしたら予測していたのかもしれない。
「それでは、ごゆっくりどうぞ。失禮いたします」
「お……」
「ったのは私だから私に払わせてね」
店長を見送りながら亜の母親が呟いた。その言葉を聞いて、ポケットに突っ込んだ手をゆっくりと引き抜く。
「……ごちそうさまです」
「素直でよろしい」
彼が小さく笑った気がした。張や警戒がし解れたようにじるのは多分気のせいではないだろう。
今しかない……なんとなくそうじた優希は勇気を振り絞って口を開いた。
「あの……今度の大會、観にきてくれませんか? 亜と一緒に」
こっそりと亜だけをうこともできる。けれど、できるならば噓は吐かせたくない。
高校のときのように荒れた生活はしていないとはいえ、亜だけをえば不安を抱かせてしまうだろう。それならば、二人をって、ほんのしでも亜の母親の不安を軽減させられたら、と思ったのだ。
「私は……難しいかもしれないわね」
謝罪の言葉を口にしたとはいえ、優希のしたことを考えると、そう簡単に許す気になれないのは仕方のないことだろう。
「じゃあ、に……あ、いや、岸とか佳山のほうが……」
「そういえば昔、一緒に走ってたわね」
亜の母親はコーヒーカップを両手で握りながら小さく笑った。
「そうね、亜に訊いてみるわ」
「……っ、ありがとうございますっ」
自ら會いにきた彼が上っ面だけの返事をするとは思えない。優希の言葉は亜に伝わるだろう。もしかしたら、母親から話を聞いてメッセージを送ってくるかもしれない。
顔を上げると亜の母親と視線がぶつかった。どちらともなく小さく微笑み合う。妙に恥ずかしかった。
母親の口から優希の名前が出れば、きっと亜は驚くだろう。しかし、それと同時に母親の小さな変化にも気付くに違いない。
彼と亜の関係がギクシャクしていることは花から聞いて知っていたけれど、自分にできることはないと思っていた。
優希の名を紡げるようになることで、親子関係がしでも改善できれば……。
優希は心からそう願いながら深々と彼に頭を下げたのだった。
冷たい部長の甘い素顔【完】
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