《不用なし方》第74話
「會場広いよね? どの辺から応援すればいいんだろ?」
「大丈夫、昨日のうちにどの辺で観ればいいのか教えてもらったから」
「さすが佳山くん」
花の疑問に答えた佳山が歩き出し、その後を追うように三人が付いていく。
「松澤は三番手、文哉さんはアンカーだって」
四人が観客席に到著したとき、トラックでは他の競技の真っ最中だった。
「子の競技……四百かな?」
小さく呟いて、佳山は躊躇なく最前列まで下りていく。佳山に気付いたが席を立ち小さく手を上げた。
「佳山くん、そんなに前までいくのは……」
「大丈夫だよ」
どうやら誰かに席を取ってもらっていたらしい。亜たちに席を譲ったら、今までいた彼はどこで応援するのだろう?
「最前列で観られるくらいで張するとか、気が散るなんて言うならば、その程度ってことだよ」
いつになく辛口な佳山に困しながら、亜はに視線を移す。優希の弟である彼のほうが詳しいのではないかと思ったからだ。
「最前列で観られるなんてラッキーですね。下手したら後ろからしか観れないんじゃないかって思ってたんですよ」
の言葉は噓ではない。
松澤 優希が陸上に復帰したことは、大會前に広く知れ渡っていた。そのせいで、四継は嫌でも注目されるレースになっていたのだ。
「明日は早くこないと駄目かもなぁ……」
は周囲を見渡しながら小さな溜め息を吐いた。
「なんで?」
の呟きに反応したのは花だ。
「明日が決勝戦じゃないですか」
例年と同じ程度の人はいる。けれど、それ以上いると思っていたの予想は外れていた。とはいえ、今日の予選を優希が通過したら、明日は朝早くから記者たちがいい席を奪い合っているはずだ。
「予選よりも決勝が注目されるのは當然だと思いますけど」
「ぅわ、なんかムカつく」
「栗林さん、こっちおいでよ」
花とが不穏な空気を漂わせていることを気にすることもなく佳山が亜を手招く。
「あの……席、確保していただいてすみません、ありがとうございました」
亜がに禮を述べると、は小さく會釈して去っていった。見覚えのあるジャージを著ていたが陸上部のマネージャーだと一歩遅れて気付く。
「佳山くん、彼……陸上部のマネージャーさんじゃ……?」
「そうだよ、昨日文哉さんが席取っておくって連絡くれたから、彼が待ってると思ってたよ」
「なんだか、マネージャーさんに申し訳ないような……」
「選手のためだから甘えてもいいんじゃないかな」
佳山の言葉に亜は首を傾げた。なにが選手のためなのかよく分からなかったからだ。
しかし、問い返す前に佳山に促され、亜は去っていったマネージャーを気にしながら佳山の隣の席に腰を下ろすことになった。 
note+ノベルバ+アルファポリス+電子書籍でエッセイ、小説を収益化しつつ小説家を目指す日記
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