《不用なし方》第78話

「亜、どうしたの?」

「あ、えっと……なんか話しにくそうだし、席変わろうか?」

「大丈夫、岸さんの聲は大きいからちゃんと聞こえてるし」

「なに、そのあからさまな拒否は? 私の隣が嫌だって聞こえるけど?」

「違うよ。岸さんの隣が嫌なんじゃなくて、栗林さんの隣を譲りたくないのが正直なところかな。岸さんも栗林さんの隣を譲る気はないでしょ?」

「ないね」

「だから、このままの席順でお願いしたいな、と」

「この、正直者め。正直すぎて文句も言えないじゃない」

佳山の言葉にどぎまぎする亜を挾んで、佳山は爽やかに微笑み、花は呆れたように溜め息を吐いた。

どう反応したらいいのだろう? と困しつつ、一先ず聞こえなかったふりをしようと視線をトラックに移す。

たちの通う大學の陸上部のユニフォームを発見した。流はないけれど、顔は見たことがある。

「陸上部の人だ……」

「大會の出場者みんな陸上部でしょうが」

「そうじゃなくて、あのユニフォームうちの大學の……」

の頭には優希が出場する四継のことしかなかったけれど、部員たちは當然それぞれに他の競技にエントリーしている。

「あぁ、出場してるのは四継だけじゃないからね。文哉さんも何競技か出てるはずだよ」

「へぇ、そうなんだ? じゃあ、もっとちゃんと観ておけばよかったね」

花の言葉に亜は軽く落ち込む。自分がいきたいと言ったくせに優希が出る四継以外の競技に一切関心を持っていなかったことに今更ながら気付いたからだ。

「亜って表が正直だよね」

花の言葉に顔を上げると二人が自分を見ていることに気付く。

「あ……」

「目的が四継なんだから仕方ないよ」

「そうそう、佳山くんみたいに陸上部全員の出場競技把握してる人なんて數だよ」

花の言葉に耳を疑う。

「文哉さんがメッセージで送ってくれたからね」

「ホント仲良しだよね、岡部さんと」

「生まれたときからの付き合いだからね」

馴染?」

馴染という単語を聞いた途端、亜がドクンと大きく脈打った。思わずを押さえる。

馴染だけど、従兄弟でもあるんだ」

「なるほど、そりゃ流もだよね」

「どちらかの家に預けられるのが日常だったから、覚的には兄弟に近いかもね」

ふと、亜の異変に気付いた佳山が亜の額に掌を當てた。

「大丈夫? 顔があまりよくないよ?」

「あ……うん、なんだか急に……」

「亜さん?」

花と佳山に心配されている亜を見てが駆け寄ってくる。

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