《不用なし方》第80話

「優希さんっ!」

優希はを丸めるようにして脹ら脛を押さえている。

「……あ」

なにかに気付いたの顔から焦りのが消え、大きな溜め息が零れた。

「ったく……人騒がせだなぁ、焦って損した」

「ちょっと、なに一人で納得してんのよ? アイツ大丈夫なの?」

「ちょっと無理したから若干痛めたかもしれないけど、大怪我じゃないです」

の言葉に安堵した花が亜に聲を掛けようと視線を向け、大きく目を見開いた。

「亜!!」

は大きく震え、焦點も合っていないように思えた。

が彼の両腕を摑んで顔を覗き込むと同時にそのが力を失っていく。

「亜さん?!」

「栗林さん!」

の頭の中でガラスが割れるような音が響く。中に詰まっていたなにかが流れ出てくるじがした。

公園の木の下に蹲る人がいる……。あれは……自分の知っている人だ。

周囲は騒然としていた。友人と思われる人やい子どもとその保護者と思われる大人が彼を囲んでいて、慌てた大きな聲がいくつも聞こえてくる。

これは……なに?

呆然としている間に景がガラッと変わる。真っ白な部屋、病室のようだ。

自分に向かって花瓶が飛んできた。のすぐ橫を通過した花瓶が壁にぶつかり、大きな破裂音を響かせて床に落ちる。

投げてきたのは……蹲っていたはずの青年……優希だ。

その瞳は憎悪に満ちていた。

が苦しい。呼吸が淺くなる。

「また……私のせいで……私の……」

花とが必死に聲を掛けるけれど、彼には屆かない。

熱に浮かされたように自分を責めるような呟きを繰り返しながら、彼は意識を手放したのだった。 

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