《不用なし方》第85話

「ゆ……っ」

「そっか、想うだけなら自由だよな……初めて會った日からずっと、お前が好きだったとしても」

いきなりの告白に、今度は亜が狼狽える。

「いつも目で追って、お前に近付く野郎を牽制してきた」

目を閉じた眉間に深い皺を刻みながら優希が淡々と告げる。

「お前の傍に俺以外の男がいるのも、俺以外に笑みを向けるのも嫌だった……お前の眼に映るのが俺だけだったら、って……」

の心が喜びに震える。

「私……ずっと優希くんが好きだったよ?」

「そりゃ過去形だよな……お前に好かれる要素なんて一ミクロンも……」

「出會った頃からずっと優しく接してくれたのは優希くんだけだった」

「……あの日まで、な」

「……」

己の酷い振る舞いを考えれば好きなままでいてくれるはずがない。悔いたところでもう遅い。

「私……ずっと、って言ったよ?」

の手に重ねられた優希の手が微かに震えている。

「俺、寢てんだろ? この期に及んで自分のに都合のいい夢見るとか、救いようがねぇクズだな、生きてる価値ねぇだろ、マジで……」

俯きながら自分を痛罵する姿は痛々しい。優希は言葉という刃で自分自を傷付けていく。これは立派な自傷行為だ。

「優希くん、一回眠ろ?」

「え?」

「ちゃんと現実だよ。私、ここにいるよ?」

は右手をそっと解いて優希の頭をでた。

「待ってるから」

優希くんが起きるのを。

「……これ、全部夢だったら死にたくなりそうだ」

は困顔で優希の頬を抓った。

「っ……?!」

「痛い?」

「……足りない」

「え……」

「お前に力いっぱい抓られても痛くねぇ……お前はもっと痛かったし苦しかったはずだ」

優希のネガティブ思考は睡眠不足からなのか、罪悪からなのか亜には分からない。

しかし、この狀況ではきちんとした會話が難しいのは確かだ。

「優希くん、ただいま」

安心させられる言葉を探したけれど、この一言しか思いつかなかった。

の言葉に、優希が伏せ気味だった視線を上げる。驚いた表のまま、瞬きを忘れた瞳から溫かい雫が零れ落ちた。

「亜……」

の手が、重なったままだった優希の手と共にベッドに落ちる。

「おやすみなさい」

優希の目から溢れる涙を拭って、彼の頭をでながらそっとベッドへと導く。突っ伏すように頭をベッドに置いた優希が不安げに亜を見上げている。

安心させるように微笑んで目許をでると、優希は抗うことなく瞼を下ろす。

は彼の頭を優しくで続けた。

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