目を覚ました亜は數日で退院できた。

事故前の記憶が一気に押し寄せてきてキャパシティオーバーで意識を失いはしたものの、怪我をしたわけではない。

退院後、亜は母の許可をもらって何度か優希の部屋に足を運んだ。

優希はいつも亜をソファに座らせ、自分はローテーブルを挾んで床に正座していた。目の前に置かれたアイスカフェラテが、味しくない新たな層を作ってしまうほどの、グラスを中心に水溜まりができてしまうほどの……長い沈黙。ようやく話し出したかと思えば、ひたすら亜に謝罪の言葉を紡いだ。

もういいと言いたかった。けれど……彼の気が済むまで気持ちを吐き出させた方がいいような気がして、亜はしの間ならばと彼の言葉をけ止めることにした。

しかし、その謝罪は一週間経っても終わらなかったため、亜はついに謝罪止を言い渡した。

本當に申し訳ないと思っているのならば、これからの態度で示してほしい。そう言うと、優希は過保護なほど亜に盡くし始めた。

亜がんでいたこととは明らかに違う。けれど、花や佳山は楽しげにそれを眺めている。

周囲は優希の変化に驚いていたけれど、徐々に見慣れて関心を示さなくなっていった。

「ねぇ、優希くん」

「ん？」

電車を降りてゆっくりと歩きながら亜は隣の優希を見上げた。二人でこの場所を歩くのは初めてではない。 

亜と優希はホワイトデーにやってきた水族館へと続く道を歩いていた。

二人の間には拳二つ分の距離があり、デートというには々ぎこちなさが漂っている。

両想いであることは確認済みなのに、両想いだと分かったとたんに手も繋げない初心な関係に逆戻りしてしまった。

最初の一手を誤った優希にとっては、やり直しの機會となるのだけれど、そう思えば思うほど踏み出すのが怖くなる。

稚園時代は考えることもなく自然に握ることができた手も、すぐ傍にあるのにれる勇気がない。すべては過去の己の愚かな行が原因だ。

もう失敗はできない。だからこそ亜を目の前にすると言を間違えられない張に襲われる。

屋展示施設に足を踏みれると、親子連れやカップルがたくさんいた。

休日にこういった施設にくれば混んでいるのは當然だ。しかし、陸上部が休日に練習を休みにするのはとても珍しく貴重だった。部屋でゴロゴロ過ごすのは勿ない。そう思った優希は行き先も考えずに亜をっていた。

仲間で遊びにいくことはあったけれど、行き先はいつだって飲み屋か娯楽施設。

なにより、拗らせに拗らせた初だ。両想いの経験も初めてなのだから當然デートも初めてなわけで……けないことに、った日から張し続け、待ち合わせ場所に著く前から病気かと思うほどに心拍數が上昇していた。

そして今現在も張は継続中だ。