《不用なし方》第88話
拳二つ分の距離を保ちながら館を歩いていると、しずつ人が増えてきた。順路というものは取り敢えずあるけれど、気付いていないのか従わない人も多い。正面から歩いてくる人たちとが接して一瞬顔を顰めた。
それと同時に、隣にいたはずの亜の姿が見えなくなって焦りを覚える。
「亜?」
呼び掛けるけれど返事はない。不安になって周囲を見渡せそうなスロープを上った。薄暗い展示フロアを見渡して亜の姿を探す。
「優希くんっ」
人混みに埋もれながら亜が手を上げた。それを発見して上げられた手を目印に彼の許へと急ぐ。
「悪い……一瞬見失った」
「ううん、私も人に流されちゃって……ごめんね?」
優希は自分の掌をジーンズでってから亜に差し出した。その手を不思議そうに見つめて亜が小さく首を傾げる。
「……また、はぐれるかもしれないだろ」
聲に出さない優希の言葉を理解した亜は、はにかみながら手をばして彼の手を握った。すると、外れない程度の優しい力で握り返される。それが嬉しくて恥ずかしくて足許に視線を落とす。
退院してから優希にれるのは初めてだった。両想いであることを確認したはずなのに、優希にれることができなかったからだ。不自然に避けられたのも一回や二回ではない。聡くはない亜でも接を避けているのだと確信できるほどにあからさまだったともいえる。
しかし、繋いだ手が離れることはなく……展示されている生きの説明書きを読んで會話を楽しみながら順路に従ってゆっくりと歩いている。嬉しくないはずがない。
とはいえ、長いようで短い時間は瞬く間に過ぎていく。晝食を取り、海獣とれ合い、買いをして、外に出れば夕間暮れ。
「……いい時間だな。そろそろ帰らないと、心配されるんじゃね?」
まだ明るさを殘した空を見上げながら優希が口を開く。
「うん……そう、だね」
答える亜の聲は自然とトーンが下がってしまう。
優希は気になりつつも気付かないフリをして駅への道を歩き出した……けれど、優希の手が差し出される気配はない。亜は下ろされたままの優希の手を見つめながら足を止めた。
「亜?」
し先で立ち止まって優希が振り返る。二人の間を同年代の集団がゆっくりと賑やかに橫切っていく。
集団が通りすぎるのを待っていた優希は、亜の立っていた場所を見て目を見開いた。そこに彼の姿がなかったからだ。
「亜?!」
集団に連れ去られたとは考えにくい。そうは思うものの不安は拭えない。
「亜!」
見えない彼の名を口にするけれど返事はなかった。返事をしないのか、近くにいないのかは分からない。
優希は視線を彷徨わせて彼の姿を探す。それと同時進行でポケットから攜帯電話を取り出して彼にメッセージを送る。すぐに既読は付いたけれど、彼からの返信はない。
『どこにいる?』
『どうした?』
彼の機嫌は悪くなかったはずだ。自分同様楽しんでいるように見えた。なのに……。
優希は攜帯電話の畫面を見ながら暴に髪を掻きした。 
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